11 - 4 森の霊気を吸い込む | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

 ブロトンヌの森へ行く前に、ルーアンの養老院へジャンヌの祖母を見舞いに寄るのだろうと和秋は思っていた。ジャンヌ・マリーは病気の祖母の事を考えているようだった。

 「悲しくなるわ。あんな男につけまわされなきゃならないって考えると。まあ、あっちはどうにかおさまるまで逃げればいいんだけど、病気のメメのほうはどうしようもないわね。

 あの病気はね、段階的に急に悪くなるの。きのう、ママンが行ったんだけど、もう一分前のことも覚えてないのよ。脳細胞がどんどん死んで行くの。知能の低下は人を無意識に支配されるままにするらしいの。かわいそうなメメ。赤ん坊に戻ってしまったようだって。つらいわ。だんだんに死んで行く人間を見るのは」

 車がブロトンヌの森の入口にさしかかった時、ジャンヌ・マリーは耐えかねたように息を吐き出して言った。

 「お願い。今日は先に森へ行って。死んで行く人たちに会ったら家へは戻りたくなくなる気がする。今日は森がきれいだから、先に歩きましょう。太陽をからだじゅうに浴び、森の霊気を胸いっぱい吸いこむのよ」

 彼女は死に捕らわれた老人に冥府へ誘われ、萎えた魂に生の息吹を吹き込むように胸を広げ森の空気を吸った。

 (つづく)

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