「モンパルナスの灯」ふたたび (2) | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える


さて、これからが本題。「美と愛」
モジリアニは自分が呪われた身と知っている。自分が垣間見た、あるべき美を画布に実現しようと日夜闘うが、アルコールの力を借りないとできない。美のために全てを犠牲にする、「美の女神」への献身の情念は「死」への情念と通じている。画家が抱く美のイデアは現実の日常生活の雑多な些事への侮蔑、現代のわれわれから見ればなんら美への冒涜とは考えられない広告に自分の絵が使われることの拒絶。俗物との妥協の拒否。呪われたとはそうした美にとり憑かれた様をさす。ゴッホは若くして失恋の痛みを味わい、それから美の探究が始まった。
「美」の対極にあるのは猥雑な日常生活。金銭の悩み。15歳の頃、映画のこの場面を見て圧倒されためのおは、もう一度見てここに映画の主題が凝縮されているのを確認した。

夜霧のセーヌ河畔。モジとジャンヌは将来の生活につき語らい歩む。女性一般の幸福な生活を築くことへの素朴な希求。芸術家は「美」の観念に取り憑かれている。雑多な日常生活のために美を犠牲になどできるか。モジはポケットに残った有り金を取り出す。
「これが残った金のすべてだ。こんな金は、セーヌにくれてやる」ジャンヌが止めるのも聴かず、金をセーヌに投げ捨ててしまう。画家は自殺志向に取り憑かれている。

「何を言ってもウーイ。死ねと言えばウーイ。身体を売ってこいと言えばウーイ」酔っ払いの画家はすがりつく恋人ジャンヌに毒吐く。夜霧が覆うセーヌの河岸で、美に命を捧げる覚悟の画家が死の影に誘われ、恋人に激しく警告する。「オレについてくるな」。不幸を予知しジャンヌを遠ざけようとする画家。情愛を断ち切れないジャンヌ。呪われた画家モディ。ジェラールフィリップは聴く者の耳に突き刺さるような声で死を予兆する画家を演じる。
「オレから逃げろ。オレが君を不幸にしたとしても、信じてくれ。オレの意に反してのことなんだ」
 悪霊にとり憑かれた不幸な画家の運命。呪われた男と恋に落ち、親の反対を押し切って一緒になった女の不幸な終末を画家自身が予言する。(ヴィデオノ12分以後です↓)








 絵描きの純粋さは、金の論理が支配する社会には受け入れられない。純真な画家の不幸をこの映画は嫌というほど見せつけてくれる。モジリアニとジャンヌの恋が不幸に向って進むほど、現実社会に生きて行けないふたりの絶望を観客は憐れんで涙を流すしかない。

(つづく)



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