14 - 2 時子の思い | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

 時子は茶の間の椅子にひとり座って開け放した窓から入り込む暑い夏の午後の風を肌にあてていた。

 絵には全体のヴィジョンがある。私が求めてきたのはいつもヴィジョンだった。私が発表した絵を気に入ってくれる人は、私のヴィジョンを共有してくれたから好きになるのだ。和秋とジャンヌが気が合うのは音楽を共通の趣味に持つからだ。音楽には旋律とリズムとハーモニーがあって、ふたりが気持ちを通わせるように出来ている。

 レイモンがわたしを襲った時、彼は私の底にある鼓動を捉えていたのだ。私は彼を受け入れ、彼と鼓動を合わせていった。リズムが呼応して絶頂まで達した。私は、しばらく絶えていた生命の躍動を味わった。心臓は最高に脈打った。あれは二度と味わいえない歓喜だった。あの燃焼の瞬間を誰もが胸の底に描いていて、人生のある稀な機会にそのヴァーチャルな夢の実現を願っている。その一瞬が訪れた私は幸福だ。

 慣れっこになってしまった武彦との生活は平安で、これを与えてくれる相手は空気のようであってもその方が貴重だということに私は後から気がついた。武彦はそれをわかっていてあの時、私を赦す優しさを示したのだろうか?

 絵にだってリズムや躍動がある。これからは特定の相手ではなく、不特定の多数に、私の生命の躍動を伝えられる作品を作りたい、と時子は思った。

 (つづく)

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