骨折で入院していた認知症の父が退院したので、特養に会いに行きました。

 

 

 

「おれの家には、いま誰がいるんだったかなあ?」

と父は言います。

 
父は、母のことは忘れてしまったようで全く口にしません。ここ最近の父の口にする「家」は父の生まれ育った家のことなのです。
 
それに合わせて言葉を選びます。
 
「きょうだいがいるんじゃない?」
と言ってみたら、
「ええ?おれにきょうだいなんていたかなあ?」
と首を傾げる父。
 
娘「いないの?」
父「どうだったかなあ。まあ、帰ったら挨拶してみればいいだろう」
娘「『初めまして、お兄さんです』って?」
父「そうそう。アッハッハー」

 

 

そこで、わたしのお手製の父の家系図を取り出しました。父のお世話をしていた頃に、実家から発掘された戸籍謄本をもとにわたしが作ったものです。

 

 

「これが(祖父)さんでしょう」

と指を指しながら言うと、父も名前を指でたどりながら、

「これは◯◯おじさんで、これは××義姉さんだ」

などと口に出していました。

 

父は、祖父の兄弟の名前を熱心に読み上げていました。自分自身のきょうだいの名前には目もくれませんでした。

 

 

父の記憶は、子供の頃まで戻ってるのかな。