翌朝、演習室へ行くと、もう改善チーム全員と見慣れた顔のオペレーター四五人が集まっていた。 三人を待ちかねていたようにドオデが普段より真面目な顔で言った。
「まず、誰よりも独りでこつこつと荷姿改善に取り組み、改善の本質をみんなにわかり易いよう視覚化してくれたフローランスを表彰したい」
フローランスがはにかみながら進み出た。
「彼女はベベを待ってる。コウノトリ賞を贈ります」
ドオデがコウノトリの絵を描いたアンテイークな飾り板をフローランスの首に掛けた。彼女のお腹は心もち膨らんでいた。
「パパはぼくらのうち誰かなのかな?」ダニエルが聞いた。
「イルマ 、トウミ」 コワレックが鳥のように叫んだ。
「え?入間トミさんって? …… 父親は日本人!」山本が、驚きの声を挙げた。
「ベベの父親が日本で待ってるんすか?」宮原が訊いた。
「だれがいったの? あたしのべべの父親が日本人だなんて」
フローランスが顔を赤く染め、怒った口調で叫ぶ。
「コワレックがイルマさんだって」宮原が答える。
「イルマ、トウミ( Il m'a tout mis =彼はぜんぶ私に注いだ)。コワレックは駄洒落が得意なのよ」フローランスが、この種の悪戯は受け流すしかないという風に脱力して言った。
「つぎにオペレーターの中から優秀なサムライを表彰します。われわれのサムライはジェラール」ジェラールが前へ進み出た。
「ジェラールは片手作業を両手に改善した。宮本武蔵賞を贈ります。賞品はサムライのキモノです」
ドオデはおどけながら中国製のキモノをジェラールに着せ、帯を締めた。ダニエルが刃と柄が緑、鍔が赤いプラスチックの玩具の刀を大小二本ジェラールの腰に差す。
「さて、次は、どうしてもやりたいとみんなから要求のあった祭りに移ります。ムハメッドが代表してパーフォーマンスをします」
進み出たムハメッドにドオデは白い紙で作った裃と袴を差し出し、裃を広げ、肩から掛けてやった。ムハメッドは袴をズボンの上から穿いた。
「筵の上に三宝を置きこうしてカタナをのせて、と……」
ドオデは、段ボールで作った台におもちゃの短刀を乗せた。
「日本のサムライは間違いを犯した時は自分で腹を切って責任をとるそうだな」
びくりと山本が緊張するのがわかった。
「おれたちはハラキリの正しいやり方を研究した」
ドオデは笑顔を作りながら言った。頬がひくひくと引きつった。
「本物かどうか日本人に指導してもらいたい」
ドオデの顔が緩んだ。
山本は少し安心しにやにや笑いを浮かべている。
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