銅版画について - その③ | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

前回引用したボードレールの腐食銅版画についての記述に補足します。

ボードレールはエッチングは「危険なアート」だと言っています。

ここでボードレールが「危険」と言っているのは「表現の手段」としてエッチングが作者の意図をしばしば裏切るという意味で「危険」な手法だと言っていると思います。

しかし、めのおはエッチングに不可欠な腐食液、硝酸と塩化第二鉄溶液ですね、この
強力な酸の
危険性について、自分でやってみて考えました。

フランスの田舎暮らし-酸1


銅版を腐食する能力は硝酸の方が強く、それだけ危険度が高い。

硝酸NHO3 は消防法により危険物第6類として、10%以上を含有する溶液は医薬用外劇物に指定されています。

ロケットの酸化剤や推進剤に使われるくらいですから爆発もするんですね。

版画の腐食液は、なんども使っているうちに酸の腐食能力は衰えて行くので、ある時期に新しい溶液 - それは原液を水で希釈して使います - と取り替えねばならない。希釈する際に、硝酸を一気に水と混ぜると爆発しますので少しずつ混ぜねばならない。

危険は使用する時だけではありません。使用済みの酸をどこにどうやって捨てるか。
環境への影響を考慮しなければなりません。

今日では大きな街では、危険物、化学物質を回収してくれる組織ができていますが、それまでは多分、薄めて下水に流していたのでしょう。

17世紀のオランダでレンブラントがエッチングで作品を作っていますから、硝酸はすでに作られていたんですね。

硝酸の発明は8世紀に遡ります。アラビアの科学者、ジャービル・イブン・ハイヤーンが硝石と他の酸を混ぜ蒸留によって合成に成功しました。

17世紀になり、ヨハン・ルドルフ・グラウバーが硫酸と硝石との混合物を蒸留し、純粋な硝酸を作ったといいますから、レンブラントは当時最先端の技術を使ったのでしょうね。

銀や銅も融かしてしまう硝酸はラテン語で「強い水」 aqua fortis と呼ばれました。
フランス語でエッチングが オー・フォルトと呼ばれるのはここから来てるのですね。

ラボアジェは1789年、硝酸を acide nitrique と命名しています。

フランスの田舎暮らし-酸2

           硝酸液に銅版を漬けると青い神秘的に発色する↑

危険は使用済み液の処理だけではありません。使用中のアーチストに与える影響。
はっきり癌の危険があります。

特に硝酸は銅と反応して有毒ガスを出しますから、吸いこむと危険です。

優れた作品を多く残された駒井哲郎さんは、1974年、54歳の時に舌癌が発見され、翌75年に癌は腸へ移転し、76年に肺へ移転し、死去されました。

めのおは小説を推敲していて、この事を知り、ヒロインのアンナは結婚し、将来生れる子供への影響を怖れてエッチングから水彩画へと転じます。