- 昨日のぶんで読みかけの本はあらかたなくなりました(じっさいにはまだまだたくさんあるのだけど、古いものまで持ち出したらキリないし、まあいちおう)。
今年は三木卓の『ボディ・シャンプー』からはじまり、中根千枝『タテ社会の人間関係』まで、ぜんぶで61冊の本を読みました。
うちわけは、当ブログの分類にしたがうと、日本の小説が19冊、外国文学が6冊、洋書(英語)2冊、エンターテイメント(ていうか乙一×ジョジョ)1冊、詩集7冊、文芸批評5冊、哲学・思想3冊、バルト、折口信夫など含めた言語学が4冊、フロイトや梅田望夫など11冊、対談3冊。分類はこのように恣意的なわけですけど、まあ便宜的なものだし、管理人が記事検索をするとき以外は誰も利用しないとおもうので、まあ今後もこんな感じで、いくとおもいます。だから、なぜフロイトやバルトは哲学でないのだとか、なぜ乙一を日本文学に入れないのだとかいわれても、それはじぶんでもよくわかりません。
去年に比べると実感としては停滞感の強い一年だったが、こうして振り返ってみると、あくまで「一年」というくくりにこだわったらということだが、そうでもないのかなともおもう。今年キーとなったひとたちは、継続して読まれているかたはわかるとおもいますが、フロイト、内田樹、梅田望夫、平野啓一郎、そして小島信夫といったあたりでしょうか。
フロイトには、なんというか、ほんとうにお世話になった。このひとを援用して拙い書評を展開したこともしばしばあったし…。とにかくいろいろ考えさせられた。というのは、そういった視点もあるのかもしれないという慎重な思考の基本姿勢を、僕はまちがいなくこのひとのものを読んで、またこのひとについて考えることでそうとうに鍛えることになったからだ。
・『人はなぜ戦争をするのか』フロイト
http://ameblo.jp/tsucchini/entry-10145761937.html
- 幻想の未来/文化への不満 (光文社古典新訳文庫)/ジークムント フロイト
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- 人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫)/フロイト
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それにしても、最初にフロイトの『幻想の未来/文化への不満』を読み終えたのも今年に入ってからだったんだな~。もうずっとむかしのことのような感じがする。ていうかはじめて「サイレント・ヒル」観たのも今年なのか…。
内田樹も印象に残っているな~。読んだのは『私家版・ユダヤ文化論』、『街場の現代思想』、『寝ながら学べる構造主義』の三冊ですが、どれも抜群におもしろく、細かいことぬきで他人にすすめたい書籍だった。豊饒な語彙と、スリリングで知的な話法、とにかく相手を納得させてしまうような強い説得力を帯びた論理…。とにかく平均点の高い(それも最高位)文筆家であります。このバランス感覚は、このひとじしんを認めるか否かはおいておいたとしても、プロも含めた文章にたずさわるにんげんすべてがみならうべきであるとおもいます。大衆が大衆作品を読み、プロがプロの書いたものを読む…、現在のそのような状況がいかに危険で、畸形的で、負の共感を誘うものであるか、よく考えさせられたし、内田樹じしんがそうおもっているかはともかくとしても、このひとのしていることがある種の「お手本」であることはまちがいないとおもう。
- 私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)/内田 樹
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- 街場の現代思想 (文春文庫)/内田 樹
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- 寝ながら学べる構造主義 (文春新書)/内田 樹
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ちなみにこのひとはブログも抜群におもしろいです。毎日ではありませんが僕も時々チェックして、そのたびにため息をついております。
・内田樹の研究室
梅田望夫は、なにしろ視野が広がり、じぶんのやってきたことがまちがいではなかったのかもしれないということをおもわせてくれましたね。僕はきわめてあなろぐな人間なので、べつにネット時代の到来を喜んでいるということはないのですが、言っている意味はわかったし、昂揚感も共感を伴って理解できた。また、ブログという方法について僕が日常おもっていたこともこのひとがほとんど代弁してくれて、じつに気持ちが良かった。あんまりブログに熱中しすぎるといまだに笑われるようなところもあるのですが、自信がつきました。
- ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)/梅田 望夫
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- ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)/梅田 望夫
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- ウェブ人間論 (新潮新書)/梅田 望夫
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うえの『ウェブ人間論』で梅田望夫と対談している平野啓一郎という作家を知ったのも今年だった。といっても、小説はまだ『日蝕』と『顔のない裸体たち』の二冊だけですが。一般にこのひとは若くして『日蝕』のようなとんでもないものを書いたということもあって「天才」みたいな言い方をされることが多いようだけど、このひとは、早熟ではあっても、いわゆる「天才」とはちがうんじゃないかなーと僕はおもっている。もちろん抜群にあたまのよいひとではあるのですが…、ものごとを構造的に捉える思考習慣というか、思考システムがとても精緻にできあがっていて(それを天才というのならそうなのだけど)、じしんでもスロー・リーディングを幼いころから実践していたということもあるのか、よく本を読んでいるひとに特有の慎重さと想像力、そして論理性が、バランスよく同居していて、あとこれは個人的な直観だけど、たぶんこのひとは中途半端がいやなタイプというか、完全主義者の潔癖症みたいなぶぶんもある(気がする)ので、あのような小説が、そしてあのような小説家ができあがったんじゃないかなとおもうんですよね。想像力は豊かで思考も柔軟ながら、どこかかたくななぶぶんもときどき感じられるのだが、たぶんあの感じは、ものすごい考え抜いたひとの文章の感触なんじゃないかな。村上春樹やなんかに対する憧れとはまたべつに、もっと具体的なロール・モデルしたい人物の最右翼であります。
・『日蝕』平野啓一郎
http://ameblo.jp/tsucchini/entry-10099496872.html
- 日蝕 (新潮文庫)/平野 啓一郎
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- 顔のない裸体たち (新潮文庫)/平野 啓一郎
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- 本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)/平野 啓一郎
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最後に小島信夫か…。このひとについては、僕はまだどのような結論も出していないのですが…。小説じたいは何年か前から読んでいましたが、『アメリカン・スクール』を読んだのは今年だった。その文庫版解説や対談の『小説修業』などとあわせて、保阪和志の小島信夫論を読んできたことも、たぶん理由なんだとおもうけど、とにかく気になって気になってしかたない。ちょっと前の田中小実昌みたいな状態だ。ここでこのひとの名前を出したのは意味があって、小説修業の書評でも書いたけど、保阪和志のいう「現在進行」の臨場感は、小島信夫と田中小実昌では似たものがあったのではないかとおもうのです。来年は『抱擁家族』を読んでみたいです。
長くなったけど、まあそんなところだな。
おいおい映画とかも書きたいです。
- アメリカン・スクール (新潮文庫)/小島 信夫
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- 小説修業/小島 信夫
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