奥歯を抜いた | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

木曜日(19日)にオーセールの街のクリニックで歯のパノラマ・レントゲン写真を撮ってもらった。どうやってパノラマ写真を撮るのか? 興味があった。感光剤を塗ったフイルムを口に入れるのかな? そんなことしたら口の中が苦しくないか? X線が歯全体を透過するのをまってるのはかなり辛いだろうな、と案じたりもした。

 

受付で呼ばれて撮影室に入ると、背の高い器械が壁際に建っていて、その前に立たされた。立ったままの姿勢で、小さな台に顎を乗せ、撮影技師さんがセットした透明プラスチックの袋を被せた小さな白い長方形の、ちょうどUSBの差し込みプラグみたいな板を前歯で「噛んで」と言われ、そのとおりにする。もすこし前に、と技師さんが言い、顎全体を前に出す。もっと、ぎゅっとプラグを噛みなさい、とまた注文。

 

感光フィルムが入った板は、昔、学校の入学、卒業式、また遠足などで記念写真を撮るのに写真屋さんが三脚に乗った蛇腹つきの大きな写真機の裏側に分厚い感光板を差し込んだのとおなじように、器械から突き出た薄いボックスに差し込むのだった。

 

口に入れるのかと案じたのは危惧に過ぎなかった。その薄いボックスが顔の周りをぐるりと回転する。往復したけど、どこでX線が放射されたのかはわからない。

 

受付で待つこと15分位。名前を呼ばれて支払いをするとクラフト紙の封筒に入った現像済みのレントゲン写真をくれた。

 

歯医者さんのアポに長いこと待たされるのは嫌なので、レントゲンの日が決まった直後に歯医者さんとのアポを申し込んで翌日にとってあった。

 

20世紀の女流作家コレットの生家。医療センターのすぐ近くにある。村はサン・ソヴール。Saint-Sauveur

 

昨年、住んでる村の歯医者さんに左側の奥歯を抜かれた。虫歯らしいので治療してもらえるかと診て貰ったのだが、そくざに「この 歯を抜くよ」と言われ、麻酔薬を注射されて、30分後には奥歯を抜かれてしまった。年寄りの歯医者さんで、村の猫好きの人は彼は猫嫌いで、庭に入ったネコを捕まえて毒殺してる、と噂が立ってる。そんな雰囲気が漂う治療室で、看護婦さんは奥に直立不動で待機しており、命令口調で歯医者がなにか云うと即座に反応する。歯医者は自分のすることを次は何をする、あれをやるぞ、と独り言をいいながら治療を進めるのだ。そんな雰囲気が気味悪く、10km離れてはいるが隣村に新しく出来た医療センターの歯医者さんにアポをとったのだった。

 

医療センターというのは、ここ4~5年でフランスの田舎の町に出来た、複数の医者が集まって作る小規模の診療所で、料金も独立の医者が取る初診料より2割がた安い。

 

ただ、料金が安いのと新しい小規模診療所というのと関係あるかもしれないが、ドクターが若い。こんどの歯医者さんで、ここのドクターは二人目だが、どちらも若い。

 

そのうえこんどの歯医者さんは、フランス語にひどいなまりがある。スペインとかイタリアとか南方系のなまりじゃなくて、ごつごつしたドイツ系のなまり、もしかしたら旧東欧出身かもしれない。名前からして、はじめて目にする苗字なので、そんな印象を持った。

 

向うが話すことがときに分からないのと同様、こちらが話すことが通じないことがある。

 

「ジュ・ヌ・コンプランパ」(わからない)。「ジュ・ネ・パ・コンプリ」(わからなかった)を今回3回も言われた。

 

治療台に寝かされると気持ちが萎えて話す気力が衰えるんだよね。外国語とくにフランス語はアルテイキュラシオンをはっきりさせないと通じないので、話すにも力が要る。ここしばらく家に閉じこもりきりで、話す機会がなかったこともあり、口の中でもぞもぞいってると、たちまち「ジュ・ヌ・コンプランパ」が返ってくる。

 

フランスに来たての頃、通った語学教室でフランス人の先生に、きつい語調でいわれた時代を思い出した。

 

あるいは、この歯医者さんも、どこからか移住してきて、最初は、なにか話すたびに「ジュ・ヌ・コンプランパ」の攻撃に会い、いじめられたことの復讐をオレにしてるのかもしれないな、などと帰りに、マイナス3℃で白く凍てついた森と牧場の風景の中を車を走らせながら考えた。