ここ半月ほどの間にバタバタと苛酷な事件が重なってつらい思いをしたから、それを洗いながしてさっぱりした気分になりたいと彼女も喜んで応じた。午前中まだ早い時間でプールはすいていた。
ジャンヌ・マリーはラヴェンダー色の水着を着て出てきた。陽光のなかのその水着姿を和秋は眩しいものをみるように眼を細めて見た。水着は胸元の白い肌と金色の髪に色がよく合い、彼女の引き締まった胴のやわらかな曲線としなやかな肢体をいっそう引き立てていた。
周囲の光景がかすみ、彼女だけが初夏の光のなかに輝くように浮かびあがり、その強烈なイメージは何か超現実的な美を見るように和秋の脳裏に焼き付いた。和秋は一種の眩惑を感じた。思春期から和秋の深層に秘められてきた、女神を崇め、母親を思慕するような甘味な震えと欲望をともなった崇敬の念が彼の胸を襲った。
彼女は背の立つ所に一度だけ浸かるとすぐに水から上がり、プールサイドの長椅子でカズが泳ぐのを見ていると言った。森で育った彼女は泳ぎは得意ではなかったのだ。和秋が水泳が好きで彼女のために遠慮してせっかくの喜びを奪ってはと気をきかせて水着を着たのだった。
(つづく)
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