通報を受けたル・アーヴル警察署は直ちに、パトカー三台と夜勤の署員六名を総動員して、イカルス石油社長とオリーヴ色のサフランを捜索したが二時間経っても発見できなかった。
手がかりは運転手が見た警官服を着た男の顔だった。運転手は、暗くて確かではないが最初ヘッドライトに浮かび上がった時と遠くの仄かな光で男の髪が淡い金髪に見え、肌は白人のように白かったと証言した。
車を降ろされた時、男が助手席へ歩いてゆくのを見たが身長は百八十センチ位でやや猫背だった。眼出し帽の男はやはり身長が百八十センチ位で若々しい動きをしたと、それだけのことしか思い出せなかった。
三十分後にはロータリーにパトカーが来て張り込んだが、その三十分後に、ふたりの若者が乗ったR5がロータリーをひと回りし、もと来た道を引き返したのを誰も気にとめなかった。
二時間経っても、犯行声明や身の代金要求など何も意思表示がない。社長の安否は依然わからず、命が狙われたとは思いたくないが慎重を期して報道は控えて欲しい。社長は確かに二時間前から行方不明だが、身の代金目当ての誘拐事件とはまだ断定できない。犯人のひとりが、お時間を拝借し社長とサシで話したいと言ったと秘書室長は警察でコメントした。
(つづく)
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