第126審/日常の犯罪⑨
久々の菅原だ。韓国からカンボジア、タイに流れてきた菅原を壬生が訪ねているのだ。
菅原はプールに入ってご機嫌だが、壬生は誘われても入らない。目の前で水死したやつを見てから…とか言ってるが、めんどくさいだけだろう。
菅原はタイをかなり気に入っており、壬生にも勧めている。日本にいるよりははるかに安全だし、新しいビジネスもはじめたらしい。
壬生は、宇治から聞いたはなしとして、出雲が必死で自分たちを探していると語る。足がつかないように気をつけろと。壬生はそれを言いにきたわけでもないだろうか。
菅原は肝に銘じるという。
そのあとタコスを食べて、菅原は大麻を吸おうと壬生を誘う。壬生は、なぜか、なにを肝に銘じたのかと皮肉っぽくいう。菅原はいまを楽しめと。タイでは一時医療用の大麻が解禁されたが、娯楽目的の使用が増え、今年再規制され、医師の処方箋が必要になったそうだ。観光客が娯楽目的で大麻を買うことはもともと認められていないので、捕まったりしたら身元が割れて出雲に見つかりそう。でも、壬生の皮肉はそういうことでもないのかも。いかにもタイを満喫していて緊張感を欠く感じが引っかかったのだろう。
その宇治と出雲は麻雀をしている。宇治は、いやでも出雲と関わらなきゃいけないからたいへんだなあ。すごいストレス感じてそう。
そこで、出雲は百井から手を引くよういう。宇治は黙るが、地獄耳なんだわという軽いノリではなしが進む。出雲はなんかいつかのとき百井について謎の怒りを見せていたから、どうなるか少し心配だったが、宇治はあっさり手を引くとして、もめないようだ。
それから出雲は、「穴」を買ってくれないかと持ち出す。山奥に穴を掘る業者からふたつ買ったらしいのだが、そんな穴の位置を知っている業者が存在していていいのか、ということで、業者云々はジョークかもしれない。もちろん、壬生と菅原を生き埋めにするためのものだ。それを聞いて宇治は「追うのをやめたんですか?」という返しだ。埋めたいなら追わなければならないわけだが、それを宇治に買わせる、つまり宇治にあげるというから、そう聞いたのだろう。それと、ここにはヤクザ的文法みたいなものを通じてしかわからないものもあるっぽい。とにかくなにか大きな動きがあったことを宇治は理解し、探ったのである。大きな動きとは、タイで菅原が見つかったことなのだった。
だから宇治にそのひとつを200万で買って欲しいということだが、なぜ無関係(ということになっている)な宇治が買わなければならないのか、ここにも出雲からの探りがある。宇治はたんに高すぎると言って退席してしまうが、なぜ自分が?とか言ってもよかったかも。いや、でもここで反論して解答の用意がない質問とかが始まってもめんどくさいかな…。表向き壬生の幼馴染であることにはちがいはないし。ヤクザどうしの会話はコミュニケーションとして高度すぎる。
さて、キャラ弁をのらと中川さんに頼まれた曽我部はもうそれを作ったらしい。ふつうに出歩いてるのは、短期のあの仕事が終わったのか、のらが手配して外出してるのか。
曽我部はどちらにもスプランキーのお弁当を作ったみたいだ。最近ゲーセンとかヴィレヴァンで見るやつだ。流行り始めくらいのときにハギーワギーが出てきたこともあるし、こういう、家にいたんではわからない流行りを見つけるの、真鍋先生はすごいよな。
のらの娘は大喜びで初めて「ぴっかり」したらしい。意味がわからずググッたよ…。きれいに完食することを「ぴっかりん」というらしい。勉強になりました。
中川さんのところでも子どもは喜んでくれたみたいだが、中川さんじしんはひどい顔で曽我部に金を貸してくれないかという。太客がついて稼げるからというはなしで曽我部がかわりに弁当を作ったわけだが、中川さんの昔の男が、ヤバいひとに金を借りてしまって頼ってきたということだ。いまも好きなの?と曽我部は聞く。やっぱり少しは気になるか。でもそうではない。嫌いだ。風俗で働いていることを生活保護のひとにばらすぞと脅されたのだ。
以前から中川さんのお金で遊び回っていた人間だ。なんとか逃げたのに頭虫、ユスリカみたいにわいてくる。いまの平穏を失いたくない。だから助けてくれと、中川さんはいうのである。
またのらとセックスしてたらしい百井のもとに出雲から連絡。夜顔を貸せと。文の感じからしても嫌な予感しかしない。でもこのはなしは、ヤクザを警戒しているのらにも早めに伝わったほうがいいかもしれない。
別の日、九条の事務所を誰かが訪れる。烏丸が、九条なら屋上にいると伝える。気安い雰囲気だ。そして九条は、そろそろ来ると思っていたと、曽我部を迎えるのだった。
つづく
曽我部は、薬師前ではなく九条のとこに行くのだな…
今回は盛りだくさんだったな。ストーリー追うだけでけっこう長くなってしまった。
出雲が金づるとして百井に目をつけているのはいいとして、なぜ宇治にこういう態度なのかがよくわからない。すでに出雲は京極がケツモチをしていたということで百井と対面していて、面倒をみると宣言しており、それがゆえ、別ルートで百井を知った宇治を牽制している状況だ。としたら、宇治はあとからきているわけだから、こういうはなしになるのも自然なのかな。でもそれならそれで、あいつは京極のかわりにじぶんが面倒みてるから…みたいなはなしになりそうで、いまいち百井の奪い合いの文脈がわからない。15巻出たら読み直さないと。
このなかで、百井の上司にあたるのらの存在だけは隠れている。すごい上物のハッパで、なんというか、よくできたシステムという感じがするから、出雲や宇治は百井よりさらにうえの存在に勘づいてはいるだろう。それ以上に、ここで百井らはヤクザ間のいやがらせ的攻防のアイテムにもなっている。宇治が百井一派をねらうのは、出雲がいうように、仮想通貨で稼いでいる宇治のことであり、金が目的なのではない。出雲がからんでいるからこそなのだ。出雲としてもそういう気持ちはあり、だからこそ、宇治が暗躍しているのを知ってわざとなんでもないことのように、堂々と正面から「おれのだけど文句ある?」とするのかもしれない。
この「おれの」のなかに、のらは入りたくない。のらもタイに行くって言ってたかな、ノウハウは完成したので、そうなったら海外に逃げるみたいなことを言っていた。しかし出雲らは組織がまるごとほしい。となると、のらは百井を切る以外ないだろう。百井がのらから受け取ったノウハウで現行の売り上げを維持するなら、出雲的にも文句はないというか、なにも起こってないからだ。
ただ、成功してなにものかになろうとする百井だって、ヤクザはいやだろう。誰だってヤクザは嫌だろうが、ヤクザ的攻防をみてもわかるように、この駆け引きに使われるコマが百井である必要はないのである。コマであることを仮に許容したとしても、じぶんである必然性がないポジションは本意ではないだろう。のらにもそういうところがあり、彼らは「じぶんである必然性」を求めて居場所を選ぶのである。たとえば百井がのら以上の商才やセンスを発揮して、出雲もたまげるほどの売り上げを出すなら、それが百井であるべき理由は生じるだろう。しかしそうではないのだ。
曽我部は九条のところになにをしにきたのか。流れからすると中川さんの元カレのことなのかな。まだわからないが、もしかするとここからの流れは、曽我部が他人のためにちからを尽くす展開になるかもしれない。いま彼自身もたいへんな状況で、げんにときどき薬師前に無言電話をかけたりしてしまっているわけだが、今回最後のコマの曽我部からは決意が感じられ、いつもとちがうものがみえる。たんに苦しいからなんとかしたくてというふうではないのだ。それならやはり薬師前を訪ねるのではないか。
この兆しは、前回のキャラ弁のくだりからあったわけである。子どもという公共財への奉仕だ。のらや中川さんに子分のように使われながらひどさは感じられず、それどころかおかしみが見えたのは、キャラ弁作りが社会人的ふるまいの模型だったからだ。こうしたことを通じて、おとなは社会の成員になる。曽我部がじしんの弱さを脱するためにすべきことは、たんに強くなることだけなのではない。ほかの弱きものにおもいをいたすことができるようになれば、社会全体の「弱さ」はそのぶん緩和される。薬師前はまさにその最前線にいるわけだが、曽我部がまず九条のもとにきたのは、九条がこうしたことにもドライに戦略的に携わるからだろう。だいたい、中川さんの件だとすると、カタギではなさそうな人間も関わっており、薬師前の管轄ではなさそうだ。曽我部じしん、まだ久馬のようなものに搾取される立場ではあるが、以前よりたくましくはなっている。そこで生じたわずかな余裕が、彼を九条のもとに行かせたのだろう。
↓九条の大罪 15巻 8月29日発売
管理人ほしいものリスト。執筆に活かします↓
https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/1TR1AJMVHZPJY?ref_=wl_share
note(有料記事)↓
お仕事の連絡はこちらまで↓


