- ライヴ・アット・モントルー 1997 [DVD]/ヤマハミュージックアンドビジュアルズ
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ジャコのDVDといっしょに購入した。ずっと手元におきたかったものである。
チック・コリアとゲイリー・バートンのコンビネーションについてはちょっと前にも書いた
。ふたりの最初の作品は1972年の『クリスタル・サイレンス』にまでさかのぼるが、本作は、ライブ作品も含めて実質4作目になるのか、『ネイティヴ・センス』発売に合わせてモントルー・ジャズ・フェスティバルで行われた演奏である。
僕は、むかしのNHKの衛星放送や、いまもやっているのかどうかわからないが、ピーター・バラカンと今村知子のWOWOWジャズファイルなどを録画したものを見ていたのだが、そこでは、本作にも収録されている「ルンバタ」と「ラ・フィエスタ」が聴けるのみであった。そもそも「ジャズ・フェスティバル」というのがどういうものなのかよく知らないので、そんなに長く演奏をするともおもえず、この2曲しかやっていないのだろうとかってに思い込んでいたのだが、最近になってこのDVDの存在を知り、ラブ・キャッスル等の名曲が演奏されていたことがわかったのである。その当時はいろんなチャンネルでこの演奏がくりかえし放送されていたので、どこの番組だったか不明だが、ルンバタとラフィエスタがそれぞれなぜか「ラブキャッスル」「ノーミステリー」と紹介されており、どっからでてきたんだよと意味不明だったのだが、なるほど、このときこのどちらの曲もじっさい演奏されていたのであり、くわしく知らない編集のものがクレジットを見つつもまちがえてしまったのだろうというふうにやっと納得できた。(しかしじっさいのところ「ルンバタ」と「ラフィエスタ」はかなり重要な曲であり、それだからこそ放映にあたってこれがセレクトされたはずなのに、タイトルをまちがえるというのは、やはり意味不明である。あるいは、最初は、以前放映したものではないラブキャッスルとノーミステリーを流すつもりだったものが、急遽やはり以前のままで、ということになったと、そんなことなのかも)
チック・コリアもゲイリー・バートンもいまでも現役なので、こういうことをいうのは失礼かもしれないが、しかし97年のこの演奏は、通して聴くとミスタッチもけっこうあるのに(テクニシャンのチックがノーミステリーで盛大にまちがえている)、ちょっと全盛期とかそういうことばでは片付けられない鋭さがあって、高校生くらいのころの僕は録画したビデオがすりきれるくらい、飽きもせずこの2曲を聞き続けていた。とりわけ「ラフィエスタ」はチックの曲でももっとも好きなもので、それ以前のふたりの演奏では『Duet』に収録されているものがあるが、どうもこの演奏には納得できず、もっとすごいものになるはずなのに、みたいなへんな気持ちがあって、これはそれに見事に応えてくれたのである。(いや、この記憶はあとになって捏造された記憶かも。「Duet」を聴いたのはだいぶあとだったはずだから)
ラフィエスタにかんしては、最近レビューを書いたオーケストラとの共演作でも録音されているが、いつもチックのソロのところは難解になっていて、比較的新しいチックのピアノソロ作品に近いテイストになるのだけど、僕がこの曲で好きなのはやっぱりゲイリーがソロをとっているところである。とにかく、チックのプッシュがすごい。ぜんぜんジャズやピアノ音楽を聴いたことがないひとでは、もしかするとよくわからないということになるかもしれないが、そういうばあいは、とりあえず、わからないまま何度かくりかえし聴いて、どういう感じに音楽が流れているのか覚えてしまうといい。そうすると、ふたりが、音楽上でどういう会話をしているのか、どうインタープレイしているのか、次第に立体的に見えてくるようになるし、そうなれば、もう一生ふたりの音楽を楽しむことができるだろうとおもう。とにかく、ラフィエスタにはいろんな演奏があるが、本作の演奏は、伴奏にかんしてはチックの最大の名演だろうとおもう。
ラブキャッスル、ノーミステリーともにチック・コリアのスタンダードといってもよく、オーケストラ版でも演奏されているが、ふたりの演奏ということではネイティヴ・センスのこれが初演である。書いたとおりに、ノーミステリーはとてつもない緊張感である。ユニゾンでぴたりと合致させなければならないところが多いという、即興演奏とは異なる、クラシックの演奏に近い緊張感だが、いずれにしてもたいへん高度な演奏である。ラブ・キャッスルも、すばらしくふたりにあった空気感の曲で、ふたりではこれまでのすべての演奏が名演になっている。本作ではゲイリーはマリンバはつかっていない。
ずーっと映像のすりきれたようなVHSで見てきたので、まず映像の美しさにも僕なんかは感動してしまった。このモントルーの映像のシリーズは、冒頭の感じだとほかにもあるんだろうか。ハービー・ハンコックの96年のニュースタンダードとか、98年のヘッドハンターズとか、出てるなら欲しいなー。
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