第136審/三つの裁判②
出雲につかまり、山奥で詰められる百井と求馬。目の前には大穴。おそらく壬生、菅原を埋めるために用意されたあれと思われる。
井出と曽我部が嵐山に捕まったわけだが、それはどう考えても内部からの告発がなければ起こらなかったことなので、出雲は百井を疑っている。百井の立場からすれば、ヤクザに吸われそうになっていたわけだから、ありえるはなしだ。
だが今回は最初から百井の仕事内容についての詰問に変わっている。いつだか、なんでキレてんだかよくわからなかった出雲のあの怒りだ。いま出雲は京極に変わって百井の面倒をみているわけだが、京極に隠れてけっこう手広く稼いでたんだろと。申告漏れがあるんじゃないかというはなしだ。
百井はこれまでのらの名前は出さず、ただ仕入れてさばくディーラーとしてヤクザと関わってきたのだろう。出さないようにしていたというより必要がなかった感じだろうか。曽我部も最近までのらの存在は知らなかった。しかし、聞いているよりずっと稼いでいるらしいとなったらはなしは別で、それを盗聴で知った出雲は怒っていると、こんなところか。
いちおう、百井は仕切っている人間は知らないという。出雲は求馬にも尋ねるが、彼はアレなので、あんまり期待はしてないだろう。げんになにも知らないし。とりあえず大麻や栽培用具を盗んだりはしていない。
吐かせるために尋問してるとおもうか?と、出雲が実にヤクザらしいエクリチュールで続ける。こたえを知っていて確かめてるだけかもしれないぞと。だったら早めに吐いて心証をよくしたほうが賢くないかというはなしだ。素直で正直な人間が好きだとも。
出雲はふたりを対決させるつもりだ。ひとりは生還して海外へ、もうひとりは穴のなか。どっちが生きる価値あるか対決だ。先行百井。求馬が穴の前に立ち、背中を押そうとする百井に命乞いをしろと。アレなのかふざけてるのか、求馬は「命鯉」をからだで表現する。真顔でそれをみている出雲がじわじわくる。
迷いながらも百井の手が伸びる。そこで求馬が謎のラップだかうただかをうたい始める。北海道のニセコで外国人相手にMDMAを法外な値段で売りつけたときのボースティングだ。謎すぎて空気が固まってるっぽいが、おかげで時間が過ぎ選手交代。求馬やるな。
求馬のターン。ふたりとも半べそである。百井はたぶん求馬を信用していないので、いまにも背中を押されそうに感じているにちがいない、あっさりのらの名前を出してしまう。また、のらが2億稼いだことや、運営権を5000万で買う予定だったことも。仮想通貨で2000万程度あったらしいが、百井はそもそも5000万もなかったらしい。
出雲にあおられ、求馬が押してしまいそう。ここで百井もまたある種のリリックをかます。これは出雲をジャッジにしたフリースタイルバトルだ。もううんざりだと。金ばっかりの連中に騙され、裏切られ、あげくじぶんも金しかみてない人間になってしまった。お互い押さなければやり直せる、生き残ろう。もとより幼馴染の百井を求馬は押せなかった。ちなみに、「押さない」と「幼い」は同音異議である。
選手交代、気持ちを切り替え、やり直すという求馬の背中を、もう幼くはない百井が押す。求馬はバカで、生きる価値があるのは自分だと、冷えた表情で百井はいう。求馬は泣き叫ぶが、終わりではない。百井の後頭部に伸びる出雲の銃。あたまを撃ち抜かれて死んだ百井が求馬の前に落下するのだった。
勾留中の曽我部を九条が訪れている。のらの名前を出せと指示して以来かな。いつも最悪な時に来てもらってすみませんという曽我部に、弁護士は最悪な時にしか呼ばれないから大丈夫と、九条はあっさりいうのだった。
つづく
百井がのらの名前を出してしまった…が、これは、曽我部が警察でくちにして逮捕まで至っていることだし、どうせすぐわかってしまったろう。では出雲はなにを聞こうとしていたのか。だいたい、チンコロの件はいいのか。
出雲がいま知りたいことは3つだ。そもそも、逮捕の前に井出が探しに行った大麻はどこにいったか。嵐山にちくったのは誰なのか。そして百井の仕事の全貌である。大麻の行方は、些細なことといえばそうだが、とりあえず曽我部のいうような真相ではないし、求馬が嘘をついているようにも出雲は感じなかったろう。それも、そののらを探せば済むはなしだ。しかし、こんな情報だけでのらが探し出せるわけもなく、肝心の百井を出雲はみずから殺してしまった。とすると、やはり出雲はすでにのら逮捕を知っていて、彼女がボスだとあたりをつけていたのだろう。
とすると問題はチンコロしたのが誰かという問題だけになるが、今回出雲はそれを追及しているようにはみえない。このあたりが、詰問、尋問などとは言っても、ヤクザがいちおうは真実を求める警察とは異なるぶぶんなんだろう。伏見組には宇治という信用ならない男もいる。誰がチンコロをしたのであれ、いま井出が逮捕されて、百井との件が警察にバレてしまった事実にちがいはない。これは覆らず、復元できない。とすれば、なにはともあれ誰かが死なねばならない。百井が犯人かどうかは、あまり重要ではない。ともかく出雲は、「裏切り者」に制裁を加えなければならない、もっと厳密にいえば、そういう身振りをとらなければならない。かくして生きる価値対決が始まった。あれは、見たまま、たわむれだったのではないか。どっちでもいいのである。大麻の行方はわからないがさらに上がいるならいま考えてもしかたない、そしてその黒幕というのがいま捕まっている野村のらだということの答え合わせはできた。あとは、出雲が「裏切り者」だと判断したものを殺したという見せしめ的事実だけが必要なのである。
じゃあどっちを生かすかということで、出雲が素直で正直な人間が好きだと言っていたのは、たぶん言葉のままなのである。出雲が宇治とそりが合わないのは、宇治がさかしらでしたたかだからだ。要するに、正直者ではないのだ。出雲だってたいがいだが、宇治のようなインテリ感はない。だから、ほんらいヤクザ的資質ともいえる百井の冷徹さを、今回はむしろ制裁の決め手としたのである。それに、いま彼は仮にも「裏切り者は誰か」のジャッジをしているのであるから、目の前で幼馴染を裏切る男を殺すことには理があるのである。
ただ、論理的整合性以前に彼はヤクザだから、求馬が助かるとも限らない。生きてても曽我部をいじめるやつだし、生かすならしっかり教育してほしいが(出雲は、刑務所で曽我部を助ける京極派なわけだから、教育は期待していい)、まあ、わかんないよね。
チンコロした犯人だが、宇治や久我ということになるのかな。そもそも百井の件は出雲と宇治ではなしがついたうえで始まろうとしていたもので、つまり出雲も宇治がこれを知っていることを知っている。だがじかに宇治を詰めることは証拠もなしでは難しい。百井殺害はなにより宇治への牽制になっているはずである。
管理人ほしいものリスト↓
https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/1TR1AJMVHZPJY?ref_=wl_share
note(有料記事)↓
お仕事の連絡はこちらまで↓


