塗装ショップは埃が大敵なので、ここへ入るには頭から足の先まですっぽり覆う埃よけの「つなぎ」を着て入り口でエアーシャワーを浴びなければなりません。
プレスでも髪の毛ほどの直径の埃が付いた板を数千トンのプレスで打つとピコ(ブツ)と言って小さなイボみたいのがスチールシートの表面に出来てしまいます。埃や異物はいろんな原因で材料に付着するので、ブツ対策は永遠の課題です。塗装も同じように表面にポチッと一粒でも、外観上目立つ所に脹らんでると、もうNGですね。
ボデーの塗装は下塗り、中塗り、コーテイングと普通3層からなってます。塗料は最近は水性ですね。環境に優しいから。液状の時は水で薄めたり洗ったりできるのに乾燥すると堅牢な皮膜を作る。高分子化学の応用なんでしょうか?最近の塗料は車を10年野外に置いといても錆ないですね。
静電気を利用して塗料を表面に付着させる技術とか、無駄なく均一に噴霧できるベルと呼ばれるノズルの先端とか、さらに色を変える時にチューブ内に残った前の塗料を瞬時に吐き出す技術とか、いろんな研究が進んでますね。
それでも噴霧した塗料すべてを車体に付着させられないので、塗装ブーツの脇の壁の水のカーテンで浮遊する塗料を吸着し外部へ出しています。この水の処理が結構大変ですね。またシンナーを使用する部署は人体に吸入するとラリったりだけでなく悪さをしますので防禦マスクを着けないといけませんね。
車のカラーは流行に左右されますね。心理学者もいろいろ言ってますが、日本は太陽光線が強いせいか白とかシルバーが圧倒的に多いですね。ヨーロッパはブルーとかグリーンとか赤とか濃い色が好まれます。最近はオパールとか真珠母色とか螺鈿、玉虫色とか、単色でなく微妙なニュアンスの色が流行りのようです。メーカーとしては赤は高いとか色によって原料の値段が違うので、流行がコストに影響するんですね。
塗装ショップは職場環境が一番いいです。清潔だし、ほとんど設備が主体なので、工場ん中でいちばん品質管理と改善がしっかりできる。筆者が勤めた工場は日系会社なので日本人のトレーナーさんに通訳がついた。「塗装3人娘」って呼んでました。3人とも結婚前の娘で、みんなが塗装の化学物質が母体に悪いって脅すもんだから、うちひとりは早いうち産んどきたいと思ったか、24・5でシングル・マザーになった。フランス人だけど日本生まれ、小学校から大学まで日本の学校で育った完全なバイリンガル。世の中変わったと定年間際の年寄りは思ったもんでした。
清潔さで言えば塗装の次が組立だけど、タクトタイムが1分なら、1分間に部品を5・6個組みつけねばならず、1時間ごと休憩があるにしても、一直300回繰り返し作業をするんでキツイですね。プレスはドスーン、ドスーンて騒音が激しいし、アーク溶接の臭いと電磁波や紫外線が男の生殖能力に影響与えるって話だ。だって、あれが表に出てるからね。もろに被曝しやすい。ただ、仕事のペースは型保全だけは職人芸が要求される世界で、比較的マイペースで働ける唯一の職場です。
なんつっても、いちばんキツイのはウエルデイングだな。機械設備がギッシリだし、その中に人間が混じって熱い、臭い、うるさい。銅線の甘い臭いがする、電磁波の影響は受ける。スパッターは飛んでくる……空中に浮遊してる酸化物で顔も鼻の穴も、肺の中も真っ黒んなっちまうんだ。
塗装が済んで、ボデーが出来た。いよいよ走行に必要なエンジンとか足回りとか計器類とかハンドルとかシート……、人が乗っかって走ったり停まったり曲がったりできるよう数百の部品で艤装して車を完成させます。艤装をやる組立ショップは人間の数がいちばん多い職場です。設備はコンベアくらいで主に200人近い人間が働いてます。
塗装と組立の間にはバッファーがあって、ちっさなトラブルでどっちかのラインが短時間停止しても吸収できるようになってる。そうか、タクトタイムについて話そうとして脱線が工場全体に及んだんだっけな。
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