宝塚歌劇団月組東京公演『アルジェの男/ダンス・ロマネスク』 | すっぴんマスター

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アルジェの男/Dance Romanesque(DVD)
¥10,500
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■主演・・・霧矢 大夢、蒼乃 夕妃


ミュージカル・ロマン
『アルジェの男』

作/柴田侑宏 演出/大野拓史

[解 説]
 1974年に鳳蘭主演、1983年には峰さを理主演により上演された作品の再演。野心を抱き、自分に心を寄せる女性を利用してまで成功への道を駈け上がろうとする青年の姿。青春はその輝きの裏に残酷な翳りをともなう。その彼に心惹かれ、悲しい運命を辿ることになる三人の女性たち。野望に燃える若者のドラマティックな生き様を描いた秀作。


ショー・スペクタクル
『Dance Romanesque(ダンス ロマネスク)』 
作・演出/中村暁

[解 説]
 “Romanesque”とは、小説のように数奇的、情熱的であるさま、という意味。「ダンスが一瞬を永遠に変える」というテーマのもと、若さと活気に満ちた群舞、ストーリー・ダンスなど、様々なダンス・スタイルで構成した、情熱的で躍動感溢れるショー。



以上、公式ページ より転用。



先月の花組に続き観てきました。9月23日、11時開演。

僕では、現行の組でもっとも馴染み深いのが月組だ。

小学校高学年から高校生にかけて、僕がもっとも宝塚に熱狂していた時期だが(当時は熱狂しているつもりなどなく、ごく自然に見ていたのだけど)、そのときから現在までのあいだ、いちど熱が復活した時期があって、そのときにはもうブログをやっていたから、古い読者は「また宝塚かよ・・・」っていう感じでうんざりしていたとおもうけど、とにかく、そのときに見ていたのが、いちど雪組の水夏希をみた以外は(ゾロのやつ)、すべて瀬奈じゅん率いる月組だった。

さらにいえば、僕は、天海祐希と久世星佳が好きで、そのつながりで真琴つばさも観ていたし、大好きだった姿月あさとも、天海・久世時代は月組であり、ビデオでもくりかえし見ていた。月組っ子といってもいいんじゃないかとおもう。

というわけで、組じたいには代替不可能な愛着がある。さらに加えれば、現在のトップスター霧矢大夢(きりや ひろむ)は、当時からの延長でぎりぎり知っている。そのころから、たぶん真琴つばさのノバ・ボサ・ノバだとおもうけど、それくらいから、かなり頭角をあらわしていたひとだし、現在宙組トップの大空祐飛とあわせて、むかしの記憶と関連づけて観ることのできる限られた人物である。

そういうわけで、非常に楽しみに劇場にむかいました。そしてもちろん、いつものことですが、期待はまったく裏切られず、帰り道ではこれから仕事だというのに満たされた幸福な気持ちでいたのでした。

「アルジェの男」は、すでに何度か上演されている古い作品だそうで、率直にいってけっこう難しい。見るほうの感情の置き場という点でもそうだし、なにより演じる側が、いったいどのような心持でこれにのぞめばよいのか、かなり吟味されたんではないかとおもう。特に霧矢大夢演じるジュリアンは、なかなか、首をかしげてしまうような言動が多々ある。悪党たちの兄貴分としていながら、ほとんど脅迫に近いような総督の恫喝とともに鞍替えし、光のあたる道にころりと転進する、その気持ちの過程や、ジュリアンには興味がないと挑戦的に言い放つエリザベート(彩星りおん)を「いつか屈服させてやる」とかなんとかいうところなど、どこか論理的でない。というのは、要するに、この作品ではそれがテーマということのようだが、そうした若者の野心、狭量さや俯瞰するちからに欠けていることそれじたいに自覚のもてない、青年の未熟さ、そういったものが、げんに論理的ではないのであり、直情的に、傍目にはいびつに、突っ走るものだからなんだろう。新作としての演出を担当された大野拓史先生はプログラムのことばで、ジュリアンという役を「演劇でしか描けない、演劇的なスキルを要求される、演劇ならではの魅力を有する」ものであるとしている。同時に、本物の青年ではできないとも。そういうことなのだ。結末としては悲劇以外のなにものでもないし、美貌の蒼乃夕妃演じるサビーヌなどは、物理的に胸がいたくなってくるほど、見返りを求めないけなげな愛を示し続ける。しかし、観客という、物語を外から眺める「大人」の位置にいる我々には不可解におもえるほどに、ジュリアンは突っ走り続ける。役者は、物語のなかにいながら、つまり「大人の言語」を用いずに、これを表現しなくてはならない。それはたいへんに難しいことだろうとおもう。

まあ、そのうちDVDを手に入れたらもっと深く考えてみたいとおもうので、物語についてはこれくらいにして、今回はなにしろ明日海りおに感動した。連れの相方などは、「あんなにきれいなひとは見たことがない」といっていたくらいである。とにかくとてつもない華であって、出てくるだけで舞台が開いていくような気がしてくるのは、スター性というほかない。なんだろう、天海祐希と杜けあきの魅力をそれぞれあわせたような・・・。もともと、瀬奈じゅんの「ミーアンドマイガール」でジャッキーをやっていたのを見たことはあった。僕の記憶では、真琴つばさのジャッキーは九割くらいギャグだったようにおもうのだが、このことに関しては、天海版と瀬奈版では関係性がぜんぜん異なっていた。つまり、ビルのジャッキーに対する衝動が、ということです。彼女の演じるアンリは、寡黙でまじめな男であり、付き従うアナ・ベルの地獄を共有し、痛みも飲み込む孤独な立ち姿が、ごく自然に表出していた。これはほんとうに楽しみな男役さんです。

蒼乃夕妃は、あっけにとられるような美貌であり、またおそろしくダンスのうまいひとでもあって、踊り子の場面などはもう、おなじにんげんがやっているとはおもえないような、凄絶な美しさだった。今回の役では、そのように「無償の愛」を表現するものだったけれど、ダンスが導く完璧に近い立ち居振る舞いや、表情の背後からは独立した女性の強さみたいなものもよく感じられ、トップの霧矢大夢はかなりの先輩なはずだけど、並べてみるとまさしくプロのコンビというおもむきである。

龍真咲や青樹泉など、ぜんたいとして華麗な男役がそろっているという印象だけど、なかでも目をひいたのが星条海斗である。「宝塚おとめ」などをみていると、ハーフっぽい顔立ちがさわやかな二枚目っていう感じなんですが、今回に限ってか、いつもそうなのか知らないが、芝居でもショーでも威丈夫な悪漢の役回りであって、しかもどちらもたいへんな迫力、ほとんどスティーブン・セガールである。


というわけで、すばらしい出来でありました。今後も月組も楽しみであります。11月くらいには明日海りおさんのバウ・青年館もありますし、こちらも期待しています。




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