今週の闇金ウシジマくん/第341話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第341話/フリーエージェントくん21





連載10周年&映画第2弾公開企画として、今週はロバート秋山竜次へのインタビュー。スマホ向けのドコモのサービス「dビデオ」のみで公開されているスーパータクシーくんで諸星信也を演じているのである。深夜番組でときおり見かけるロバートはほんとにおかしくて、三人すごくあたまがいいんだなという感じが伝わってくるのだけど、とりあえず諸星に関してはビジュアルがそっくりである。芸風についてはくわしく知らないが、とりわけ秋山にかんしては観察力が際立っており、おそらくそれが漫画を読むうえでも活かされているものとおもわれる。体型もそうだし、真顔と笑顔が瞬間的に入れ替わる感じなんて、秋山そのものという感じもする。じっさい、はじめてロバートのコントかなんかを見たとき、かなり異質感を覚えた記憶がある。特に秋山に対して、なにか「こわい」ような印象を受けたのである。スマホ向けなので見れないけど、最悪のやつなのになんか憎めない諸星をうまく実写向けに再現しているんではないかと想像される。インタビューでは秋山じしんの借金体験も。若手芸人って金ないイメージあるけどじっさいそうで、もう少しでカウカウみたいなところにも借りてたかもとのこと。苦労されてるんですねえ。


本編ではしんこchが仁に弟子入りしたところである。口調はべつに敬語とかではないが、しんこは仁を「村上先生」と呼ぶ。

仁の最初の指示は、清栄に会って圧力をかけてこいというものだ。しんこは清栄ハイパーメソッドの被害者の会代表である。売り上げの半分が2ヶ月後に入ってくるということだが、いますぐ全額返せといってこいと。2ヵ月後というのは、まさかいまから2ヶ月後ってことではないよな・・・。報酬が販売した日から2ヵ月後ではない可能性はある。アマゾンとかのアフィリエイトも月ごとに入ったりする。とはいえ、しんこと仁のたたかいからほとんど日がたっていないということはいくらなんでもないような気がする。仁が清栄の会社にいったり、苅べーがやらかしたり、清栄とたたかうことになったり、あれからいろいろあったし、少なくとももう支払いは1ヵ月後くらいだとおもうのだが。

それから、情報収集もすることになる。仁は天生も超えるつもりだ。そのふたりの悪い噂を集めてきてくれと。

しんこはなにか言おうとするが、言い出せない。生活苦で闇金、というかカウカウに借金してしまったのである。


そのころ清栄はまた熟女のデリヘルに癒されている。前豚女と罵倒して追い出した女と同一人物だろうか。今回もそう呼んでいるし、いつものことなのかもしれない。

彼女は、なぜ金持ちはいろいろな女とつきあうのかと訊ねる。もし「金持ちはいろいろな女とつきあう」ということが常識として登録されていたら、金持ちであることをアピールしたい天生のような男は「いろいろな女とつきあう」だろう。それ以外ないようにおもえるが、清栄は、相手にとっても自分にとっても、都合よくつきあうなら複数がベストだと応える。相手の若い女は、不安を予定で埋めている。それでも埋まらないぶんを、じぶんが埋めていると清栄はいう。清栄じしんが多くの女の子とつきあっているわけだから、その子にとっても負担がなく、不安を埋めるだけならそのほうが都合がよい。しかし、では清栄にとっての利点はなにか。彼は「怖い」という。誰かを本気で好きになって、奪われるのが怖いと。なんのことやらわからない女はまたてきとうなことをいって豚女と呼ばれるが、清栄は1年前のある出来事を思い返す。


1年前の天生は髪が黒い。彼はすでに金持ちだが、清栄はまだただの弟子で、成功していない。そんな彼に、ドライブ中、天生はじぶんがハンバーグを嫌いな理由を語る。すでに以前にも酔ったときにはなしたことがあるようだ。回想内回想である。天生がまだ10代、田舎の暴走族だった10年前のはなしである。ということは、天生はいってても30歳か・・・。

無免許でドライブしていた天生とその彼女のふたりがパーキングエリアに入り、ハンバーグを食べて出てみると、運悪く敵対する暴走族のメンバー5人がたむろしており、ふたりは山奥に拉致されてしまった。暴行を加えられた天生はしばられ、その目の前で彼女は輪姦された。石ころや枝なんかの落ちている固い地面で彼女の背中はハンバーグの断面みたいにズタズタになってしまったと。

それ以来、ハンバーグが大嫌いになったが、同時に彼はじぶんの性癖も発見した。ことの最中、縛られた天生はずっと勃起し、二度も射精していたのである。

そんなじぶんの歪んだ一面に気づいた天生は、それから愛する女性が他の男とするのを覗き見するのがやめられなくなった。浮気現場にしのびこんだとかではなく、たぶんこれは、彼女か相手の男、あるいはその両方にたのんで、じぶんでそのようにセッティングしたのだろう。洗濯機かなんかの巨大なダンボールに隠れて、呼吸を荒げている。


それを踏まえて、天生は清栄に頼みごとをする。じぶんの性癖につきあってくれと。天生の彼女とやれというはなしかと思いきや、そうではなく、清栄の彼女とじぶんがやっているところを見ていてくれと、そういうはなしである。天生はたしかに「頼みがある」といっている。つまり、たとえばこの性癖を克服するとか、あるいはこの性癖をもっと快楽として追及したいからとか、なにかじぶんにとっての目的があるはずである。しかしそこは語られず、天生はそれを清栄のためであるというふうにすりかえる。じぶんのようになりたいなら同じ体験をしないといけない、どの程度本気かはかる登竜門だと。これではぜんぜん「頼み」ではない。清栄のためにやってあげるわけなのだから、天生は内心いやいやでなければならないはずである。しかし清栄の彼女を組み伏せる天生は完全に満たされている様子である。テーブルクロスのしたで、清栄は血が出るほど手をかんで嗚咽をこらえている。天生はふつうに清栄の名前を出しているが、彼女は見られていることを知っているのだろうか。


その体験を思い出しているところにしんこがやってくる。圧力をかけてこいというはなしだったが、おどおどしていてこれは難しそう。ほとんどなにも話せないまま、清栄のペースになっていく。じぶんはお前を評価していたのになんでこなかった、事務所使用料50万はたしかに高いが、直接じぶんのところで学べると考えれば安いもののはずだと。清栄メソッドの売り上げはすべて自演だったので、しんこはアフィリエイターの才能がないとじぶんで考えているが、清栄は特に根拠もなく、あるさ、という。自腹で購入した30枚(だったかな)のメソッドを、なんなら倍の値段で買い取ろう、そして使用量も免除で項待遇の弟子にしようと。おそろしく好条件な誘いである。闇金に借金してしまって、「いま、この瞬間」の金に困っているしんこは、「倍で買い取る」というところに大きな魅力を感じたようである。


だが、「その代わり」である。被害者の会を解散し、仁が使用しようと考えているその会のメールリスト、そして仁じしんの顧客リストもそっくり持ってきてくれと。


しんこはカウカウに借金している。返済日は明日だ、ということをわざわざ車のなかで話しているが、どういうことだこれ。たぶん、働いている様子もないし、回収があやしいので脅しをかけているのだろう。それが払えなかったら2ヵ月後の450万すべてもらうと、丑嶋にいわれ、成功もなにもなく、しんことにかくいま、金が必要なのであった。





つづく。





2ヵ月後の450万というのは、その、清栄メソッド30枚()の売り上げの半分ということだろう。1枚30万だったはずだから、450万。冒頭の仁やこの丑嶋がいっている「2ヶ月後」というのは、「いまから2ヵ月後」ということではなく、たぶん「清栄メソッドの報酬として2ヶ月後に支払われるというはなしである例の450万」という意味だろうとおもわれる。略して「2ヵ月後の450万」。だから、たぶんその日はもうすぐなんだろう。

丑嶋の脅しが、しんこに「いま、この瞬間」に金が必要だという焦りを与えている。しんこはいつのまにか変化した仁の前向きな力強いことばに感動し、このひとについていけばじぶんも成功できるかもしれないと考えて仁についた。たぶん、その感想じたいはほんものであったとおもわれる。けれども、いまげんに金がないということや丑嶋の与える威圧感のほうが、成功したいという欲求や承認願望よりずっと原始的で、強烈である。現状の仁は波にのっているので、直接説得されればわからないが、この様子だとしんこは仁を売ってしまいそうである。


天生と清栄の関係も一筋縄ではいかない歪んだものだった。天生のはなしはすべて本当のことなんだろうか。すでに成功している天生が清栄の彼女とやりたいがためについたウソにしては壮大すぎるし、はっきり絵にも描かれているので、体験じたいはほんものだろう。しかし動機としてはどうなんだろう。不思議なのは、そのトラウマ的体験でハンバーグを食べられなくなりながら、その状況、つまりじぶんの愛している女性が他の男とやっているのを見るという状況は、歪んだものとして捉えつつも、受け容れ、むしろ楽しんでいるということである。「ハンバーグを見ると勃起する」というのならわかる。だが、彼はハンバーグを、つまりそのときの体験、記憶を拒否している。ものを食べるという行為は、それを体内に直接いれるという点から、拒否や受容がはっきり出やすいことかもしれない。天生は、その体験を、またそれによって発見されたじぶんの性癖を、しかたないものとして決して認めているわけではない。むしろ、こころの底では拒否している。それが、清栄への「頼み」につながっている。


天生の言いかたからすると、大声で顕示するようなことではないにしても、唾棄すべきものとしてその性癖が捉えられている感じは弱い。それはそれでよいと考えてそうな雰囲気さえある。しかし、この性癖を満足させるためには、彼は誰かに「じぶんの大切なもの」を奪われなくなくてはならない。彼が金持ちや成功者というものをどのように定義しているか不明だが、そこには一種の全能感のようなものが少なからずあるはずである。他人の欲望や社会の動き、ものの価値、そういうものを意のままにする感覚。しかしこの性癖は全能感からは遠い。支配者の性癖ではない。あるいは性癖というものは社会関係上のペルソナの裏返しで、成功者ほど、性関係において屈服や不能感を求める、ということはありそうなはなしだが、ともかく、この性癖は全能感と折り合うものではない。

じぶんの彼女とどこかの男が浮気をするのを待って、その部屋に忍び込む、というのではかなり気の長いはなしになるし、「やめられなくなった」というふうには形容されないだろうから、程度の差はあれ、おそらく天生は、こうした状況をみずからセッティングしている。浮気をするよう仕向けるとしてもやはりそこに彼の手は加わっている。したがって、その状況そのものにおける不能感は擬似的なものである。だから、おそらく、この性癖においてポイントなのは、それが強姦であれ、セッティングされたものであれ、また女性のほうが感じているのであれ感じていないのであれ、それが目前で行われているという事実それじたいであるとおもわれる。たぶん、天生個人としては、そうした性癖を認めている。しかし、そのようにじっさいに考えたかどうかは微妙だが、その状況そのものは、支配者のものではない。その結果、彼は、トラウマを克服するのでもなく、また受け容れるのでもなく、形状を変えることを選んだのである。天生は清栄に頼んでセッティングをする。だがその「状況」で、観察者に不能感を与え、支配するのは、彼自身である。彼は、観察者にとっての不能感がもたらす快楽を知っている。したがってこの「状況」で彼はそれを体験できる。同時に、支配者として全能感も満たされる。ハンバーグを拒否することからわかるとおり、彼は不能感そのものは認めていない。金持ちを目指し、達成してから余計その感覚は強まったかもしれない。だがその快楽は知っている。それはやめたくない。分離した理性と本能、精神と肉体を統合するために、天生はこのような状況をつくりあげた。また、そういう状況を意図してつくることができるということそれじたいも、彼の全能感を補強したことだろう。たぶんこのときの経験は、天生にかつてない快楽をもたらしたはずである。同時に満たされることのなかった精神と肉体が合致したのだから。


だが、そのとき観察者にされた清栄にはそんな性癖はない。清栄は、天生のようになりたいとおもったかもしれないが、天生になりたいわけではない。しかし、あのようにいわれたら、清栄には断ることはできない。天生のような性癖のない清栄は、それを快楽ではなく、そのまま屈辱と受け取ったことだろう。それから、清栄は特定の女性を愛することができなくなった。これは、たとえば彼女に浮気をされて、女性が信じられなくなった、というような女性一般に通じるおはなしではなく、現実問題としてそういう女性ができると天生に奪われてしまうかもしれないからだろう。というか、たぶんそれ以降特定の女性というのがいたことがない様子なので、「誰かに」奪われるのが怖いのか、「天生に」奪われるのが怖いのか、じぶんでもよくわかっていないのかもしれない。

清栄はたぶんそれを正しく不能感とうけとった。そしてそれは快楽ではない。これを克服しようとしたら、たぶん同じことを別の誰かにする、ということになるかもしれないが、天生はそれでべつに克服をしようとしているわけではなさそうというのが奇妙なところである。あるいは、たぶん、その「状況」における快楽の総量が一定で、天生が快楽を感じたぶん、清栄は不快を感じている、というふうに考えることも可能かもしれない。特に彼らのようにお金のやりとりに終始している人種ならなおさらだろう。だから、それを取り戻すために、彼はどこかで同じように誰かから快楽を奪わなければならない。しかし、仮にそれを実行しても、トラウマが消え去ることはないだろう。じぶんがその「状況」の連鎖に与することで、その記憶はむしろ輪郭の明瞭な、ありありとしたものになってしまうにちがいないからだ。それらすべてを包み込んで快楽にしてしまう天生は、やはり清栄に比べると「強い」としかいいようがない。


しかし、それをバネにして、清栄はかなりのところまで上り詰めた。今回もあっさりしんこを味方にしてしまいそうな雰囲気である。清栄の仁に負けられないという気持ちは、そういう天生に対しての気持ち、どこまでもついていっていつか追い抜いてやる、というような決意も、かなりあるにちがいないのである。








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