「田代さんも、われわれ社員と一緒だと思ってますよ。実動時間だけにして下さい」
「正社員とパートタイムを一緒にされては困るね。テーラーが怒りますよ。拘束時間で請求させて下さいよ」
話が込み入ると判断した山本はちょっと表へ出ようと言った。差でやる積もりなのだ。田代は喧嘩が好きではないが、覚悟を決めた。
「何だよ。あんたのやり方は。契約にサインもしないうちから仕事始めたりして。何かあったら責任取れますか。僕はね。あんたみたいにサラリー貰う身分じゃないが、東亜とは創業者からの付き合いなんだ」
人脈を匂わせてやった。
「あっ。済みません」山本は長い身体を卑屈に曲げ、上目使いで田代を見た。
山本が何かにつけ人の仕事に嘴を入れ、プロマネぶりを発揮したがるのに反して宮原は職人のように黙ったまま独りで調査した事を絵に描いていった。
やりかけている仕事に口を挟んだ山本にむかって「僕はあなたのお考えに賛成できません。やり方が気に入らないなら帰してもらいます」と今福が反旗を翻した。今福は下請会社の派遣員だったのだ。
二人の口論を聞いていた宮原は「うるさいな。半可通のくせして人の仕事に口出しするなよ」と山本を叱った。
「何だよ宮原さん。どうして今福の肩ばかり持つんだ」ドンと山本が机を叩く。
このプロジェクトは山本がセールスをして取ったので山本がプロマネになったが、宮原の方がはるかに仕事が出来るのだと今福がこっそり田代に耳打ちした。ワークファクターなんて日本ではもう使われていませんよとも言った。
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