認知症の父が特養に入所中です。
父に面会してきた時の話の続きです。
「どうやっておれはここに来たのか思い出せないんだよ。誰かに無理矢理つれてこられた気もするし」
と父は言いました。
どうやってここに来たんだろうと父は何度か言いました。
何年も経った気がする、とも言いました。
「ここは竜宮城なんじゃない?」
わたしは言ってみました。
「助けた亀に連れられて来たんじゃない?」
「おお、そんな話もあったなあ!」
生まれ育った場所は思い出せないのに、浦島太郎の話は記憶を刺激するようです。
「歌があったはずだ。亀が出てくる歌が」
そう!歌があったね。
父は歌うわけではなく、歌詞をそらんじます。
もしもし亀よ 亀さんよ
世界のうちでお前ほど
お父さん、それ「浦島太郎」じゃなくて「ウサギとカメ」だよ。
指摘したいのを堪えて見守りました。
父が何かを思い出して言葉にできるというのは、素晴らしいことです。もっと褒めればよかった。
