第66話/盟友
今回も勇次郎回。1巻いくなこれ…
内容はというと、現総理が勇次郎に会いたがるというものである。女性だ。しかし、トランプがトラムプになるように、名前の変形はない。というか、よく読むと、名前どころかこのひとが誰なのか、なんのひとなのか、まったく説明がない。もちろんわたしたちにはこれが現総理であることは明らかである。つまり、今回のはなしは、現在のわたしたちが読んではじめて備わっている意味が動き始める内容なのである。
その女性はまず実力者である光成を訪う。トラムプには「地雷原を突っ走るに等しい」と止められたが、オーガに会いたいと。理解(わか)り合いますと。光成には地雷原以上にヤバく見える。刃の上を素足でダッシュだ。それを聞いて女性はよけいにやる気になったようだ。
SPを連れて、女性が例のホテル、0000号室へと進む。とはいえ緊張はしているようだ。ドアをノックするまで表情はかたい。それを、これまで多くを解決してきたであろう笑顔で覆う。
約束はしていないのだろう、ノックをするかしないかというタイミングで、おそらく気配を感じた勇次郎がドアをあける。SPもいるのだ、殺気はないが物々しさはある、よくわからない雰囲気で、勇次郎も不思議に思って出てきたのかもしれない。
そして若干感情を見せつつ、勇次郎は「誰だキサマ」という。知らないのかよ、読者が聞きたいよ。で、なんかよくわからないが、うしろのSPをみて「誰だキサマら」と言い直す。最初に目に入ったのは知らない女性で、たんなる疑問だったのが、うしろの、それなりに戦力を備えたSPが目に入り、多少臨戦体勢になってやり直した感じか。
圧倒的存在感と迫力に、勇次郎を前にした女性がよくなるやつ、服が破裂するイメージを女性は感じて悲鳴をあげ、丸くなる。が、もちろんなにも起こっていない。慌ててとりつくろう彼女を、勇次郎は案外優しく「ン…」とか言いながら応じるのだった。
つづく
なんかよくわからない回だったが…。「刃牙らへん」ということで、主人公以外の日常を描こうとする流れで勇次郎がいまトレンドである、そういう状況であるとしたら、まあこんなもんなんだろう。よくわからないのは、誰の日常を切り取ってもそうで、勇次郎ではそれが巨大イノシシ退治や総理との面会なのだと、そういうことだろう。日常とは断片的になればなるほどわかりにくくなるものだ。
アメリカ大統領は勇次郎と友好条約を結ばなければいけないので、かわるたびに必ず宣誓がある。しかし総理はどうだろう。どういう関係性になるのか。国籍とかあるのかわからないが、勇次郎が日本を拠点に活動していることはまちがいない。友好条約は、ある意味勇次郎とアメリカが互いに脅威だからこそ意味がある。勇次郎はいちおう日本人と言ってよいだろうし、制度上の障害として勇次郎が扱われることはあっても、敵対するということは考えにくい。それに、総理襲撃事件もかつてあった。勇次郎的には「日本」は子分みたいなものなのかもしれない。
女性はおそらくG7でトラムプに会い、勇次郎のはなしになったのだろう。日本の要人でも意外と勇次郎を知らないひとがいるというのはたまに描かれてきたことだ。理解できないものがあることが認められない彼女は、オーガも我がものにしようとしたのだろう。
国内の他の政治家から聞いたのではなくトラムプから初めて聞かされたのだとしたら、それもまた腹の立つ状況だろう。男社会で、男どうしがじぶんに隠し事をしていると感じたにちがいない。男だったら知っていたはずの重要事項を、総理にまでなっても自分は知らされていない、と。しかもそれを他国のリーダーであるアメリカの大統領に知らされたとなれば、他ならぬじぶんが、その厄介な男を丸め込んでやると意気込むのはごく自然な流れかもしれない。
また、現在の国内の排外主義的流れを考えると、遠回しではあるが、ありえる言動にもおもえる。「理解(わか)り合う」という表現だ。しかしほんらいは、オーガを、というか他者を「理解」する必要はない。理解するにしくはないが、前提ではない。理解できなくても、ただそこにそれが存在していることを知る、それが多様性社会である。これを「理解」しようとすることは、ポジティブな反面、理解できないものはどうするのかという難問も呼び込むのである。
だが勇次郎は、すべてをランマーのように平準化する「誰だキサマ」のひとことで、ややこしい政治的野心や駆け引きを粉砕する。ここでは彼女はその暴力を前に「女性」と化したが、これは彼女固有の反応ではない。勇次郎の前ではすべての生物が「勇次郎以外」になるというはなしだ。
だが、この様子だと、この女性には優しくふるまいそうな感じはある。このフロアにくるものは関係者か要人だけだ。それが、知らない女性だった。最初の「誰だキサマ」は、たぶん言葉のままの疑問だったのだろう。ふつうの者がここに来るわけはないが、これは誰だ?みたいなことなのだろう。
管理人ほしいものリスト↓
https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/1TR1AJMVHZPJY?ref_=wl_share
note(有料記事)↓
お仕事の連絡はこちらまで↓



