「イカルス石油に職を得ることが出来たのは、ロイクとフーキエのお陰でした。フーキエが社長の間、わたしは安心して仕事に打ち込むことが出来た。
あなたが社長になったとたん、わたしは解雇されたのです。
もういちど職場に復帰させろなんて言いません。ただ、フーキエの扱いを、も少し寛大にしてやって欲しい。あなたがエマと交わされた、フーキエの断罪のためにはどんな情報も惜しみなく提供するってことを、少し手加減して欲しいんです。
人間はだれしも、自分のうちに弱みを持っている。自由になる多額の金を持つとちょっとだけ使ってもいいじゃないかって気になる。わたしも、あなただって、そういう立場に立てば、やるかもしれないじゃありませんか。
人殺しをするのとワケがちがうんです。たまたま、そういうことに細かいエマというプロテスタントの予審判事の目にとまり、重箱の隅をつつくようにして帳簿を調べられ、不正が暴露された。
会社の金で自分がいい思いをしたんだから罰せられるのは当然だ。ただ、彼は持病を持っている。疥癬病みで苦しんでる。監獄での扱いを寛大にしてやって欲しいのです。
要求が容れられなければ、アフリカとあなたの会社とは依然として黒い関係が続いていることをおれたちは暴露しますよ」
「ほう。そんな写真で出来るかな?」
「わたしは、ある筋から、あなたが今日おられた製油所の経理の帳簿と書類の写しを手に入れた。そこにはいろんな興味深い数字と情報が載っている」
ジャクマンの薄い唇が真一文字に結ばれ、顔が引き締まるのがわかった。
「世間にはピロマンヌがいて、製油所やLNGタンカーの出入りの時、港が爆発するのを夢見たりしている。あなたの製油所の不正が表沙汰になれば、この種の狂人はそらみたことか、間違ってるのは世間で正しいのは俺たちだと自分を正当化し、彼らの頭に宿る狂気を実行しないとも限らない」
「そんな危険極まりない狂人はひっ捕まえて即座に精神病院へ入れなければならない」
「この写真と同時に撮ったビデオ、それに帳簿の写しをマスコミに流しても構わないとおっしゃるんですか?」
「わかった。きみの要求を容れよう。エマに話してみよう。だから、それはちょっと待ってくれ」
「あなたが要求を聴き入れて下さるなら、私たちも今は行動を控えましょう。へたに狂人を刺激して市民にまで被害が及んでは大変ですから」
「ルイの件は、私からエマに手加減を頼んでみよう。それだけかね?キミの要求は?」
「そうです。ルイの刑を軽くしてやってください」
(つづく)
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