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土下座を中心に据えた前代未聞のマンガ、『どげせん』だったが、あちらはバキの板垣恵介とRINこと笠原倫の合作ということになっていた。しかし、あるとき、「土下座観の違い」という、本気ともジョークともつかない理由でこのコンビは解散し、おのおの土下座道を追求していくことになった。すでにRINによる『どげせんR』は発売されているが、今回、板垣恵介単独の作品となる、謝る男と書いてシャーマンと読む、タイトルが秀逸すぎる作品が単行本化されたのであった。
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コンビ解散の経緯だが、「土下座観の相違」というのが、「とにかくその設定を大真面目に考えぬいてやりきる」というしかたで範馬刃牙を描ききった板垣恵介だけに、冗談のように見えてほんとうのはなしなんだろうなとおもわせるところがあったが、検索するとインタビューが出てきた。そうかんたんなはなしでもないようである。
【コミックナタリー】板垣恵介インタビュー
http://natalie.mu/comic/pp/shaman
コンビ解散は、現実的には「仕事観」の相違ということが原因だったということ。
ほかにも、瀬戸先生のモデルはじっさい田代まさしであることなど、かなり興味深い。
とはいえ、マンガの技術的な面・・・どこで完成とするか、というところに、プロとしての意識のちがいが、仮にあらわれているとして、それが作品に表出した際に、たんに技術的な問題として読むのではなく、作品の感触のちがいとしてみることができれば、わたしたちにとってそれはやはり「土下座観」のちがいとなるだろう。
だが、『謝男』と『どげせんR』に描かれる土下座の、どういうぶぶんが異なるか、説明することは難しそう。どちらもまだ1巻であって、たぶん作者じしん、先がよく見えていない。インタビューで板垣先生はニーチェのことばを借りているけど、すでに明らかな意味のかたちを抱えたなにかのべつの側面を切り拓く、それが創作ということであれば、いまが手探りであったとしても不思議ではない。バキの読者は慣れたものだろうが、要するにわたしたちは、板垣先生が「土下座」からどのような新しい意味をくみ出してくるのかということを緊張感とともに待っていればよいのであり、きっとその意味で、作品の展開も、一見あほらしい、しかしたしかに未体験のスリルがある、そういうものになっていくとおもう。
現段階の直観としては、「土下座」の意味を新しくくみだす、という行為じたいが、すでに「土下座」をモノ的にあつかっているのであり、一種のオプション、戦術としての面が、「謝男」の土下座にはあるようにおもえる。といっても、主人公・拝一穴にそれ以外の技があるということではないのだが、切り離し可能の、後天的なスキル、という面がどこかしらあるようにおもう。いってみれば、喃語ではなく、貨幣のように流通していることばとしての土下座なのだ。そうでなければ意味はくみだせない。この土下座は、ある段階から普遍性を帯びていくかもしれない。
対して瀬戸発先生では、くりかえすように熟考したわけではない、直観だけど、その土下座にはなにか身体性のようなものが感じられる。瀬戸発の人柄ありきの土下座という感じがある。
まあ、いまのはてきとうにいってみただけで、ほんとうのこというとわかりませんが。2巻以降の展開が待ち遠しいです。
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