偽りの報告 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

ルノーのセキュリテイ部門の課長2人がまず、民間の情報セキュリテイー会社 Geos に調査を依頼する。この Geos という興信所の所長は数年前までフランスの軍の情報部に居たジェネラルでジャン・ハインリッヒという名前。ハインリッヒ所長はルノーの依頼を断った。それは「この調査は不法な行為を犯さなければできないものだから」という理由だった。銀行の情報システムに公式の許可なく入り込まなければ産業スパイの嫌疑を懸けられた3人の物的証拠(銀行口座への報酬の振込)を確認できない……。

しかし、どうしても調査を進めたいルノーのセキュリテー課長は、Geos興信所の一人の所員に、自分で調査しなくていい、こちらが指名する数名の人間の仲介役(コーデネーター)をして報告をまとめてくれと依頼した。調査しないでも良いというのは、この所員はアルジェリアに居住し、ヨーロッパには出て来るのが難いからである。彼の名前は、ミッシェル・リュックという。ミシェル・リュックは10万ユーロの請求書をルノーに送り、ルノーの課長は、現金で支払うから、指名した数人と分けあえと指示した。ミシェル・リュックは所長のジャン・ハインリッヒに報告せず個人としてこのビジネスを進めた。

結局、ミシェル・リュックはアルジェから一歩も出ずに、調査結果をルノーのセキュリテー課長に報告する。それも電話一本で、証拠が残る書類も、録音も一切なく、話だけで報告を済ませた。リヒテンシュタインとスイスの銀行と、もひとつ香港の銀行にも会社名義で口座があります。そういって嫌疑が掛かっている3人の幹部が情報と交換に受け取る報酬の振込先の銀行口座の名義(会社名)と口座番号を報告した。

これが、デッチアゲの全くのウソの名前と番号だった。いい加減もいいとこで、詐欺である。形だけ調査したように証拠が見つかりましたとウソの報告をした。ルノーのセキュリテー課長がそれを知っていたかどうかはわからない。とにかく、結果をトップまで報告した。でっちあげなどとはツユ知らず、尻尾を掴んだぞ、と喜んで提訴に踏み切ったゴーンさん、抜かりましたね~。香港の銀行に口座番号がというウソがまた中国の仕業かと疑惑を膨らませたのだろう。


フランスの田舎暮らし-ゴーン

Geos興信所のハインリッヒ所長は、この不埒な所員に辞職を迫り、会社の信用を落した損害賠償を提訴すると決めた。ルノーが訴えを起こそうとしていた書類には「深淵」が口を開けていた。物的証拠はなにひとつなかったのだ。

「ゴーンよ去れ!」「重大な過誤を犯したゴーン社長はただちに解雇されるべきだ」「辞職すべき」という声は当然高まる。会社に忠実に情熱を傾けて仕事をしてきた社員を、根も葉もない中傷を信じて解雇した。ルノーだけでなくフランスの自動車産業で働く者たちの気持ちを逆撫でした、憤慨だと声が挙がっている。

産業大臣のエリック・ベッソンは社会党からサルコジ大統領の曳きで閣僚入りした大臣だが、「ゴーン氏は日産・ルノーの提携の要となる人物であり、いまはこれ以上ルノーを不安定にすべきではない」とゴーン社長退陣要求を退け、エレクトリック・カーを支持すると表明した。

フランスは、アメリカに次ぐ原発大国で(19カ所、58基の原発)、ドイツ、スイス、イタリアが脱原発を決議しても、ウチは止められないと原発を続けるだろう。ドイツで電力が不足したらフランスの原発生まれの電気が送られるのだ。

脱石油でガソリン、軽油に代わり、二酸化炭素、NOxなど、排ガスを出さない電気自動車に替わったとしても、それだけの電力が余計必要になる。フランスでは原発で発電され夜間低料金で充電できる電気自動車の利点を強調する。


フランスの田舎暮らし-電気自動車


日本の福島第一原発事故により、ヨーロッパはいま、はっきりとエネルギーを何に求めるか?転換点を迎えている。第二次大戦を境に石炭から石油に移行し、やがて1973年の石油危機を契機に、アメリカ、そして石油の無いフランスと日本は原子力にエネルギー源を求めた。

一時期、水素燃料が話題になったが、水素を作るために水を電気分解するか、化石燃料から取り出さねばならず、また水素の貯蔵にインフラ整備したり、圧縮する、水素吸蔵合金に蓄えるなどの必要があり、耐久性、安全性が十分でない。

ハイブリッド・カーは脱石油過程での過渡的なソリューションだろうが、従来の内燃機関と電気モーターとの両方を備えねばならずスペース・重量ともに車には負担となる。ゴーン氏やベッソン産業大臣はフランスが脱原発へ舵取りすることはあり得ないと見ている筈で、そのためにオール電気の自動車を目指せとしている。

2007年11月にルノーは、インドで「廉価な電気自動車」の製造・販売を目的とし、バジャジ(Bajaj)グループと合意書にサインした。2500ドルの世界一安価な自動車を製造・販売するとゴーン社長は発表した。しかし、ルノーのインドでの展開はうまくいっていない。

2011年、日産は「排ガス・ゼロ」の「リーフ」をフランスでも販売開始し、ルノーは商用車「Kangoo」の電気自動車「フルアンス」の販売を開始した。ルノー・日産で電気自動車開発に投資した金額は40億ユーロ(5千億円弱)といわれる。

電気自動車は内燃機関に比べエネルギー効率が数倍高い。電動モーターの起動トルクは大きく、始動から高速回転領域までの電力の変換効率がそれほど変化しないので、変速機を必要としない。また、駆動力と制動力の双方を生みだすため、電子制御で高性能の走行コントロールとABSが可能だ。現在電池の値段が高いのは7割がコバルトの値段だからで、他の金属(ニッケル、マンガン、リン酸鉄など)を使った正極材料が開発されつつあるし、リチウムは陸上にも豊富にあり海水中に無尽蔵に存在する。

このように電気自動車は確かに長所が多いのだが、元になるエネルギー源が解決されなければ、長期の開発計画が立てられない。たとえば、東京首都圏で現在走っている自動車2千万台の4分の1の500万台が電気自動車になると仮定すると、新たに必要となる電力は100万kW程度となり、これだけでも原発1基分の発電量に相当するという。


 (つづく)

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