金額的にも当てにできないシャノワール先生の手伝いの報酬でデルタ・プレーンの教習所に申し込んだ和秋には願ってもない話のようだったが、和秋はすぐに飛びつけないものを感じた。秘密情報を盗むのはアンフェアーじゃないか?アンフェアーな手段で手に入れた情報の報酬として受け取る金は、汚ない金じゃないか?
「なにをためらってるんだ?」ケバウが不審そうに訊いた。
「情報を盗むのに気がとがめる」
「バカ言え。入手困難な情報だから高く売れるんだ。まだ盗めるかわからんくせに」
「良心の問題さ」
ケバウがフンと鼻先で笑った。
「純粋な良心に照らして、欲望のために盗みを働くのは卑しい行為だって感じる」
「最後の審判をくだす神なんていやしないよ。グリーンの神さまはいる。生きとし生けるものの神々はいる。エコロジーと民謡のために資金稼ぎをするんだ。どこに良心に疾しいとこがある」
金だけが目的だったらケバウがいくらエコロジーのためと説得しても和秋は動かなかったろう。
アンフェアーもくそも、競争だから。競争に加担するだけさ。世間では、何か目的があってそれを達成するためには、多少汚いことや軽蔑を甘んじて受けねばならないんだ。ケバウはなをも続けたが、和秋は釈然としなかった。
この世はみんな取引きだよ。交換で成り立ってる。欲しがっている企業に情報を渡して報酬を貰うのに疾しいとこなんかありゃしない。競争を公正にというのは公正取引委員会が判断することでどこまでが公正でどこからが不正なのか取引きの当事者が判断することじゃないよ。役人が考えればいいことだ。オリンピック委員会だってワイロで動いてるんだぜ。自分だけ清く正しくやってたんじゃ何もできないよ、今の世の中とケバウは続けた。
(つづく)
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