アメリカやスイス、ドイツ、スカンジナビア諸国はいざしらず、フランス、イタリー、スペインなどラテン系つまりカトッリック系の国では、概ね「自分に不利なことは自分から進んで言わない」のが普通だ。
馬鹿正直とか「正直ショウちゃん」は決して尊敬されない。仲間がたとえ交通違反を犯したと知っていてもポリスに告げ口は絶対しない。庇うのが仲間として常識なのだ。
日本では昔「千みつ屋」と呼ばれていた不動産業者。物件の値が張るため千に三つの成約があればいいという成約を得るのが難しい商売だ。
フランスの不動産業にはちゃんとした法律もあり倫理綱領もあり、クーリング・オフの制度もある。にもかかわらずこの仕事に携わる人たちは概ね「馬鹿正直」ではない。
いいかえれば、自分に不利なことは客から質問されない限り進んで告げたりはしない。
例えば、売り家に興味を持つ見込み客が不動産業者と売家を訪れたとしよう。家の前に駐車場がある。客が「この駐車場もついてるんですね?」と訊ねる。
不動産屋は「もちろん好きなだけ車を置いておけますよ」と答える。
見込み客は自分でその回答を「駐車場も売り家の敷地に含まれている」と理解してしまう。彼はそう望んでいるのだから。期待がそう解釈させるのだ。
ところが、不動産屋はその駐車場は実は周り6軒の共同所有地だと知っている。車4台分しか面積が無く、6軒が毎日のように駐車の場所取りで争っている事も知っている。
しかし、賢い不動産屋は、そんな事実をおくびにも出さない。客の注意を他の事に向けてしまうだろう。どんな正直者でも、こと商売に関する限り、なるたけ客がいいように解釈する言葉を探して返答するだろう。
あなたは、こんな不動産屋をどう思うだろうか?
正直に「ここは6軒の共同所有地ですよ」と答えるべきと思うか、それとも「プロとしてさすが老獪な答え方をする」と半ば称讃するだろうか?
ネットワークビジネス業界では、似たような状況の、当たらずとも遠からずの事が起こる。勧誘をしていて、見込み客が「ほんとに3カ月で月収30万得られますかね?」とあなたに訊いたとする。
あなたはYesとも Noとも答えられない筈だ。本人のやりよう次第だし、どれだけやるか?本人の勧誘に魅力があり大勢の人がついてくるか、それともどっか魅力に欠けて人を集められないか。運にもよる。時期にもよる。あまりに沢山の予知できないファクターがありすぎる。
「じっさい、3カ月で30万。もっと多く稼ぐようになった人がたくさんいますよ。」くらいのことしか返事としてはできないはずである。
ここにネットワークビジネスの陥穽がある。主体性と主観性がからんでくる。「できる」「やる」という主体的な意思がないかぎり出来ない世界なのだ。
2008年から2009年に経済産業省や東京都から業務停止命令を受けたネットワークビジネス企業が相次いだ。
*ニューウエイズジャパン(2008年2月20日)「不実告知」など特定商取引法違反で3カ月の一部業務停止命令。
会員らは「アトピーが治る」「ガンが再発していない」など虚偽の説明でシャンプーや栄養ドリンクの購入や入会を勧めていたという。
*フィールズとマイクロシステムテクノロジー(2008年11月20日から3カ月間)東京都は 1)販売目的の隠匿 2)重要事項不告知 3)不実告知 4)断定的判断の4っつを違反事実として業務停止を命じた。
*フォーリーフジャパン(2009年2月20日から6カ月間)「勧誘目的等不明示」「不実告知」など特定商取引法違反に当たるとの理由。同社はクーリング・オフに関して概要書面、および契約書面に「商品を使用し、一部または全部を消費した場合はクーリング・オフ出来なくなる」と書き変え不実の記載のある書面を交付していた。
*スタイレックエンタープライズ (2009年4月10日から3カ月間)
経産省によると同社の会員は「25万円で契約すると数百万円、億単位のお金が入ってくる」「10人紹介すればランクが上がって収入になる」また「海外の大手家具製造販売業者に成木を引き取って貰う契約が出来ている」などと嘘を告げ勧誘したり、誰もが簡単に高額な報酬が得られるかのように不実のことを告げていた。(以上月間ネットワークビジネスWebによる)
スタイレックエンタープライズ社は桐の苗木とオーストラリアでの植林事業参入とをセットにして売っているのでやや複雑だが、フォーリーフジャパンの クーリング・オフの書き換えは会社や会員自身にとってマイナスだ。
扱っている商材や製品に関して、少しでも品質に自信があるなら、むしろ積極的にクーリング・オフの制度がありますよと宣伝する方が見込み客の信頼を獲得することができると信じる。
