Dev Large氏死去 | すっぴんマスター

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BUDDHA BRAND Dev Large(デブラージ)さんの訃報。ネットでは悲しみの声が広がる  NAVERまとめより




ぜんぜん知らなかった。すごく動揺してしまった。


じっさいに音楽をやっているかたと比べたらたいしたことはないかもしれないが、僕もデヴラージにははかりしれない影響を受けた。ラップをつくったりトラックをつくったりするわけではない。にもかかわらず、「影響を受けた」としかいいようがないような、こちらの全神経を賦活して高揚させ、日常生活にまでその影響が(微量ではあっても)及ぶような、そういう音楽家だった。

僕はラップ音楽にまずm-floから入った。当時はcome againという曲がはやっていたころで、それが収録されたEXPO EXPOというアルバムを買ったのだが、それが人生で最初のラップ、というよりは、それまではジャズやピアノ音楽しか聴いてこなかったので、宝塚以外では初めて聴くうたのはいった音楽だった。僕にはB-BOYの友人はいなかったが、友達にそういう男がいるという友人はいて、彼はそれなりにくわしく、僕は彼にそのアルバムを聴かせたのである。そして、そのアルバム収録の、ブッダブランドのデヴラージとニップス参加のディスパッチという曲を聴いて、彼は驚愕したのである。こういう音楽に彼らのような「ホンモノ」がフィーチャーされるというのは、けっこう事件だぞと。


それから、ジブラやニトロを中心にいろいろ聴きあさって日本語ラップにくわしくなっていくうちに、彼のいっていたこともだんだんわかるようになってきた。タイミングは忘れたが、ブッダブランドの二枚組ベスト盤もかなりはやい段階で手に入れて、その音にすっかり魅了されてしまった。人間発電所なんて冗談抜きで何百回何千回聴いたことか、もうじぶんでもわからない。僕のガラケーにはなぜか容量を増すカードがついていなくて、短い音楽もほんの数曲しか保存できないのだが、いまでもそのうちのひとつは人間発電所で、毎朝それに起こされている。

だいたい日本語に英語を混ぜるスタイルというのは批判を呼ぶもので、好きなMCに関しても、それがだれかからディスられても、その相手に反感を抱くというよりは「まあわからないでもない」とおもってしまうことのほうが多かったりもする。しかしデヴラージにおいてはそんなことはまったくなかった。あんなふうに英語と日本語が滑らかに連結して心地よいフローを生むようなラップは、あとにもさきにもこのひと以上のものはないといってもいいのではないか。それから、ずっと、いまでも謎なのは、ライミングである。いわゆる「硬い」押韻ではなく、母音で数えればほとんどひとつかふたつくらいしか踏んでないようなこともかなりあるのに、なにゆえあんなふうに韻を踏んでいるように聞こえるのか。ずっと昔に、母音ではなく子音の使い方でこのラップを分析しているサイトを見た記憶があるが、むずかしくてよくわからなかった。

ともかく、硬い韻というのは、ここからここまでが踏んでいる、というのが歌詞を見ればわかるものになっている。けれども、デヴラージはそうではなかった。にもかかわらず、あのサウンド。いったいそこにどんなテクニックが隠されていたのか、いまでもわからないのだ。


その後発売されたデヴラージのソロアルバムも、たぶんレコードだったらすりきれるくらいくりかえし聴いた。D.Lはラッパーでもあると同時にたぐいまれなトラックメイカーでもあった。しかしこんな説明はいかにもまぬけである。たぐいまれなトラックメイカーだなんて、そんな凡庸な説明ではとても足りない。あんな音楽をつくれるひとは世界中探してもほかにひとりもいない。下の「Music」なんてPVも含めてどのくらい聴いただろう。ニトロの初期の曲と合わせて、精神的にきついときなどいつも支えてくれた音楽だった。




https://www.youtube.com/watch?v=PZVETpNA7Qs




トーキョートライブがアニメ化されたとき、MUROを中心に凝ったサウンドトラックが製作されたが、それとはべつにオープニングをブッダが、エンディングをスチャダラパーが担当して、これも刷り込むように聴きまくっていた。基本的にヒップホップのトラックというのはループ(くりかえし)でできているので、そこから中毒性が生じてくるわけだが、そういうことを知識としてではなく体感で、耳で教えてくれたのもこのひとだった。好きだし、音楽に対する姿勢もほんとうに尊敬しています。安らかにお眠りください。




https://www.youtube.com/watch?v=1rwIzrDEPB8




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