<只今日本に一時帰国中>



イタリア人が日本に来て驚くのは、ジュエリーのように扱われる果物、そしてその驚くべ価格である。



六本木は外国人が好きな街でもあるため、外国人の友人知人が来た際、ミッドタウンには必ず連れて行くのだが、その地下にあるサン・フルーツ東京のジュエリーのような扱いのを受けている果物たちに皆は驚きの念を隠せない。

そして次々と一眼レフのシャッターを切っていく。



そもそも個別包装をしている時点で驚き、桐の箱の中に丁寧に寝かせられているのを見てはため息をつく。
驚きのため息なのか、呆れ感からなのかは想像にお任せする。


イタリアの果物。
イチゴを除いては糖分も味も日本以上のものも多々である。
地中海の陽の光を思う存分に浴びて育ったものたちだ。


それなのに驚くほどの安さで、びっくりするような扱われ方で売られている。
なぜなのか?


日本では高級果物を贈答品とする文化があり、そのために少しでも歪なものや見た目の良くないものは選別されてしまう。
その点イタリア含むヨーロッパでは、飲み水にあまり適さない硬水文化の影響もあり、果物は水分やミネラル、ビタミンを補給するといういわば生活必需品の役割をも担っている。

かつ大量生産をされる果物は食用だけではなく、ジャムやワイン、ドライフルーツにして保存食の役目にも一役買っている。




そして果物を栽培する面積の違いももちろん挙げられる。
日本の狭い土地の中で、手間のかかる果物栽培をしているのは小規模家族経営の方がほとんどであり、そのため経済性を高めるがゆえに”一木一果”を目指すのである。

つまりは栄養と味を一つの実だけに集中させることにより、良質な果実を作り上げる。
その結果、果物はヨーロッパのような生活必需品とはならず、デザート感覚的な贅沢趣向品に近くなっていく。


懐石料理を考えてみても明らかである。
果物は水菓子と呼ばれ、イタリアでいうところのドルチェ扱いに相当する。



気候から考えてみると、地中海性気候のイタリアと温帯湿潤気候の日本。

夏は高温で雨が多いのが日本であり、乾燥しているのがイタリア。
気候の違いはもちろん野菜や果物にも影響する。




日本在住時は、高知産のフルーツトマトが大好きだった私だ。

先日、スーパーで何気なく見つけた糖度8度というフルーツトマトを買ってみた。

丁寧にパッキングされ、お値段もイタリアで買うものの3倍以上。
見た目の美しさは言うまでもない。


ワクワクしながらの試食タイム。
、、、、残念ながらどんなに糖度の高いといわれているフルーツトマトもイタリア産には敵わなかった。
イタリアのトマトはやはり美味しい。
甘さだけではなく凝縮された味の密度が濃い。
トマトは歴史上はイタリアからもたらされたものではないのだが、そうも錯覚を起こさせるほどにトマト=イタリアとなっているのにはやはりそれなりの理由があるからであろう。


そして、イタリア野菜でダントツに美味しいのは人参である。
普通に食べていても甘さが感じられるほどに、とにかく美味しい。
イタリアの人参に慣れてしまっている私は、残念ながら日本の人参はあまり口には出来ない。


もちろんその逆もある。
日本で美味しいのは、鮮度の良い時に収穫される胡瓜や茄子。
日本の胡瓜は太さも均一で表面のトゲもとても鋭く痛さを感じられるほどに新鮮である。
イタリアの胡瓜は、、、残念ながら収穫されるべき時期にされていないのがほとんどのため、太さも驚くほどとなり均一感もなく、中の種も驚くほどに成長しきってしまっている。
日本に来て娘が喜ぶのは、まずこの胡瓜である。
そして皮が口当たりの邪魔をしない茄子。


個人的には、日本のホクホクの甘いカボチャにも一票である。

ヨーロッパは糸カボチャ種がほとんどであり、味も淡泊で控えめ、パスタやリゾットには好まれるがドルチェには適さない。
カボチャプリンなど勿論頂けない。


日本でしか頂けない美味しい野菜を満喫すべく、今日も買い物へと繰り出す。
そういえば昨年の今頃は、野菜ソムリエ試験のために日々野菜のレポートと格闘していたのだった。
懐かしい。
今年はゆったりとした気持ちで日本滞在を楽しんでいる。
風邪は未だ治ってはいないのだが、、、涙


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