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パグウオシュ会議(Pugwash Conference)をご存じですか?

正式な名前は「科学と国際問題に関する会議(Conference on Science and World Affaires)」といい、相対性原理で有名なアインシュタインと英国の哲学者バートランド・ラッセルの声明に応じて1957年7月にカナダのパグウオシュという漁村で東西の科学者22人が参加して開かれた会議です。議題は「科学者の社会的責任」、「核兵器の管理」、「原子力の利用と危険」といったものでした。核実験による人体への影響を警告して「原水爆実験を禁止せよ」との声明を出しました。

その後、毎年1~2回場所を変えて会議を開き、軍縮問題、平和問題について具体的に検討し、社会に無関係でありえない20世紀の自然科学とその研究に従事する者の道義的責任について討議を重ねています。

1958年9月の第3回会議はオーストリアのキッツビューエルで原子力時代の危険と科学者の役割について協議し、核戦争だけでなくすべての戦争絶滅を呼びかけた「ウイーン声明」を発表しました。

冷戦時代のパグウオッシュ会議は、ソビエトの工作員が入り込んだりして自由主義(資本主義)国の核実験だけが悪いというような政治的操作に遭ったようです。

しかし、現在もこの会議は続いていて、日本では日本パグウオッシュ会議が科学者京都会議へと引き継がれ、今年2015年11月1日~5日に長崎で第61回世界大会が開催される予定でその準備が進められているようです。

この会議は個人の資格で参加するという非常に地味な性格のものですが、核拡散防止条約(NPT)の再検討会議の開催を促す元となるような非常に重要な役目を果たしています。

長崎での第61回世界大会の議題には「被曝70年、核なき世界の実現を」を主要テーマに
「核廃絶と核不拡散」、「北東アジアの安全保障と非核化」、「中東、南アジアの安全と非核化」、「先端科学技術と脅威」といったアクチュアルで非常に興味ある重要な問題を取り上げる予定です。さらに、東京電力福島第一原発事故を踏まえて科学者・技術者と社会的責任について科学者による本会議のほか市民との対話も準備されているようです。

パグウオッシュ会議のきっかけとなったラッセル・アインシュタイン声明は1955年7月9日に出され、核兵器の廃絶を提唱する声明でした。日本からは湯川秀樹博士、朝永辰一郎氏、小川岩男氏が署名しています。さらにマックス・ボルン、フレデリック・ジョリオ=キュリーなどの物理学者が署名し、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国、カナダの6か国の元首または首相に送られました。

核戦争の大規模な破壊力を具体的に説き、各国の政府に対し「国際紛争の解決のためには戦争に訴えず、平和的な手段を発見することを勧告し、また全般的軍備撤廃の一部として核兵器廃棄などを主張しました。

第二次大戦後の日本は軍備を持たない国として出発し、国際紛争の解決を国際連合という国家を超えた機関に委ねる決意を日本国憲法に謳いあげました。

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。(前文)

国権の発動としての戦争を放棄し、その手段としての戦力を保持しない(2章)。

国民主権は人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」

日本国憲法発布から69年経った今日、世界の情勢は変わったとはいえ、平和を希求し、戦争をなくす道を見つけ出す努力を続けようという意志は変わらないし、変えてはならないと思う。

科学者であろうとも社会的存在なのであり、社会の状況に影響を受けるのは自然なありようで、あたかも科学者だから社会から超然として、神様のような眼で地上の政治的争いを眺められるなんて考えは幻想でしかありえない。

そんな争いに拘わらぬよう身を保つのが大人の態度だなんて考えは「君子危うきに近寄らずだよ」といった世俗に溢れる処世術の域を出ず、単に楽な無責任な態度なのであり、政治的意見を避ける態度そのものが政治的態度なのであって、純粋に客観的な態度などではない、と思います。

純粋に客観的な態度などはあり得ない、ということをアインシュタインが相対性理論を展開する中で、自然現象(物理現象)の観察においても純客観的な観察などは行い得ず、観察者(物理学者)の主観(主体性)を観察から排除することが出来ない、という発見をしたのではなかったでしょうか。

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