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佐々木マキというと村上春樹の『羊男のクリスマス』なんかの挿絵を書いていたひとなのだが、今回かんたんに調べてみて、はじめてこのひとが男性だったことを知った。しかも1946年生まれ。『羊男のクリスマス』の村上春樹の前書きによれば、学生時代に佐々木マキの描いたポスターをかってにはがして持ち帰り、家に飾っていたということだから、冷静に考えるとそのくらいの年齢になるのだが、非常に決断的な輪郭というか、くっきりと明瞭な描き方なんかに、無意識に若さを見ていたのかもしれない。
本作『あんたがサンタ?』は新作で、副題に「こまったサンタの実例集」と書かれたユーモア絵本である。内容としては、べつにストーリーがあるのではなく、こまったサンタの具体的な例を、頁ごとに絵で説明していく、要するに、「こんなサンタはいやだ」なのである。上質な紙をつかって、絵は2色、赤と黒のみを使用していて、真夜中の、雪がノイズを吸収して静まり返っているなかに、なんだかのんびりとしたサンタが赤く浮き上がっていく。佐々木マキの絵の個性として、「ねむいねむいねずみ」という具体例もあるが、人物はいつもみんな眠そうだ。それと同時に、口元の気配がうすく、誰もかれも、みんなが、どことなく寡黙で、ひとのはなしをふんふんと聞きそうな雰囲気をもっている。そんなときの彼らは目を大きく開いて、好奇心を感じさせる視線で相手を見ている。だが、果たしてどこまではなしを理解しているのか、目の色から察することはできない。結果として、頷き上手が相手のはなしを引き出していながら、たしかめてみると眠くてぜんぜん内容を理解していない、そういうような感触を人物に付加することになっている。くっきりとした漫画的な筆致で浮かび上がる、なにか浮世離れした、それでいて親しみ深い、そういうものたちが、ふんふんと、関心ありげに頷いてこちらのはなしを聞きながら、じつはぜんぜん聞いていない、そして、へんなタイミングでどっかにいってしまう。相手に自然とこころを開かせてしまう愛らしい変人たちだ。
そんな作品世界に生きるこまったサンタたちは、たとえば、ソリから落ちてしまうし、うっかりハロウィンの日に出発してしまうし、おおぜいでこどものもとにおしかけてしまうし、何回もおんなじ家にやってきてしまうし、サンタクロースをしんじていなかったりする。そういううっかりが、独特の眠そうな目、見開いたときのまっすぐな視線、印象のうすい口元、こういう造形で、愛すべきサンタクロースとして立ち上がるのだ。ユーモアが仮に計量できるものだとしたら、あるいはこうした笑いは、大人向けかもしれない。しかし、本書にはさまっていた絵本館のちらしによれば、子供に絵本をあげるときには、自分がおもしろいとおもったものを選ぼうと書いてある。それに佐々木マキの絵はとにかく明瞭でわかりやすい。親戚の子供へのクリスマスプレゼントなんかにぴったりじゃないかとおもう。
- 羊男のクリスマス (講談社文庫)/講談社
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