特養にいる父に会いに行きました。

 

別れの時です。

 

 

 

 

娘「お父さん、わたし帰るね」

父「おれも帰る。切符がない。切符はどこだ」

娘「お父さんは、今日ここに泊まるのよ」

父「何で?」

 

何でと言われても困る。

ここがあなたの家ですよと言っても聞かないだろうし。

 

父はひたすら、

「切符がない。切符はどこだ」

と言います。

 

立ち上がろうとする素振りも見せるので、放って行くわけにはいかず、父をなだめます。

 

 

「お父さん、切符なら後で届けるから」

と言っても、

「何で?何であんたは帰るのに後で持ってこれるの?」

と言います。

 

こんな時だけ正論〜。

 

「切符なら明日持ってくるから」

と言っても、父はひたすら切符を探します。

 

話しながらよだれを垂らす父。

 

唾液がたくさん出るのは、薬の副作用かな。

何でも薬のせいにするのもよくないけど、お部屋で話している時も、口の中に唾液がたまりがちに見えたし。

 

 

帰るために乗るエレベーターは、職員さんがいないと使えません。わたしが帰るのを職員さんは待っています。

 

あまりお待たせするのも申し訳ない。

 

「お父さん、また来るからね。またね」

と立ち去ろうとすると、父は言いました。

 

「あんたがいなくなると不安なんだよ」

 

先月、わたしが会いに来れなかったせいかな。

むかしの写真を見せちゃったせいかな。

父は弱気でした。