『刑事法の要点』前田雅英 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

■『刑事法の要点』前田雅英 東京法令出版

 

 

 

 

 

 

 

 

「現在の刑事法が、どのような考えのもとに成り立っているのか、社会情勢の変遷や判例の考え方の変化を踏まえて解説。 ○刑事法理論の全体像が概観できる! 刑事法の考え方の根本を知ることで、刑法・刑事訴訟法の理解が進みます。 ○最新の重要判例まで、関連判例を多数収録! 判例の考え方を知ることで、実務上の解釈がよくわかります。 ○理解が深まる図やコラムが満載! ひと目で要点が分かる図や、基礎から+αの知識まで身につくコラムが充実しています」Amazon商品説明より

 

 

 

(↑アマゾン、タイトルがまちがってる)

 

東京法令出版、前田雅英『刑事法の要点』を読んだ。

100頁ちょっとの、警察官をはじめとした、刑法、刑事訴訟法に実務で接する可能性のあるひとを読者に想定したハンドブック的な一冊で、書評でもないが、いちおう読んだという備忘録として残しておく。

 

ひとことでいえば、直線的な一冊になっている。法律は、個々の条文や判例、解釈などが複雑にからみあい、そこへ訴訟法などの手続法までぶつかってきて、ようやく効果として実を結ぶことになる、取扱者にきわめてレベルの高い専門家であることを要求する領域であるが、まさしく警察官のように、弁護士レベルで熟知している余裕はない職務も存在するわけである。警察官は警察官で、訓練課程や経験のうちにポイントをおさえて了解していくものとおもうが、同様に法律にかかわりながらも、それは司法試験を受けるようなものとはやはり異なるのだ。こういうところで、全体を俯瞰的に一望しつつ、というより一望できるようになるために、いっきに読めるよう、事物と事物が直線的に連続しているような書かれ方をされているのである。とても短く、判例などへの言及も最小限なので、ぼくのような素人でもすいすい読める(個人的には判例が豊富なほうがわかりやすいのだが)。ただ、ぼくのもっているものは平成29年刊行のもので、法律は日々成長する生き物のように変化していくので、ぼちぼち新版が必要な感じもするが。

 

ぼくにはこの本の新しい価値を見出すような能力はないので、本記事は全体で雑談程度のものになるが、通して感じたのは「社会通念上」とか「国民の常識」とかいった、ある種ふわふわした不定形の基準が要所でけっこう必要になってくるのだなあという感想だった。これは日本に限らないのかな、犯罪を裁く刑法の考えかたは「罪刑法定主義」ということになる。法律で犯罪とされていることが犯罪となる、ということだ。だとするなら、ある事件において、適当な法律を探してきて、無造作にあてはめれば、自動的に判決や刑罰も決まりそうにおもわれるが、じっさいにはもちろんそんなことはない。そういうところの解釈に、「社会通念上」とか「国民の常識」とかいうものが挿入されることになるのである。こういう本を読んでいると、事件を通じて法解釈が更新されたり、新しい法律が制定されたりしていくので、なにかこう、「事件」が法を解釈するための素材のようにおもわれてくるのだが(特にひまつぶしに判例を斜め読みしているとそういう気持ちになる)、むろんそうではない。法の前に人間や社会があって、法は、ある意味世界を言葉で埋め尽くすような無謀な試みなのである。イメージとしては、数学の極限、y=1/xのxに無限大を放り込んだときのようなものだ。このとき、数学的にはこれはy=0になる。だが、原点からはるかはなれた曲線の細部をよく観察してみると、0ではないことがわかる。x軸に触れてはいないのである。その「細部をよく観察」させる契機が、じっさいの事件だ。このとき、微調整として「社会通念上」という、法律家や裁判官の鍛え上げられた法律勘や倫理観、要するに知性が試され、法律は微調整を加えられる。そしてまた、とりあえずはそれを「0」とみなすような日常が戻る。ぼくに感じられたものはそんなイメージである。そうした微調整のくりかえしが、法と社会を限りなく一致させた形状に変えていくのだ。

 

前半が刑法、後半が刑事訴訟法になっており、特にぼくでは刑事訴訟法のぶぶんがかなり勉強になった。どうやって捜査が行われ、なにが証拠として認められるのか、裁判はどう進むのかとか、ぜんぜん知らないまま大人になってしまったのでね・・・。まあ、正直にいうとこれを読んでも紙の字で読んでみたという感覚は除けず、裁判の傍聴とかやってみないと身体的な理解は訪れないかもしれないな、という気持ちもあるが、それはまた別のはなしである。

 

 

 

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