特養にいる認知症の父に会いに行きました。
父は眠そうに目を閉じているし、
「おれはもう寝るから。あんたもそのへんで寝るといいよ」
などと言い出します。
父に「寝るからもう帰って」と言われつつも、だいぶ父と会話できました。
遠方から来ているわけでもないし、また来ればいいのだから引き上げることにしました。

娘「じゃあ、お父さん。わたし帰るからね」
父「はーい。さよならー」
部屋から出て行こうとすると、
「あっ、ちょっと待って!」
と父に呼び止められました。
立ち止まって父の元に戻ると、
「さよなら以外に別れの言葉はなかったかな」
と言いながら、父は天井を見つめました。
そして、パッと笑顔になって、
「そうだ、『またね』がいい。またね〜」
明るい口調で父は言いました。
うん、またね。
