ゴーンさんが2009-2010年に日産から受け取った報酬はなんと8億9千万円。ルノー社長の年報は124万ユーロ(約1億2千万円)と8分の1。
ソニーのハワード・ストリンジャー氏の同期の報酬は8億1千万円で、日本企業のガイジン社長ではゴーンさんがトップ。
しかし、そんなゴーンさんをトップに戴くフランス最大の自動車メーカー、ルノーは最近かなり様子がおかしいのだ。
2011年5月度の新車登録台数は、ルノーにとって燦々(悲惨の意味で)たるものだった。史上初めてフランス国内でトップの座をプジョーに譲ったのだ。
フランスの5月の新車登録数は2010年比全体でマイナス8.3%で、このマイナスはすべてルノーのせい。シトロエン+15.4 % 、プジョー +9..7%だったのだから。
ルノーはマイナスの原因を日本への依存度が大きく、3月11日の東北大震災の被害で特にデイーゼルエンジンのパーツが入荷できなくなったためとしているが、他のメーカーだって日立からデイーゼルエンジンのパーツが入手できず生産をストップしている。
2011年の正月も明けやらぬ1月5日、フランスのマスコミは一斉にルノーの産業スパイ事件を報道した。1月4日ルノーは3人の幹部を「産業スパイ、汚職、信頼の濫用、窃盗および隠匿を組織的に行った」容疑で提訴した。三人は裁判所に出頭を命じられ取り調べを受け、会社からは職務停止処分を受けた。そして数日後、ルノーの会長兼社長カルロス・ゴーンは三人の幹部を解雇したと発表。
フランスを代表する自動車メーカー、ルノー。1996年に国営から民間企業になったとはいえ未だに国が15%の株式を保有し筆頭株主。その企業の経営者が、根も葉もない匿名の誹謗中傷レターを真に受けて、幹部を提訴するなど、フランスのマスコミといえども思いもよらず、確かな根拠の許に訴訟に踏み切ったものと信じ、また中国の仕業かと嫌疑を中国へ向けた。おまけに日本人の産業スパイの遣り口まで映像にして流した。
訴えられた三人の幹部は、身に覚えはまったく無く、潔白を主張し、弁護士を雇って逆訴訟した。エリック・ベッソン産業大臣は「経済戦争」を口にし、フランソワ・フィヨン首相はルノーのナンバー2、パトリック・プラタ取締役副社長と会見した。
会長のカルロス・ゴーンはインタヴューに答え、「狙われたのはテクノロジーでなく、経済的なモデル(車種)に関する情報」だとし、情報の漏えい先については「確証が無い」ことを明らかにした。
スパイ容疑を発表する5か月前、「企業倫理委員で法務部長、ルノーのセキュリテイーのパトロン(最高責任者)、クリスチャン・ユッソンが私に会いに来た」とゴーン会長は語る。
「彼は、高い地位にある幹部全体について極めて気がかりな情報を私に知らせに来たのだった」
5カ月間、情報を外部へ出さなかった理由は?と訊かれ、ゴーン会長は答える。
「ルノーには、この種の事態への非常に精密なプロシージュア(手順)があるのですよ。だから、私は、いつものプロセスを踏もうと判断した」と、訴訟に踏み切った経緯を説明した。
社内調査に私立探偵(興信所)を使うということですか?との質問にはゴーン会長は答えず、「われわれが得たすべての情報は司法の手に委ねられた」とだけコメントした。
裁判所の要請を受け、フランスの国内中央情報局(DCRI)が1月半ばから調査を開始した。
すわ。また産業スパイ事件!真っ先に嫌疑を向けられた中国は名誉を汚されたと抗議。何か新たな証拠が見つかるだろうか?大衆は期待を膨らます。ところが……
3月3日「ル・ポワン」紙とテレビは「提訴された3人の幹部が報酬を振り込まれたとされる外国の銀行口座は存在せず、報酬が降り込まれた痕跡も無く、口座番号は偽の番号だった」とDCRIの調査結果を公表したのである。
どうなってるんだ!テレビを見ていて大衆は首をひねった。根も葉もないレターを根拠に幹部を疑い解雇したってのか!とんでもないことじゃねえか。
訴訟するに足る「物的証拠」が何一つなく、提訴は取り下げられた。
会長のカルロス・ゴーンは「経営陣が集団で過ちを犯した。嫌疑を掛けた幹部3人は、無罪であり復職してもらう」と集団の責任を認めはしたが謝罪はしなかった。
DCRIの調査で明らかにされたことは、スイスにはいかなる口座も振込の痕跡も発見されなかった。また、リヒテンシュタインも権威筋が行った調査で、口座番号は存在せず、3人は白という結果が出た。
ルノーが行った内部調査で得た情報の中で唯一の証拠「口座番号」は偽りのものだった。つまり、ルノーは「誤った情報」を受け取り、それを元に3人を解雇し訴訟しようとした。
先にフィヨン首相と会見したパトリック・プラタ副社長は「なんらかの陰謀説」、どこかからの「裏工作」の可能性を隠さなかった。
いったん解雇され、復職となった3人の一人、マチュー・テナンボムはルノーを提訴すると発表。またもう一人は「車造りに一生を掛け情熱を注いで働いてきた。名誉も傷つき汚されたが、それより地獄のような苦悩を味わった。いまさら会社へ戻れと言われても、もう戻って働く気がしない。会社(ゴーンを含めた経営陣)は社員をいわれのない疑惑で踏みにじったのだ」と取り返しのつかない過ちを犯した経営陣を非難、愛想づかしをした。
どうしてこんなアホな結果になったのか?なにがなんだか、よくわからない。それが大衆が受けた印象だった。まったく、ルノーって、ゴーンってなにやってんだ!とだれしもが思う。
DCRIも、これは「産業スパイ」ではなく「ルノーの内紛」であり、最終的には雇用者と被雇用者の係争を扱うプリュードンム Prud'hommes( 労働裁判所)で裁かれるだろうとコメントした。
ドイツの日刊紙「シュピーゲル」は早くから、ルノーの内紛説を唱え、「エレクトリック・カー」つまりオール・エレクトリック、ガソリンや軽油を一切使わず、搭載したバッテリーだけで走る電気自動車への志向を決定したカルロス・ゴーンと、それに反対しハイブリッド・カー(内燃エンジンと電気モーターの併用)を志向すべきとする一部のエンジニアとの対立の犠牲に3人の幹部がなり、対立のツケを払わされたと論調した。
では、提訴に先立ちルノーが行った内部調査、誤った情報を掴まされ、偽りの口座番号を報告され、確証ありと提訴に踏み切った調査とはどんなものだったのか?
これは一流企業、それも日産を立て直し、ルノーと日産二つの会社の社長を兼務する「遣り手」で評判のカルロス・ゴーン氏にしてはかなり、いや 相当に「オソマツ」な結果で、こんなカンタンに詐欺師に騙されたとしたら、いかにも油断しすぎ、感情的対立が最初から、あいつら絶対クロだから、さあこれで証拠があがったと、ニセの情報に飛びついたフシがある。
続きは明日の投稿をお楽しみに……
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