薄闇の中の商業堀と王様の堀にかかる橋を渡るのが見え、サン・フランソワ街の道を折れ曲がりながらヴォーバン堀の方向へ走り去り、また橋を渡って空き倉庫の並ぶフリッサール河岸を逃げて行く姿が見えた。
五分ほど和秋は追い続けたが、男の姿は消えていた。やがてケバウが手持ち無沙汰に両手を垂れ戻ってくるのと出会った。ケバウは、遠くから倉庫の一つに逃げ込むのが見え、それらしき扉を押し中へ入って探したが見つからない。倉庫には空部屋が無数にあり、暗いので、夜、俺たちで探すのは危険だ。あの倉庫に隠れ家があると突止めたから、今夜はあきらめて、引き上げようと言い和秋とムハメッドもそれに従った。
ジョギングで鍛えた和秋よりもケバウの足は早くそれよりもさらに速いテロリストは何者か。とにかくムホクが無事でなによりだった。ムホクの安全を考え、その夜は武彦がムホク夫妻とムハメッドを送り、和秋はケバウとジャンヌ、イザベルと李君を送った。
ルフェーヴルは警察や出入国管理局にイスラム武装過激派の入国の危険を通知し、テロリストの人相を届け出て捜査を求めると約束した。和秋とケバウはイザベルと李君にそれぞれユダヤ人と中国人の組織網に働きかけて、倉庫周辺とイスラム過激派のこの街への侵入を調べて貰うよう依頼した。
(つづく)
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