今週の範馬刃牙/第230話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第230話/純闘志




今週はまたバキ対千春にもどる。

千春が一方的にからみ続け、バキが追っ払うという感じを続けていたふたりだが、千春の闘志がもたらす戦闘力になにかを感じとったバキがかまえをとったのだった。「テーマができた」と。



だが、テーマができようとできまいと、千春にとってバキが「大怪獣」であることにかわりはない。


そして千春のスタイルは、大怪獣を前にしてもつねに実直、誠実さすら感じさせるものだ。アッパーカットにゆくと見せかけてアッパーカット・・・。千春だって、アッパーカットにゆくと見せかけてあたまをかいたり、ということくらいはできるだろう。だけれども、しない。というか、特に志向性をもって「しない」と決めているとかいうことともまたちがい、重点がそこにはない。

千春のアッパーはまっすぐバキの顎にあたる。もちろんバキには、こんな技など丸見えである。しかもバキは今回ヤル気になっている。どうやったのかはわからないが、顎にあたった千春の拳は逆につぶされてしまう。驚愕する千春の顔面にバキのなんか背手みたいな、逆ビンタみたいなモノがあたり、続けて平拳がレバーのあたりにつきささる。そして右のハイキックが、かわいそうなくらい見事に決まってしまう。当たり前なんだけど、なんて豊饒な技の使い手なんだろうなこの主人公は。


ディズニーみたいな倒れ方をした千春をあとにして、バキはまた部屋にもどる。ドアをもとにもどし、読書を再開し、時計を見て買い物に出かける。外には千春はいない。だが買い物の帰り道に、拳に包帯をまき、上着とはちまきみたいなのを装備しなおした千春がストレッチをしながら待っている。これは、彼なりの喧嘩の様式なのだ。

そして、おきまりのセリフをくちにする。なんにもいわず喧嘩買ってくれと。

だが千春はそれを最後までいえない。スイッチの入っているバキがまっすぐ拳を叩き込んだからだ。


だが、バキはここからなにかを学び取っている。



「千春さん


アリガトウ


勉強させてもらいます・・・ッ」




つづく。



バキとのたたかいと並行して、千春が自分達にとっての「勝負」論を述べている。それは、技術者・・・玄人といいかえてもいいかもしれない、とにかく、バキたちの「倒すか倒されるか」とはちょっとちがうと。それは、どちらかが「敗け」を認めたときに決まるものなのだ。

だから、技術者にとっての決着である「立っているもの」と「倒れているもの」の図ができあがっていたとしても、勝者は倒れているほうということも、原理的にはありうる。


似たような考えは死刑囚編のときにも見られた。ぼっこぼこにやられ、一時的に命を預かられようが、じぶんが認めなければ、まだ決着はついていない、というふうに。

それはつまり、はなしをたんじゅんにしてしまえば、肉体が滅びるほどの大ダメージを受けても、なんらかの事情が働き、ダメージを与えたほうが五体満足でも精神的に「敗け」だと感じ、さらにくちにしたときに、勝負は決まるということだ。

おそらく千春の考えでは、内心で「敗け」を認める瞬間とそれをくちにする瞬間というのは一致している。つまり、「これはもうオレ負けてるんじゃないだろうか。だけど口に出して言いたくはないな」というような状況はない。それはつまり、まだ「敗け」ていないのだ。言わざるを得ない、認めざるを得ない、そういう状況に相手を持ち込むことが、勝ちなのだ。これは、まったく計量不可能な勝負の定義だ。これなら、千春にも「勝機」はあるかもしれない。

そして、千春がこれまで見せてきた、圧倒的強者のバキを前にした態度・・・「勝てる勝てないは問題ではない」というふうに僕が翻訳した基本姿勢における「勝つ」というのは、この文脈でいえば、技術者における「勝ち」に近いのだろう。千春は最初から僕と見ているところがちがっていたのだ。


バキはここからなにを学ぶのか。

千春の用いたたとえを借りれば、立って見下ろしながら「敗け」を認めるものの感情は、「敗けでいい」というような放棄の姿勢とは異なったものでなければならない。なぜなら、そのときくちにされた「敗け」と内心のおもいはくいちがっているからだ。

極端にいえば、立って見下ろしながら、「あダメだ。敗けだわこれ」というふうに悟るものでなければならない。

それは肉体のダメージとは無縁の判定であり、両者が同じ考えでぶつかっているとすれば、これは闘志の大きさの比べあいだ。

千春の勝負論は内心でツイートされたものだが、明らかにじぶんのほうが強く、「勝ち」目なんかぜんぜんないのにいつまでもついてくる千春を見て、バキもなにかを感じとったことだろう。このひとはじぶんとはちがう文脈で「勝負」を見ていると。


これがどういうふうに勇次郎戦につながっていくのかということは正直いってまだわからないが、もし「勝てる勝てないは問題ではない」という命題が、千春の文脈における「勝負論」の技術者の領域へ写像された結果だとすれば、技術者のバキは、外国語を学ぶようにして「勝てる勝てないは問題ではない」を千春流に翻訳したものを受け取り、フィジカルにかみ締めるにちがいない。そしてそれは、いまのバキにもっとも欠けている要素だろう。




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