今週の闇金ウシジマくん/第361話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第361話/ヤクザくん⑧






一週休載、巻頭カラーで再開。扉絵は向き合う丑嶋と滑皮。そのあいだあたり、少し離れた位置からふたりを見ているのが戌亥。そういえばこのふたりのあいだにはこの男がいたのだった。忘れていたけど、もし丑嶋と滑皮が衝突することになったら、戌亥は最重要人物ではないか。


さて、どういう展開になってるだったけ。獏木が丑嶋を探っているのが井森・家守にばれて、シメられているところだった。そこにハブが現れて、実は獏木がハブの命令で動いていたことが判明、井森たちがおもっていたようにハブは丑嶋にビビっていたわけではなく、そうして機会をうかがっていたのであり、怒りは以前よりむしろ増していたのだ。獏木を通して知り合ったのか、マサルまで手中にしているハブは、彼からカウカウ全員の写真と住所を手に入れ、皆殺し宣言をするのであった。ハブのそのことばにマサルはいまさら驚いている。よほど、ヤクザ・ハブのことばに迫力があったのだろう。若い不良が「ぶっ殺す」などとくちにするのとはわけがちがうということを悟ったようだ。しかしそれはちょっといまさらでしょう。どうもマサルは、カウカウで学んできたはずのことを対ヤクザ、あるいは対肉蝮において使いきれていない感じがする。これまではけっきょくカウカウの庇護下で、じぶんでは認めたくないかもしれないが背後にいる丑嶋の威を無意識に借りることで機敏に活動してきたのかもしれない。回を経るごとに感じられたキレものっぽさが今回はいっさいないのだ。

そして井森たちのじぶんへの不信感もハブは見抜いているようだった。井森たちが獏木をシメるのにつかっていたスリングショットを拾い、ハブは井森・家守の前歯を砕く。ふたりのリアクションには若干の差がある。どちらも声をあげてはいるが、家守は絶叫するいっぽうで井森はうめく感じ。また井森はスリングショットを向けられ、じっさいに歯を砕かれながら、最後まで漫画表現の汗をかいていないが、家守はハブに名前を呼ばれただけで汗をかいている。キレものっぽいし、敵にまわしたら井森のほうがこわいかもしれない。

ふたりが心中どうおもっているか不明だが、ハブは組長だし、現実におそろしい男である。ふたりは黙ってハブの前に正座する。ハブはどういうつもりか、たんにじぶんがいないあいだに稼いでいたそうじゃないかという嫌味をいいたいだけか、財布のなかの金を全部貸してくれという。そしてその金で奢ってやると。対等の立場なら、「なめている」というところである。加えて、そんな歯じゃ食いにいけないかと、じぶんで歯を砕いておきながらいう。ふたりは飯を食いにいくと応える。要するにこれは、ハブからの上下関係の確認だろう。じぶんたちは対等ではなく、ヤクザの上下関係にしたがうものである。たとえば行為としては「なめている」ものであっても、上下関係においてそれはたんに命令とか服従とかいう関係性に翻訳される。そして飯に誘うことにより、彼らがそれに同意する気があるかどうかを確認しているのである。「これでわかったな」というところだ。この場はとりあえずそれでおさまったが、まさにそういう強権的なところにふたりは憤っていたわけだから、特に井森なんかは本音でどうおもっているかあやしいところだ。けどまあ、「組長は丑嶋にビビってる」という線はこれでなくなったから、案外すっきりもとの弟分に戻るかもしれないけど。


たほう、何週か前に描写されたマージャンをする「組長」だ。背後には滑皮が立っている。この人物は猪背総長というらしい。猪背組のてっぺんに位置する人物だろうか。現組長は鳩山大成という眉毛の濃い男で、ヤンキーくんで滑皮がベントレーをプレゼントしていた人物である。総長という位置がよくわからないが、どうも配下にいくつかの組を抱えている、組長よりもさらにうえの立場ということのようだから、要するにこのひとがまずじぶんの組として猪背組を立ち上げ、一家内でさらに昇進するにあたり鳩山が猪背組の二代目になったということなのだろう。

前に登場したときも猪背は熊倉を呼んでいたが、麻雀仲間なのだろうか。その熊倉なのだが、なんと生きているらしい。となると、ヤクザくん編冒頭の中年男性の死体は彼ではないことになる。ではあれはなんなのか、そして滑皮が氷にして処分した死体は誰だったのか?


熊倉は愛人のところで寝込んでいたらしいが、総長と連絡がとれない理由を彼は頭蓋骨陥没の後遺症で意識を失っていたと説明しているらしい。しかもそれはよくつかう言い訳だそうだ。後の描写をみるとそうであっても不思議はなさそうだが、とにかく鼓舞羅襲撃でそんな重傷を負ったという時点で、熊倉の評価はかなり落ちてるっぽい。素人にそんなことされるやつは一家一門の恥さらし、破門だと、重い調子ではないが、総長はいう。しかしそうはいってもあれは通り魔に近いものだし、その場で滑皮たちが射殺したことで処分は済んでいる。それで納得してもらえないとなると、熊倉はあのとき無傷でいなければならなかったことになる。鼓舞羅は熊倉を狙っていたわけではないし、ということは熊倉だって襲われるとは考えてもいなかった。周囲にはヤクザものが大勢おり、そんなリラックスしたところでいきなり暗闇にされて、そこから無傷で生還となると、なにか古武術的な格闘技の、それも達人レベルの技術が要求されるだろう。熊倉にはヤクザ生命に関わる不幸な事件だったようだ。

その熊倉は鳩山組長の家にきている。総長とはなしているじてんで向かっているということだったが、なぜかすでにこの場に滑皮がいる。手術をしたせいか、髪の毛はぜんぶそり落とされており、なにかこう、サポーター的なものをあたまにつけている。なぜか左手で耳をずっとさわっている。いまでも痛むのだろうか。

鳩山の自宅はさすがにヤクザの組長らしく、お屋敷という感じで、方々に監視カメラが備えられている。高そうな甲冑や壺なんかが雑然と置かれているが、生活感を滲ませる日用品と渾然一体となっており、所有者の審美眼より唯物的な価値観を感じさせるような内装である。

そんな鳩山はなにか熊倉に怒っている。相変わらずすごい太眉だ。やっと動けるようになった熊倉を、鼓舞羅の件で責めようというのだろうか。あれは事故みたいなものでした・・・といっても通じないのだろうな。


そしてすべての出来事に深く関わっている丑嶋。ウサギに囲まれながら、3DS的なもので「業界ウィッス 本番」という、妖怪ウォッチ的なゲームをやっている。ずいぶんご機嫌というか、久々に丑嶋の鼻歌だ。むかし柄崎とモンハン的なゲームをやっている描写があったが、自宅ではこんなかわいいゲームもやるのか。


そこに戌亥からご飯を食べに行こうと電話。戌亥は滑皮とも通じている。情報屋なので、あるいはたんに仕事のつきあいということかもしれないが、丑嶋はどことなくそれに気づいてそうな感じがある。きちんと仕事をしてくれるならそれでも別にかまわないというところかもしれないが、背後でなにが動いているかはわからない。獏木を撃退したタクティカルペンとライトをポケットに忍ばせ、歌舞伎町でふたりは落ち合う。そのふたりを、獏木と、おそらく最上がつけているのだった。





つづく。





登場するごとに獏木がボロボロになっていてなんかかわいそう。

これで戌亥の顔は獏木に割れた。丑嶋が社員以外と対等につきあうというのは珍しいことである。獏木は(ということはハブは)すぐに戌亥にも目をつけるだろう。しかしそこまで動いてしまうと、今度は戌亥のほうでかぎつけてしまう可能性もある。この件に戌亥がからむことがハブにとってよいかわるいかは、まだわからない。

それにしても、登場するヤクザがほとんど全員丑嶋に怪我させられていて、これでは丑嶋が狙われてもしかたないという気になってくる。ハブと獏木は丑嶋に直接殴られ、熊倉も間接的に丑嶋と柄崎のチームプレイで鼓舞羅によってボコボコにされることになった。おもえば滑皮も丑嶋の件で熊倉にシメられたことがあったな。むしろいままでよく生きてこれたなという感じがする。

鳩山は熊倉になにをいうつもりだろう。井森でなくても、あの鼓舞羅襲撃の状況がなにか奇妙だと感じるのは自然なことである。その場で射殺してしまったのは少し浅はかだったかもしれない。もしあの場で捕獲され、拷問されていたら、鼓舞羅はすべての事情を話していたかもしれない。丑嶋の電話が鳴る予定だった、じぶんはそれを狙う計画だったと。そうなると、非通知とはいえ、柄崎の立場はかなり危うくなる。

いずれにしても熊倉だっていきなり見知らぬ男から半殺しにされて、死んだからいいかとはなれない。あれはなんだったのかと考えているはずである。どうも丑嶋があやしいとなるのは時間の問題だろう。しかしそうなったらマジでどうする社長。これまでの手でいけば、ハブと滑皮を潰しあいさせる方法に出るはずである。しかも、借りをつくらないために、滑皮にはなるべく「ケツモチとして」ではなく「いちヤクザとして」出陣してもらいたいはずである。しかしもし鼓舞羅の件がばれたらどうなるか?

ひとつ考えられるのは、滑皮にとっても熊倉は目の上のたんこぶだということである。野心的な滑皮の性格からして、しょっちゅう殴られてるけどヤクザとして熊倉のことは尊敬してる、ということはなさそうだ。それどころか、どうにかして排除しようとすら考えているかも。だから、もしこのことが発覚したら、弱みを握るとともに、滑皮は丑嶋に共謀をもちかけるかもしれない。


マサルはハブの「皆殺し」に反応していた。マサルでは、せいぜい全員ボコボコにするという程度の認識だったのかもしれない。しかしさすがに丑嶋は無事ではすまないだろうということは理解していたはずである。となると、丑嶋だけを殺し、あとの4人は重傷を負ったとしても生きていることになってしまう。果たしてヤクザはそんな状況を許すだろうか。生きている4人全員が、社長殺しはハブがやったにちがいないと確信するような状況で、全員を生かしておくだろうか。

マサルの心理は今回特によくわからない。顕著なものだと肉蝮の登用である。じっさいに接触してみて、マサルじしん「こんなのと組むのは無理だ」としていたが、そんなことは接触してみなくてもわかる。コミュニケーション不可能、制御不可能で抜け目のないケダモノ、それが肉蝮である。「無理だ」と確信したところで、接触してしまった以上、ストーカー気質もある肉蝮からはもう逃れられない。たぶん、普段のマサルならこんなアホなことはしなかったはずだ。ということはつまり、いまのマサルは「普段のマサル」ではないのである。なにが起こったかというと、獏木とつるみ、丑嶋打倒の計画を開始したということもそうなのだが、それをするにあたりヤクザくん冒頭で仁で訣別したことがおそらく構造的には大きい。何度か考察したように、村上仁というのは「愛沢以前」の無垢な加賀勝の表象であった。それが、愛沢にいちど「殺され」、転生することで、いまのマサルは成り立っている。直接的には高田に、そしてそののちの仕事や、仕事のしかた、裏社会での生き方などを通しては丑嶋に、マサルは命を拾ってもらった。その意味で彼らは親であり、「愛沢以後」のマサルの本質にかかわる重要人物なわけである。その丑嶋をマサルは殺そうとする。これは、同時にカウカウで学び、タフに、ワルに生きてきたじぶんを否定する行為にほかならない。だから、「丑嶋を殺す」という行為は、その「殺す」という行為も含めて、その人生を構成する要素すべてを否定するに等しいのである。しかし現実には、マサルが丑嶋を殺すことで否定するのは「愛沢以後」であり、マサルの無意識はおそらく「愛沢以前」を守ろうとするのだ。以前の、二度と帰ってこない、無垢な時代のみずからを保護するために、マサルは「すべて」を否定するにあたって仁をみずからの人生から弾き出したのである。


そうすることでマサルはおそらく「復讐鬼」になることができた。けれどもそれと同時に、マサルが殺そうとしているのが当の殺そうと考える主体であるところの自分自身であるという矛盾が大きく強調されてしまうことになる。もはやそれ以前の原人格はマサルのうちに残っていない。「自己否定リスト」を書き始めるにあたって、あらかじめ保護の対象である原人格の表象「村上仁」を除いてしまったからである。もうマサルのなかには「愛沢以後」の、カウカウに救われた人格しか残っていない。彼が丑嶋に復讐を誓う場面はいくつかあるが、まず母親の件があり、それを踏まえたうえで、ヘコーッしてるときに丑嶋が彼を見捨てたことだろう。現実には高田がそれを救い、その後も丑嶋が面倒をみてきたわけだが、そのときにマサルはあともどりができなくなった。じっさい、あのホテルの場面でマサルは、白豚や仁に、じぶんはもう裏で生きていくほかないと語っている。つまりこの件で「転生」したことで、マサルの青春時代、無垢な「村上仁」の時代は終わった。だが、このときに「許さない」と語るのはどのマサルだったのだろうか。もちろん、感情的には、転生後の発言であるのだから、「愛沢以後のマサル」のものである。しかし、ではなぜ許さないのか。表層的には、じぶんを畜生のようにあつかい、無価値と断じて見捨てた丑嶋の言動に対してだろう。けれども、そうした感情の足場になっているところは、くりかえし見たように丑嶋や高田が親となることで生まれてきたものである。マサルが「許さない」と考える場面が、危険を乗り越え、愛沢が逃げ腰になりかけてからだというのも示唆的である。マサルは、これからこの生を生きていくにあたって、覚悟として、そのように決心しているのである。しかしもちろん、もしあのヘコーッのときにマサルが死んでいたなら、こうした感情はあらわれてきようもなかった。死ななかったから、救われたから、そのように考えることができるのだ。死んでいたら「許さない」と考える主体は存在しない、しかし生きていてもその言動は「許さない」対象に保護されるかたちで出てきたものである・・・。こう見ると、マサルの「許さない」という感情の足場は「愛沢以前」にあったのではないかとおもえてくる。妙な言い方になるが、マサルは丑嶋に見捨てられたことで転生を果たした。「いまこうして生きているのも丑嶋が見捨てたから」なのである。この矛盾が起こらないのは、感情の足場が外部にあるときだけである。親に対してじぶんを生んだことを許さないと語ることができるのは、現在の苦しい生とはまた異なった、べつの生を想定したときだけだ。マサルのばあいそれは過去の記憶であった。永遠に失われた「以前」の記憶にすがりつつ、結果それを失わせた現在の生を呪うことでそれを持続させる、それがマサルの選択した生き方だったのである。

そうしてみると、マサルは「村上仁」と訣別することで、「許さない」と呪う主体を失ったことになる。「誰が」許さないのかを消失し、ただ「許さない」という述語がひとりあるきをしている状態なのだ。おそらくマサルの不調はそこからきている。肉蝮の採用とハブへの協力は、丑嶋を倒したのちのことを考えて、漁夫の利を得るためにとられた策だと以前推測したが、細かいところがザルなのは、丑嶋を呪う主体が消失してしまったために、動機を持続させることが困難になっているからなのではないか。


それにしても、ただでさえ丑嶋をめぐる多くの人間のおもいが交錯しているなかで、ここにさらに熊倉、戌亥まで参戦してくるとはおもいもよらなかった。滑皮がいるせいで、猪背組も一枚岩ではないというのがまたややこしいところである。このはなし・・・ちゃんとまとまるのか?!






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