第142話/最強打撃(ベストパンチ)
~前回までのあらすじ~
ジャックが唇を奪われました。
とんでもない激痛だろう。出血はそんなでもないが、鼻から下の皮膚がぜんぶそげて筋肉が露出しているのだ。風が吹くだけでもそうとうイタイ。
地面に尻をつけているジャックの背後で、ピクルがなんでもないような涼しい表情でお肉を嚥下する。だからピクルからジャックの表情は見えない。しかし感じ取ったのだ。光成が代弁する。
(笑っとるッッ
確かに笑っとるッッ
顔を剥ぎ取られてもなお……ッッ
顔を喰われてもなお……ッッ
まるで諦めちゃいないッッッ)
ジャックが凄まじき笑みを浮かべている。勇次郎のように周囲の空間がゆがんでいる。もちろん表情を見ずとも、ピクルがそれを感じ取らないわけがない。再び口を広げジャックにおそいかかる。
だがそれよりもはやく、ロケットの勢いで座っていたその場を発射したジャックが全身のバネをフルに活用したあのアッパーを決める。200キロを超えるピクルの巨体が宙に浮かぶ。光成もすっかり感情移入して観ている。あれれ?ピクルって130キロとかじゃなかったっけ?
はっきりいってこんな描きかたができるのは板垣恵介だけだ。鳥肌のたつような、ジャックの渾身の一撃である。ジャックが地面を発射してからの4コマはほんの一瞬の出来事で、ピクルはほとんど移動していないし、反応もできていない。パンチがくる、と、反射的にからだにちからを入れることすら間に合わなかったろう。
だが、衝撃を受けていたのはパンチを放ったジャックのほうだった。あのジャック・ハンマーが冷や汗をかいている。よくない兆候だ。
ジャックのよくない直観は、ピクルがまだ宙に浮かんだまま地面に触れてすらいないきわめてはやい段階…、というか技を放った直後におとずれたものだった。つまり、ほとんど打った瞬間に気づいたのだ。感触がおかしい、と。
(まるで…
顎その物の重量(おも)さが200キロであるかのような…ッッ
つまり…ッッ
筋肉…
骨格…
呼吸…
全機能を全(フル)参加させた
最強打撃(ベストパンチ)を放ちながら…
ピクルの頭部を揺らすことはできなかった…ッッッ
奴の脳は微動だにしていない…!!!)
ジャック同様ショックの大きい様子の光成の背後に例の博士が(僕のなかではいまだにペインなのかベインなのかはっきりしない)。
博士は光成の来る前から観戦していたようだ。
ピクルが、みずからの最大出力を示すあの構えをとる。全力を出す気なのだ。しかしそれは、逆にいえば、ジャックはたった2発のパンチでピクルから全力を引き出したということでもある。そして、ジャックにはまだ引き出しがあった。
「きた」
ジャックの表情が不気味に変化する。マックシングだ!!いったいどうなってしまうのか?!
つづく。
うーむ、とんでもないことになってきたな。
僕はコミックスをぜんぶもっているわけではありません。なので、正直いってうろ覚えなのですが、マックシングってあれですよね、薬を飲み込んだときにおこる現象でしたっけ?それともバキ戦でゲロ吐いたあとのダイヤモンド状態のことをいうんでしたっけ?そのへんもどかしいのですが、まあいずれにせよ、出番も減って飯食ってる場面の登場ばかりで、昔のノーフューチャーな感じはすっかりなくなったようにおもっていましたが、変わらずクスリはやってたってことでいいのだろうか。「きた」というからには待っていたのだろう。ほら、ちょうど鴉と戦っていたときの蔵馬みたいに。
今回のファイトについて、そう長くは続かず、中断されるんじゃないかと書いてきましたが、これは撤回せざるを得ないようですね。後半部分を。というのは、これもまた、物語としての、ジャックというキャラクターとしての必然なのかもしれないとおもえてきたからです。どういうことかというと、たとえば、空手家であるとともに神心会館長でもあった克巳では、ただ闘いたいという純粋な闘争衝動のほかに、さまざまな要素がからみあって、あのたたかいと、そしてあの爆発的成長を導いていた。烈にしても、ファイト中の葛藤はもちろん、やや先走ってしまった感じなど含め、たたかいのぜんたいがきわめて彼ららしいわけです。ではジャックをどうたたかわせたらいいかっていうと、これはまあ今週ぶんを読み終えての感想なわけですけど、なんというかこのきわめて無茶な感じが、まったく彼らしいとおもえるんですよね。いきなりはじまっていきなり終わるというのが。まあそういった物語の操作は、神の仕事…板垣恵介の作為なわけですが、僕は今週を読んでなにかこの流れに必然性を感じたのでした。
今週合併号だから来週はやすみかあ。寸止めだな~
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