13 - 3 たった三時間の失踪 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

 ル・アーヴル警察署のガエタン警部は、犯人は、イカルス石油社長ジャクマンを初めから狙い、彼を乗せた車がその時間にタンカルヴィル橋を渡りパリへ戻ると知って拉致に及んだと見て、イカルス石油内部の人間と何らかの関係があり情報を入手できる立場にいる人間に的を絞った。その日ジャクマン社長のスケジュールを知っていた人間、知り得る人間のリストを秘書課の協力を得て作成しろと部下に命じ、リストの絞り込みから捜査活動を始めた。

 パリのデファンス地区で最高のビルを本社に持つイカルス石油の社長がその晩、ノルマンデーくんだりまでなぜ出向いてきたか?ル・アーヴル臨海工業地帯にはイカルス石油の精油所がある。社長が出向かねばならない重要な問題が何か精油所で生じたのか?

 ジャクマンは確かにその晩、精油所長はじめ要人とデナーを共にした後、遅くまでバーで話し込み、真夜中近く、秘書室長とともにサフランに乗ってパリへ向ったのだ。ガエタン警部は、この大企業が何か隠れたビジネスでもやっているのか疑問に駆られた。

 警察の捜索にかかわらず、社長の身柄も問題のサフランも発見できずこれといった手がかりも得られなかった。ところが、夜の二時頃、ジャクマン社長自らが港の埠頭にある夜警の詰め所へ現れたのである。

 火力発電所の石炭陸揚げ設備のある埠頭の突端に、社長は眼出し帽が約束したとおり放りだされたのだった。目隠しをされ、両手を後ろ手に縛られ、ひとり放置された。社長は地面に座り込み両手の平で地面をまさぐりやっと手に触れたガラスの破片で両手を縛っていた紐を切り、目隠しを外して、埠頭の入口まで四キロの道を歩き、守衛がいる詰め所へ転がりこんだのだった。

 (つづく)

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