第146話/反射神経
ジャックに耳を食いちぎられて怒り心頭のピクルは、不倶戴天、これまで見せたことのなかった闘争法(うごき)をつかって、ジャックの攻撃をかわしていった。観戦しているバキたちからは事態が明らかなようだが、攻撃しているジャックはなにが起こったかわからない。いったいなにが?
ピクルのまわりに舞っていた砂埃が落ち着くと、ジャックは不可解なものを発見した。ピクルの背後10メートルほどのところにある壁が、ばらばらに壊れているのだ。瞬間的にジャックはすべてを理解した。みずからの最強最速の技は、たしかにピクルをとらえ、反応することすらできなかったはずと、ジャックは考えていた。だから状況がすぐに理解できなかったのだ。それどころかピクルは、じゅうぶんな余力をのこして後方に飛びのき、着地した壁を破壊しつつバネとして、悠々ともとの場所に飛びもどったのである。それほどの大きな動きを、ジャックは二度の攻撃で見逃してしまったのだ。
ジャックはどこかで耳にした「実践空手の父」、極真会館総裁の大山倍達の箴言を思い出していた。
(仮に…
人類(ひと)と猫が檻の中で闘ったなら…
ヒトは日本刀を持って初めて対等と言えるだろう)
爪や牙などの武器もそうだが、特に運動神経とスピードにおいて、人類は大きく猫を下回る。その差は刀でも持たなきゃ埋まらないと。もちろん、総裁のいうのは、数量的な戦闘力のことだろう。ファイトは数字ではない。猫の爪や牙で人間がその場で絶命することはまずないが、こちらが握りつぶすことはできるだろう。ヤムチャがナッパに勝つこともある(ないか?)。
しかし猫が最強の生き物かもってのは僕も冗談まじりによくおもっていた…。精神的にも、また社会的にも。
(そういうことなのだ…)
ジャックはじぶんで思い出したこの比喩ですべてを納得する。丸腰のピクルがあの時代を生き抜くために、恐竜が人類なら、ピクルは猫だったはずなのだ。恐竜たちではとてもおいつけないような速度で動いていたはずなのだ。
さらにジャックはかんがえをすすめる。
(そういうことなのだ…
ピクル(こいつ)と闘うということは――
恐龍達(やつら)に全勝するということなのだ……ッッ)
(神さま…………
初めて貴方にお懇願(ねが)いいたします
どうか…………
どうかわたしに勝―――)
ジャックの懇願がピクルの強力なアッパーで中断される。どうなる?!!
つづく。
ピクルの、「あの時代での」闘争法とは、ものっすごいスピードでうしろに飛びのくことだった。ただよけるだけなら、壁は必要ない。おそらくこれは、同じくらいの速度ですぐさま戻ってきていることに意味がある。しかし白亜紀にはもちろん壁などというものはなく、ピクルが足場としてつかえそうなものは樹木や岩しかない。まあばあいによっては崖とかもあるかもしれないが、それはかなり逼迫した戦況であるとおもわれるので、ピクルにはなさそうな気がする。そしてピクルは、ある意味ではその運動神経でもって、垂直に立った岩や樹木をも足場として、きわめて立体的な攻撃を可能として、サイズの差を補っていたのかもしれない。正直今週のこの「こたえ」を読んだときは「うそぉ~ん」って感じだったけど、こう考えるとピクルの戦法は必然のような気がしてくる。というわけで、僕はスピードうんぬんより(もちろんスピードがなくては成り立たないわけだが)、壁を足場につかってとびまわるというところに関心をもちました。
ところで、今週のラストではジャックが神様に勝利を懇願している。正直ジャックのこんなところみたくなかったし、まったく目をおおいたくなるような場面であるが、妙に唐突な印象を受ける。どっから神様出てきたの?って感じだ。僕はすぐ、いつかの勇次郎と独歩の会談における「天上の誰か」という発言を思い出した。明らかにキャラクターたちは、物語を、世界を操作するなにものかの存在を感じ取っている。それはまあ、板垣恵介なのだけど、その根拠は、あまりに強すぎる、ピクルという存在の理不尽だろう。勝利を懇願するということは、ジャックは勝ち負けを支配する作為のようなものを感知し、そのさじ加減ひとつでじぶんが負けることもありうるということを、人生でおそらくははじめて知ったのではないかとおもえてくる。特に範馬ファミリーの長男であって、ちからでほとんどのわがままを通すことのできるこの男が「神」にたよるというのがいったいどれほどのことか、考えてみればいい。範馬刃牙ワールド最強の男は、板垣恵介である。
というのは冗談としても、ジャックが神頼みするなんて、花山が筋トレはじめるくらいありえないので、そんな考えだって浮かんでくるのである。ジャックにはもう引き出しはないのだろうか?ゲロは吐いてないけど…。あれはあのときだけの特別なものだろうなぁ。背中に鬼出ないかな。
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