今週の闇金ウシジマくん/第277話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第277話/洗脳くん⑤



今週のスピリッツには映画化に先駆けてウシジマくんのプロモーションDVDがついている!まずはその感想。

ドラマの内容を振り返りつつ出演者のインタビュー。最後には、映画の冒頭、丑嶋登場までが入っている。いやー、これは想像以上に楽しみだなー。大久保千秋も登場するんだね。

ちなみに、小川純はギャル汚くんではなくチャラ男くんになってる。もしかしたら人格的にはちょっと楽園くんの中田がはいっていたりするのかも。なんか例の、グータラの社長とかがいるセレブパーティーみたいな描写があるのだ。イケメンということもあるし、林遣都じしんのコメントにもあるように、漫画のジュンよりはもう少しあまたがよくて、明確な野心つきで、まじめな、懸命なぶぶんの見えるキャラクターに仕上がっているようす。金持ちに笑われるジュンの場面では、やっぱりつい、ジュンに味方してしまうね。

大島優子は、眉をひそめている感じがすばらしい。鈴木未來は、作品に登場する女の子ではほとんど唯一の、クリーンなキャラクターだ。いってみればヒロイン的なあつかいなのであり、裏世界に対したときは「戸惑い」が基本的感情になる。だとするなら、これはまったく正しいキャスティングなのかもしれない。さらに、映画版の鈴木未來には、テレクラくんの美奈も入ってるらしい。母親に3P売春してくれないかと迫られるのだ・・・。つくづく、よくこの仕事受けたねぇ、大島優子は。

ネッシー、豚塚の造形もすごい。下手すると漫画より怖い。ネッシーはとりあえずでかいし、豚塚はもう、面がやばい。ぜったいかかわりたくない。彼らに比べれば人間味あふれる、ある意味かわいらしいカウカウのメンバーで対抗できるだろうか・・・。

そして肉蝮は新井浩文。したを向いて歩く理由を、新井浩文は孤独感、というふうに表現している。友達ゼロで生きていける人間なんているはずない、というぐあいに。愛沢の虚無感とか焦燥は理解できても、作品内では異物に徹底している肉蝮が孤独かもしれないなんて、これまで考えたことなかったよ。こういうところが、媒体としての漫画と、ドラマや映画という、役者を通して表現されるもののちがいかもしれない。漫画では、アシスタントが書いているようななんでもない、通りすがりの人物でも、たとえば宝塚歌劇のような舞台のお芝居では、照明があたらないすみっこにいる人物でさえ、各自生活設定や性格、口パクのセリフの内容なんかも決めて本番に臨んでいる。人間が人間を演じるということに解釈が入り込み、熱を帯びていくのだ。




さて、洗脳くん本編だが、今週は上原まゆみが登場しない。そのかわり、今回はじめて丑嶋があらわれる。

どこか下町っぽいところに、丑嶋、柄崎、高田が到着する。もちろん取り立てである。相手は金子というおばあさんで、よく見えないが、従業員が数名いる程度の大きさはある飲食店をやっているらしい。しかしまあ、いつものことだが、払う気はないらしい。柄崎が嫌がらせをすると警察を呼ぼうとするが、従業員の女の子たちはおびえて動けない。

しかたなく金子さんは金を出すがぜんぜんたりない。しめて38万。

丑嶋たちが辛抱強く、生かさず殺さずの取立てをしているところに、屈強な男がふたりやってくる。同業の男たちだ。彼ら大沼金融からすれば、丑嶋の取立てはぬるい。そんなだから闇金がなめられると。ふたりともタンクトップをきて腕の筋肉を誇示し、威嚇的ななりをしているが、しかしけっきょくは、裏道で丑嶋にボッコにされる。同業が出てくるということは、じぶんたちの取り分がもっていかれているということ、だから潰しておくと。ケツモチとか大丈夫なのかなという気もするが、丑嶋はおそろしく顔が広いので、まあ大丈夫なんだろう。



「あーゆー悪い金融屋が来たら、俺を呼べ。


いつでも助けてやっから」



といっても金子さんはやはり金を返さない。丑嶋は、今日集まりがある「無尽」で払えという。広辞苑で調べると、頼母子講と同じということであって、鎌倉時代からある互助的な庶民金融らしい。決まった期間をあけて、たとえば毎月、会合がおこなわれ、メンバーが決まった額を出す。で、メンバーのなかでいちばん安い金額を提示したものがそれを競り落とすと。響き的にはあやしい感じもするが、まだ市民共同体が生きていたころの、助け合いの精神に基づいた、古いやりかたみたい。


どこかのスナック的なところにメンバーが全員集まっている。40代から60代くらいの男女10人が楽しそうに酒を飲みながら5万ずつ金を出していく。原則にしたがって、今回は金子さんが38万もらえるはずが、メンバーのひとり、柏木というスキンヘッドのヤクザがよくわからない理由で50万すべてもっていってしまう。メンバーも納得しているわけではないが、付き合いだからしかたないとあきらめているようす。

金子さんがそのことを伝えると、丑嶋は柏木のところに出向いていく。知り合いらしい。そして、金を回収しにきたという。柏木は、金子のバーサンなら裏でデリヘルやって儲けてるから取り立てられるよ、みたいなことをいう。しかし、丑嶋がいっているのは金子のことではなかった。柏木に貸した金のはなしなのである。

柏木は開き直り、とれるもんならとってみろとすごむ。対して、丑嶋もすごむということはなく、借用書のかわりになって印鑑等がされている柏木の名刺を出す。丑嶋によれば、ヤクザは顔で商売しているから、名刺に書いた借金は踏み倒さないということである。


今回、金子さんがじつは金があるらしいということが判明した。だから逆に、丑嶋は急がない。今回は「ジャンプ」して、大沼金融のぶんも含めてきっちり回収するということだ。



つづく。



丑嶋社長が登場したのはうれしいが、なんかふつうすぎて拍子抜けだ。

次回まゆみが登場して丑嶋とからむらしいが、単行本で読んだとき、ここの箇所はどういう役割を果たすのだろう。要するに、「洗脳くん」とどういうつながりがあるのだろうか。


今回は、「無尽」という、僕には聞きなれない組合の形態が描かれた。場所によってやりかたがちがったりということもあるようで、よくわからないのだが、返済はどういうふうにするのだろうか。一口5万というふうに定額にしてあれば、提示金額も何口というふうにできるが、38万みたいなへんな額だと、たとえば次回以降、会ごとに一口払って、なおかつ、八ヶ月のあいだ競りには参加できない、というふうにしてもなんかもめそう。これだと積み立てに参加するばかりで何年も受け取っていないというひとも出てきそうだし、なにかうまい方法があるのだろう。


ともかく、無尽が示しているところは、無邪気な、下町的信頼関係みたいなものかもしれない。大沼金融にしても、暴力のにおいではなく、じっさいに暴力を行使して取立てをする原始的形態のようだし、なにか時代がちがうという気配がある。そのいっぽうで、あの年でデリヘルをする金子や、問答無用で金をもっていく柏木などが、不安感をもたらす。その不安感が、上原まゆみがトラウマの物語を書き換えるにあたって必要な、スピリチュアル的語彙に満たされた新たな物語の外にあるものへの不信感につながっていく可能性はある。じぶんでは語ることのできない、自己を形成するトラウマの物語、それは、治療という領域では、分析者とともに物語を共作することで快癒する。だがこのときに、分析者が共作者の「ふり」をして、べつの種類の言語、ここではスピリチュアルなワーディングで、ぜんぜんべつの物語をつくってしまったとき、分析の対象、つまり患者は、自覚がないまま、自我を書き換えられてしまう。そして、そのワーディングを受け容れる作業に、たぶん、外部との断絶は必要になってくる。その意味でいえば、無尽的な信頼関係が見られない都市生活者は、新たな物語を受け容れやすい傾向があるのかもしれない。

しかしまあそれは、次回以降読んでみないとわからない。




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