第214話/トレンディーくん⑥
あやしい探偵につけられているとも知らず、鈴木斗馬と今井万里子は今日もデートだ。
万里子は化粧品の会社の社長で、みずから広告塔になって雑誌に出たりしている。対して斗馬は外資系の経営コンサルタントの会社勤めだという。聞くからにランクの高いふたりだ。
探偵のカメラがねらうさき、ふたりは白昼キスまでかます。そしてその気になったふたりはラブホにむかい、たぶん二度目の関係をもつ。だが前回より「ひとつに溶け合っている」というのが斗馬の感想だ。
別れ際、斗馬が結婚について訊ねる。万里子は二回離婚し、もうするつもりはないらしい。「お互いが理解し合って向上し合う関係が続かないから」だそうだ。
「私は一途よ。
女を知り尽くすなら、
一人の女ととことん向き合いなさい。斗馬くん」
いっぱいのおっぱいを求める、観念的な「男」を代表する斗馬とは、相容れない考え方だ。
しかし斗馬はそこで万里子とのあいだに壁を設けたりはしない。この関係のはじまりとなった賭けをした瀬野に下品な言われ方をされ、斗馬は少し怒ってみせるのだった。「愛に目覚めた」らしい。ちなみに瀬野くんも50女とのソレに成功したらしい。
万里子と遊んだ帰りの斗馬に、ついに探偵が接触する。探偵は奥さんから依頼されたことを告げ、証拠写真を提示する。そして口止め料として40万を要求し、斗馬はふたたび丑嶋のお世話になるのだった。ちなみに、丑嶋と高田は例のテルミのところにとりたてにきている。高田はチョコみたいなものを手にもって、ふたりのやんちゃな子どもに与えている。理由はわからないが、高田と丑嶋がそろうといつもそういう感じだ。
口止め料をもらった探偵は奥さんにウソの報告をする。だが、ここで引き下がるわけではない。四日じゃ足を出さないと言い出し、もう少し調査をしないかともちかけるのだった。
たまには夫婦生活をするのも円満の秘訣と考えた斗馬は、奥さんを口説いて横になるのだが、妻・君枝はすぐになにかを感じとる。なんかちがうと。決定的なことに、斗馬は万里子の「ポイント」だった鼻をつまんでしまう。そうして、やはり妻は夫の浮気を確信するのだった。
つづく。
斗馬と君枝は長い間夫婦生活がなかった。
斗馬には理絵という浮気相手もいる。
理絵との関係と君枝との以前の関係が重なっていた時期があったのかどうかは不明だが、いずれにしても、奥さんの日常的な疑惑は、たぶん理絵との関係における斗馬に向けられたものだったはずだ。
今回は斗馬の、理絵から万里子への移行の時期と、奥さんが行動をおこそうと決断した時期が重なってしまったわけだ。
とはいえ、奥さんが探偵を雇おうと決めたときには、うろ覚えだが、すでに斗馬と万里子は知り合っていた。そこらへんは、まったく「女の直感」ということばで片付ける以外ないだろう。たしかに浮気の気配は、これまでもあった(理絵)。だけれども、奥さんにはそのようなデジタルな段階は感じられないだろうが、無意識にでも行動をおこさせる決定的なにかが旦那の身に起こったということを、君枝は感じ取っていたのだ。
斗馬のセックスの描写は、上下がさかさまなだけで、細部をのぞけばほとんど同じだ。
つまり、斗馬は、肉体的には君枝と関係をもちながら、一種の空洞のようなものとしてこれをあつかい、記憶を再体験するようにして、精神的には万里子とつながっている。だから、うっかり鼻をつまんでしまった。けっきょくのところ、こうした行為とは、唯物的なものではありえない。ただたんに、備えられた物体を用いて「イン・アウト」していれば定義として「セックス」と呼べるとか、そういう次元のものではない。万里子とのあいだに感じた「溶け合い」が、それを示す。だが、いっぱいのおっぱいを求める斗馬が定義するところの「男」、あるいは、「一途」な万里子と理解し合って向上し合えない「男」たちは、セックスを唯物的なものととらえている。愛は物体ではないという意味でも、それに目覚めたらしい斗馬はそこから離れてゆくにちがいない。もしほんとに「男」がそうなれるなら、両者はわかりあうことができるだろう。
だけれど問題なのは、斗馬が既婚者だということだ・・・。万里子は愛を教えたかもしれないが、それは斗馬にとっては万里子じしんに向けられているものだろう。これが、新婚時代の感覚を取り戻し、奥さんに向けられるということはあるのだろうか・・・。
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