第243話/元ホストくん③
まずは、闇金ウシジマくん映画化おめでとうございます。
丑嶋役はドラマから引き続き山田孝之さんになるもよう。
僕は日本の俳優に暗いので、こんな言い方にはなんの説得力もないけど、とりあえずいまおもいをめぐらせてみて、このひと以外の役者は浮かんでこないし、ドラマの表現においても、なるほどとうなづくことしきり、公平に見てよく丑嶋を読み込んだ、具体的にはよく「黙(しじま)」が映し出されていた演技だったとおもう。
だから、いちおうテレビドラマと地続きということでいいみたいだけど、テレビでは表現しきれないことを映画では展開していくらしい。さらに、おはなしの基本はギャル汚くん編ということで、ということはもちろん、あの、オレタチのトラウマ、肉蝮大先生も出てくるにちがいないわけで、これはたいへんに完成が楽しみである。いろいろな種類の悪役が登場したけど、やっぱりパンチ力では肉蝮には最大のものがあり、僕などはたぶん、それ以降出てくる悪役(というよりは敵役)はすべて肉蝮と比べるしかたで図式化するということを無意識にしているとおもう。
まだ撮影中なのだろうか?いずれにせよ、期待しています。
ホストくんから引き続く元ホストくんでは、高田が隼人と再会したところだ。
以前高田が、窮する隼人に再会したときから半年がたっている。久しぶりに会う隼人はぷっくぷくに太っていて、なにやら羽振りがよさそうだ。隼人は彼を導いた投資家、海老澤を高田に紹介しようとする。いかにもうさんくさいのだけど、高田はどっちでもいいという。そこで、予定通りふたりは焼肉を食べに行く。
焼肉屋にはなぜか、前回隼人がいっていたピース尖閣という元芸人がきている。海老澤がに呼ばれてきたらしいが、彼はいない。ピースは機嫌が悪そうだが、隼人から今月の配当金をわたされて表情をかえ、悲しくなるほど一発屋くさいネタを披露する。ピースは隼人のもっている「お金持ちになりたい方の必携マニュアル」にもうさんくさいコメントを寄せている。
隼人は、以前ピンチのときに高田が貸してくれた金を返そうとするのだが、それを投資にあてろという。じぶんでつかえという意味にもとれるが、隼人は「お前と一緒になにかやれて嬉しい」という。
別の日、隼人は鼓舞羅、慶次とともにサウナにきている。そのからだには、やはりコブラの刺青が彫られている。なぜほかの者とおなじように顔にまで入れられなかったのかは不明だが、刺青代こみで金を払ったので、許してもらったらしい。
その金は、ケツ持ちの小谷というたぶんヤクザに紹介してもらったいまの投資の仕事で稼いだものだ。慶次と鼓舞羅は、じぶんたちもそのはなしにまぜろという。
で、はなしするためにサウナを出ようとする慶次を、鼓舞羅は引きとめ、ガマン大会を始める。
「根性なしはコブラーグリーンだ!」
ふたりの仲がどういうものであるのかはわからないのだが、お互い呼び捨てで敬語でもないし、同級生みたいなもんじゃないだろうか。しかし、鼓舞羅は本気で慶次をにらみつけ、これは冗談ではないとすごむのである。なんか鰐戸一と三蔵の会話みたいだ。三蔵はばかなので、一がてきとうな理由をつけるとけろっと納得したが、どうも鼓舞羅はそういう感じでもない。慶次の手下みたいな感じの位置に苛立っているのかもしれない。
どちらがいっているのか、はっきりしたことはわからないが、口調からするとたぶん慶次が、とりあえず100万円出資するという。いずれにせよ敵にまわすと危険な連中である。隼人はかんたんに了解するが、よほどの自信があるか、あるいは鼓舞羅たち以上の存在のしたにすでについているのかもしれない。
闇金業も景気がわるいらしい。愚痴っぽい柄崎と高田が金を回収してまわっている。
そこへ隼人から電話があり、20万円の配当金が出たとのこと。その高田の読み上げを聞いていた柄崎が、俺にも教えろと割り入ってくる。さらに、柄崎からはなしをきいたマサル、加納も、これにのる。加納の述懐をみる限りでは、これがうさんくさいはなしだという自覚はあるらしい。だがすでに柄崎が50万の実利をあげている。だから、とりあえずということなのだろうけど、それにしては加納の300万はすごい決断だ。趣味とかなさそうだし、案外ためこんでいるのかもしれない。
また別の日、それからけっこう日がたつのかもしれない、社長が呼んでいると、高田は柄崎を探しているのだが、マサルのはなしでは加納といっしょに、ちょっと前まで行けなかったカジノに出かけているのだという。そしてそのマサルも、いやみなほど成金趣味に飾り立てて、これからキャバクラにいくというのだ。黙ってこの状況を見ていた丑嶋はなにをおもうのか・・・?
つづく。
カウカウのメンバーは闇金の仕事で、いやというほど金の怖さを知っているはずである。
おいしいはなしにはわけがある。そういう、社会の暗部の真理において、彼らはむしろ仕掛け人、そのタネを見抜くだけの経験値はあるはずである。
おもえば前回、高田の家にとまりにきたマサルも、要するに金がなくて、キャバクラにいくわけにもいかず、やってきていた。百戦錬磨の彼らでも取り立てに苦労することが増え、人件費削減なんていうこともたまにはあったのかもしれない。
高田と隼人の会話を柄崎が耳にしたのは、いちおう偶然ということになる。だから、彼らの、少なくとも柄崎の出資には、たぶん深い考えなどないと見ていいだろう。つづくマサル、加納についても、マサルはまだこわいものしらずのああいう感じだし、加納なんかはうさんくささの自覚すらあって、そのうえで、金をつっこんでいるのだ。
だから、マサルはともかく柄崎も、べつにこのはなしのうそくささに気づいていないというわけではないのだろう。
ここに働いている心理は、たぶん賭け事に関するものと似ているかもしれない。
ここには、なにか「一発逆転」という、ホスト時代の高田や隼人がくちにしていた標語が響いているようにおもえる。
高田がカウカウを巻き込んで不安げでいるのは、ことがうさんくさいからではなく、この「一発逆転」の孕むリスクを、からだで承知しているからだろう。
カウカウの連中なら、そこから生じるなんらかのリスクをドライにかわしていくということはできるだろう。しかしまあ、高田が不安におもうことは、しかたないのかもしれない。
隼人のこのシステムのなかでの位置がどのようなものか、それはわからない。ピースに金をもってきたのは彼なので、重要な役職にいるとも考えられるが、たんに彼の直接の担当とかかもしれない。
前回書いたように、隼人にとっての「一発逆転」は「転生」に通じている。鼓舞羅がほどこす刺青はそれの象徴でもあるだろう。
この逆転を通過し、隼人はあのように太り、「別人」になった。
もちろん、生物としては同一人物なのだから、高田の記憶もあるしいまでも高田のことは好きだろう。だが、ことはそういうはなしではない。
元ホストくんは、ホストくんとして「一発逆転」を目指し、破れたもののことを示している。
つまり、いまの隼人は、おなじ「一発逆転」を方法をかえて目指し、そして成功しただけなのであり、本質的には「ホストくん」のときとなにも変わっていないのである。
したがって、今回の元ホストくんのエピソードとホストくんのものは相似形である。
一発逆転を目指し、破れたさきにやってくるものは、彼をどん底に落としてしまう。
高田はこのことを愛華を通して痛いほど知っている。だから、不安が先にたつ。
逆転がなされても、その結果にやってくる「転生」は、彼のほんらいもっていた価値をべつのかたちにしてしまい、その周囲にいるひとびとを取り返しがつかないほど損なってしまう。
しかし、「一発逆転」を望むものは、「ほんらいじぶんがあるべき状態」と「いま」に差異を感じているのである。
そこのところが、カウカウのメンバーとはちがうかもしれない。マサルはおいとくとして。
柄崎や加納は、べつのいまの仕事を鬱屈と、後悔にまみれながらやっているわけではないだろう。
「一発逆転」の起爆剤となるのは、「ほんらいのわたし」に対してある「いまのわたし」への呪いである。
だから、「一発逆転」はすべての関係性をなきものとする「転生」に通じる。
カウカウのメンバーにおいては、そういうのはたぶんないんではないかとおもわれる。
あとは、丑嶋がこれをどう見て、どう動くかだが、案外丑嶋もこれに乗るかもしれない。そして思いもよらない方向から、莫大な利益を得るかもしれない・・・。
今週合併号なので、次回はお休みです。
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