道の両側に黄色のきんぽうげが咲き乱れ、どこかでカッコーが鳴いていた。細道を並んだり前後になりして歩くうちに手が触れ合い、それを機にふたりは手をつないで歩いた。あちこちに小鳥のさえずりが聞え、ツグミが唄っていた。
「ちょうど、こういう光景を詠んだハイクがあるんだ。ハイクしってるかい?」
「世界一短い定型詩でしょう。詠んでみて」
「あらたうとあおばわかばのひのひかり」
和秋は芭蕉の句を声に出して詠んだ。ジャンヌ・マリーも口にしかけたがはじめの五音がやっとだった。和秋は一語一語を切って詠んでやった。最初の五音に続いて、七音、五音を発音した。和秋はその一語一語を説明した。
「ひのひかり」は日光で地名とかけたのだ。「ひ」は太陽で「ひかり」は陽光なのだ。
「そうだ!」突然ジャンヌ・マリーが叫んだ。
「シャノワールが宿題にした、ヒの意味。太陽のことなんだ!」
彼女は謎を解いた喜びに顔を輝かせた。
「そうか。太陽か。でも、ヒには燃える火という意味もある」
「燃える火だったら、それは純粋な愛のシンボルよ」
(つづく)
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