11 - 4 新緑の森 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

 快晴の空の下の新緑の森はすがすがしかった。ブナの若葉を透かして緑を帯びた日光が森全体を明るく照らし出していた。爽やかな樹の香りと草の匂いがした。少し歩いただけでもう汗ばむほどで、ふたりは着ていたジャケットやセーターを脱いだ。

フランスの田舎暮らし-foretverte


 道の両側に黄色のきんぽうげが咲き乱れ、どこかでカッコーが鳴いていた。細道を並んだり前後になりして歩くうちに手が触れ合い、それを機にふたりは手をつないで歩いた。あちこちに小鳥のさえずりが聞え、ツグミが唄っていた。

 「ちょうど、こういう光景を詠んだハイクがあるんだ。ハイクしってるかい?」

 「世界一短い定型詩でしょう。詠んでみて」

 「あらたうとあおばわかばのひのひかり」

 和秋は芭蕉の句を声に出して詠んだ。ジャンヌ・マリーも口にしかけたがはじめの五音がやっとだった。和秋は一語一語を切って詠んでやった。最初の五音に続いて、七音、五音を発音した。和秋はその一語一語を説明した。

 「ひのひかり」は日光で地名とかけたのだ。「ひ」は太陽で「ひかり」は陽光なのだ。

 「そうだ!」突然ジャンヌ・マリーが叫んだ。

 「シャノワールが宿題にした、ヒの意味。太陽のことなんだ!」

 彼女は謎を解いた喜びに顔を輝かせた。

 「そうか。太陽か。でも、ヒには燃える火という意味もある」

 「燃える火だったら、それは純粋な愛のシンボルよ」

 (つづく)

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