増水と原発 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

フランスはUSAにつぐ世界第2の原発大国だ。その数56基。 日本より数基多いだけ。裏を返せば、日本がそれだけ原発を多く作ったということ。

日本の原発はほとんどが海岸にあり、冷却水を海水に依っているが、フランスはほとんどが河畔にある。

私が住んでる村からフランス1の大河ロワール河まで20キロ弱。そのロワールの河岸に、ここからそれぞれ50キロほどのところに原発がある。ダンピエールとベルヴィルだ。ロワールの流域にはほかにも下流にサン・ローランとかシノンとか全部で12基の原発が稼働している。


原発1

セーヌの河畔でパリに一番近いのはノジャン・シュル・セーヌでパリの50km位上流にある。

このたびの大雨でロワールもセーヌも氾濫しそうになった。セーヌ河には上流のトロワ近郊に数個の調整池があり、首都パリには洪水でメトロなど地下設備に浸水し害を与えないようしているが、今回の増水は調整池が支えきれなくなったことを示している。

パリのRER(郊外急行)の一部に浸水しC線は運休となった。ルーブルとオルセー美術館は浸水のリスクのある階の美術品を上の階に避難し、昨日は臨時休館となった。

両河川の増水は1910年以来106年ぶりのものだ。印象派の画家シスレーは1910年の洪水を油彩に残している。

ロワールの水位が土手の高さに迫るのを見て、まっさきに思ったのは原発のことだ。フランスの原発は大丈夫か?

福島第一の二の舞となることはないのか? 

フランスは幸い現在までチェルノブイリ、福島級の原発事故を起こしていないが、小さい事故は数回起こっている。

1999年、ボルドーの近く、ジロンド河河口のブレイエ Blayais にある原発が川の増水と風速140km/hの強風に押された高潮により一部が冠水し緊急停止した。原発の海側には防潮堤が築いてあったが、強風に煽られた高潮がそれを乗り越えて原発の設備へ押し寄せた。この時の危険度は2とされてフランスでこれまでの最高の事故となっている。

我が家に近いダンピエールの原発はロワールの増水のリスクをどうみているのか?

ロワール河は過去たびたび洪水を起こしているので、増水の予想は決して想定外などということはありえない。過去の増水時の水位をレフェランスとして原発設備が乗っている基盤を高くしてあるらしい。

外部電源が途切れた場合の非常電源としてデーゼル発電機を備え、周囲を水で囲まれ、軽油の補給が出来なくなる場合を考えて3日分の備蓄がしてある。しかし、このデイーゼル発電機が、福島の場合のように水に浸かって動かなくなった場合どうするか? それへの明確な答えは、現在探した範囲ではみつかっていない。

外部電源が途絶え、自家発電も不可能、冷却水ポンプが動かなくなり炉心の温度がぐんぐん上がり……福島で起こった悪夢、メルトダウン。

最悪のケースに備えて、フランスでは各原発内の非常救急チームに加え国の救急チームを派遣する、というのが今のところ見つかった対応策。

フランスは原発に関しては大統領権限なので、国民も他の代議士連中も議論を交わすことがない。

日本がなぜ今の様な原発大国になったのか? 私が日本を離れた1974年には片手の指で数えられるほどしかなかった。

石油危機が2度あった。そしてUSAでスリーマイルズ・アイルランドの原発事故が起こった。

アメリカはこの事故を機に国内の原発建設を禁止した。なのに日本は逆にこの事故後、目白押しの原発建設が始まったのだ。

USA国内で市場を失った原子炉建設とその関連企業は海外に顧客を求め、その輸出先の第一が日本!となった。

自国では危険なため建設禁止。海外に活路を見つけろとやっきになる原発メーカー。ウエスチングハウス、GE……。

絶対安全だよ、とウソをついて、原爆の被害に遭った世界で唯一の民族の土地へ危険な原発を輸出する。

利益追求のアメリカ企業のお先棒を担ぐ亡国の輩が日本の政財界・産業界を牛耳っていた。正直X太郎、Tu n’as qu’à sonnerというふたりの善意の仮面を被った悪が居た。なかでもX太郎はほんとうにバツで、周囲が安全を確かめてから、というのを押し切り、学者の顔だけ並べて意見は無視し、湯川秀樹博士は怒って委員会を辞めてしまった。アメリカで造ったんだから、四の五の言わず、なにがなんでも造りゃあいいんだとワンマンぶりで周囲をひっぱりまわした。彼らに追随した政財界・産業人の罪は重いね。

福島第一の土地はもともとは海抜30メートルの高台だった。それをわざわざ削って海水を被りやすくして原発を建てた。なんとまあ!

契約は「ランプサム」といって「一括請負契約」だった。非常用のデイーゼル自家発電機がタービン建屋にあり、高潮や津波で浸水する恐れがあることを見つけた日本人技術者は居た。しかし、ランプサムのため、アメリカの設計をすこしでも変更する場合、設計変更料として
法外な金額を支払わねばならず、発電機の設置個所の変更は見逃された。

外部電源切断、自家発電機水没の為使用不能。想定外だったろうか? 否、ちゃんと知る人は知っていた。アメリカの設計を、地理的条件の違う日本にそのまま押し付けたメーカー。

人災といわずになんだろうか?

「核なき世界を目指す」と、いやしくもいうならば、「ウラン」原発は即座に止めなければならない。核兵器の廃絶とウラン原発を維持し続けることとは明確に矛盾する。その事をAbe 首相は認めねばならない。

なぜなら「ウラン原発」は限りなくプルトニウムを生み続けるのだから。プルトニウムの主要な消費先は核兵器だから。高速増殖炉とかMOXとか核サイクル神話に基づいて作られた技術的に問題だらけ、実現不可能なプロジェクトにいつまでしがみ続ける積りなのか?


もともとウラン原発は核兵器と一体のものとして開発が進められた。

原子力潜水艦に搭載する原子炉としてウランの「固体燃料」が適していたからで、原発の父、ワインバーグは兵器としての原発を開発した。しかし一方でウラン原発の1000分の一しかプルトニウムを生じない、安全で安価で小型な「トリウム」原発を開発し実験炉を1年間連続運転して、商業運転が可能なことを実証してみせた。

しかし、プルトニウムをウラン原発より1000分の一しか生まない、まさにそのために、軍だけでなく、ウラン鉱山主、ペレット製造業者、原子炉製造業者、建設業者など軍産コングロマリットが議会に圧力を掛け、開発予算は廃止され、「トリウム原発」は闇に葬られた。

トリウム原発は常温常圧でトリウムを主原料とした溶融塩を使うのでメルトダウンはありえず、環境へ放射性物質を放出する危険もない。

プルトニウムは僅かに発生するがウランの1000分の一だし、溶融塩のなかで再燃焼させることが出来る。ガンマ線対策と溶融塩を入れる容器を酸に特別強い金属で作る必要があり、これは日本の技術ならできるが、すでにトリウム原発を開発中のインドや中国では作れない金属。

日本の産業界がなぜトリウム原発に眼を向けないのか不思議だ。

造ってしまったものは簡単に替えられないということなのか?
東電の旧副社長の豊田さんだけがトリウムの採用を視野にいれておられた。

地球温暖化の原因となるCO2の排出が無く、小さなスペースで膨大な電力を生み出せる原発は、再生可能エネルギーが火力発電を補い得るレベルに達するまでは、現実的な発電手段と認めるほかない。

しかし、本来人間生活に快適さを実現させるための発電が、過酷な非人間的な生活へと陥れるリスクを、それも何万年もの間、危険を保持し続けるプルトニウムを増産し続ける「ウラン」によって行われるかぎり、われわれはそのような原発を
未来の世代に対しても、廃棄する義務がある。

ウランに代わる「トリウム」原発に眼を向ける時期にきている。