長年の間、出だしだけで止まっていた小説の登場人物が作詞・作曲する歌の歌詞ができました。
書き直している長編小説の一部ですがお正月ゆえ特別公開します。
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和彦は目尻を下げにやっとした顔でジャンヌの報告を聞いていた。
「いま彼女から聞いたんだけどさあ。作詞作曲してるんだって? そもそも、ふたりの出会いは宏和がしてる作詞作曲に彼女が興味を持ったんだって? ぼくにはちっとも話さなかったけどどんなもの出来た? 見せてよ」
「作詞作曲っていうほどのものじゃあないんだ。気晴らしにやってただけなんだ。まだ完成してないけど、そんなにいうなら見せるよ。ノート取って来る」
宏和は二階に上がり“こまのこうやに…”の歌詞と譜を書いたノートを取って食堂に戻った。
「ほら。こういうんだけど」
こまのこうやのこじょうには、こゆきのようなはぎがちり
和彦は声に出してはじめの一行を読んだ。
「ふーん。こ、こ、こって頭韻を踏んでるのか。そこは面白い。ま、信州信濃のしんべえさんの尻みたら、しらみが四匹しっかりとまって死んじょった、って頭韻ってことでみれば似てるって言えないでもない」
「あ。そいつはひどいや。しんべえさんの尻とくらべるなんて。ぼくは、もっとリリックな情景を描いたつもりなんだ」
「そうか。ごめん。ごめん。しんべえさんはちょっと言い過ぎだったな。たしかにリリックな感じがしないでもない。最後まで読んでみよう」
和彦は宏和が作った歌詞を読んでいった……。
高麗(こま)の荒野の古城には
小雪のように萩が散り
妃を亡くした王様は
遼(りょう)から姫をお妃に
王子が倒れた階(きざはし)に
小雪のように萩が散り
王子の瞼に浮かぶのは
真白な姫の肌の色
妃を亡くした国王が
戦(いくさ)回避の術策に
遼(りょう)から姫を娶るとは
姫は王子の許嫁
真白な姫の肌の色
つぶらな瞳、黒い髪
花くれないの唇も
春に抱くのは父の王
怨念、嫉妬、反逆に
胸を焼かれる王子の眼
そこから涙が散り落ちて
萩の花弁に濡れ混じる
弑(しい)する王子は
気が狂(ふ)れて
高麗の古城の真白な雪に
国王倒れ飛び散る鮮血
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高麗というのは高句麗とは違う国で
紀元918~1392年に実在した国。
「こうらい」、ともまた、「こま」とも読みます。
また遼(りょう)という国は916~1125年に
あった国で満洲、モンゴル、華北を支配しましたが
1125年に女真族の金に滅ぼされました。
2018年が稔り多い好いお年でありますように……。
(-^□^-)
めのお