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一方で、身体についてまだ話していないことがあるというのが、心に引っかかっていた。どこまでお話すべきなんだろうと考えた。これは、未だに何が正解なのか分からない。


まだお付き合いの段階じゃないし、学生同士だし、深く話して引かれたらどうしよう。

でもずっと話さないでいて、後でお互いに後悔するのは嫌だ。

 

恐れていたのは、後で判明した時に、困らせたり、傷つけたりしてしまうこと。そして、自分が傷つくこと。

後で分かって、彼が動揺している姿を見るのは嫌だった。「こんな大きな事情がある人だったなんて」、みたいな。


そう思った私はとりあえず、「話すことリスト」を日記の中にこっそりと書き込んだ。絶対話さなきゃいけないことと、深い仲になったら話すことのふたつに分けた。書いておけば、いざという時に思い出せると思った。

 

 

 

2回目のお出かけ。ゆっくりとお話できる、カフェにも行った。

私の身体のことを改めて聞かれて、私はかなり多くのことを喋ってしまった。「話すなら今しかない」と思ったんだと思う。あのリストに書いたほとんどのことを喋ってしまった。二回目のカミングアウトだ。

 

 

 

利尿剤などの薬を飲んでいること。

障害者手帳を持っていること。
手術を何度か受けていること。

 



手術を受けた、といえば傷があることもおそらく察するだろう。
ちなみに、私の身体はスリムなんてもんじゃないくらい細くて、健康的とはとてもいえない。その上、傷もあるのだ。傷を消したいなんて思わないけど、でもやっぱり、気になってしまう。
私は自分の見た目が、当時好きではなかった。自分さえ好きになれないものを、受け容れてくれるのだろうか。

そういう怖さもあった。

おまけに私は口下手だ。このお出かけの時、私は上手く話せなかった。
なのに、こんな話はできてしまった。話しすぎた。やってしまった、と思った。
いきなりこんなヘビーな話をしたのだ、絶対驚かせてしまっただろう。
でも、ちゃんと聴いてくれた。

 

 

あの時、「しなない?」と聞かれたと、記憶している。
こんなに心配してくれる、というか、向き合おうとしてくれる人は、家族以外にいるかな、と思った。

だからもう、これで関係が発展しなくなったとしても、今後仲良く出来なくなったとしても、それでいいやと思った。
ちゃんと向き合って考えてくれたんだから、あんなに真剣に聴いてくれたんだから、寂しいけれど後悔はないと思った。

 

帰りの電車で、そして、家に帰ってからも、自室で泣いた。

コミュニケーションが上手くとれなかった悔しさ・申し訳なさと、ちゃんと聴いてくれたことへのありがたさ、色んな気持ちが溢れて泣いた。


お互い状況が落ち着いた次の月に、3回目のお出かけをした。

また一緒にいられるということに、本当に本当にホッとした。嬉しかった。

その日、私に初めての恋人が出来た。

彼は、いまの私の夫である。

 

 

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