■『スターシップ・トゥルーパーズ3』
製作総指揮:ポール・バーホーベン
監督・脚本:エド・ニューマイヤー
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がまんできませんでした。ジョニー・リコ復活だ~
事あるごとに、原作であるロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』について書いてきたけど、じつをいうとこれを読んだのはもう15年くらい前で、かなり長い小説なので再読もしていないから、細かいとこはなんにも覚えていなかったりします。しかしそれでも、挿絵なんかもあったから、機動歩兵が装着するパワードスーツの印象は残っていて、この映画の第一弾で、ほとんど生身のまま豆鉄砲みたいな機関銃をつかっている兵隊を見たときは、あれ?ってなってました。今作では、僕のあたまに残るスーツがまっすぐにそれのことなのかは不明だけど、とにかくマローダーという、操縦者の神経に直結して動くガンダムみたいなスーツが出てきます。活躍する場面は少ないが、かっこよかった!
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そして、映画の雰囲気も第一弾のものがかなり戻ってきていた。くりかえしになりますが、この映画の非常におもしろい点は、淡泊さというか、映画のその内容に対する距離の置きかたにあるとおもう。構造的には、コマーシャルとか報道番組のつかいかたを見てわかるように、『ロボコップ』の、特に最初の作品によく似ている。兵隊になることで市民権を得て、社会の成員としての価値を高め、人間の尊厳を獲得しようといった、政府側のプロパガンダは、もちろんファンタジーとして極端なものとなっているが、僕らの息づく現実の社会にも通じるものだ。ここには自由意志はないし、発言した時点で彼らは処刑されてしまうし、自由に生きているつもりでも、じつはより大きなシステムのなかで役割=場所を規定され、社会内言語で語っていただけだったりする。しかし人間はどのような場所にあっても、社会のしくみのなかで生きていく以上、構造からの規定を逃れることはできず、賢いひとほど、その事実を認知受容したうえで、要領よく生きていくものだ。それは、このあいだ魯迅を読んでわかったことだけど、革命を唱え、行動をおこすものについても同じことだ。本作には平和主義者のもと軍人が出てくるが、登場するのはすべて物語内の報道番組を通してであって、結局のところこの社会で平和主義は異端であって、異端として、社会から場所を与えられるだけだ。革命運動がいつでも運動をでないのは、こんなことが理由なのかもしれない。変革思想が現在通用する社会的真理の反対命題としてあらわれてくるなら、原理的にはいつどんな状況であっても革命思想は興りうるし、いまそこになくても、社会は成立している時点で革命を内在しているというふうにもいえる。反体制という意味合いにおいては、だから革命はつねに社会の成立ありきであって、社会的言語でもって人々を扇動し、社会が規定するものだとすれば、じつはそこではなにも起こっていないことにもなってしまうのかもしれない。魯迅が子供を救えと叫び、希望を託したのは、もちろん子供たちの可能性にかけているということなのだが、それは社会的な場所をもたぬまっさらな存在以外、革命の実行が不可能だからなのではないか。
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話はどんどんそれていくが、たとえばこのあいだ極真空手の全日本について書いたとき、ナショナリズム的なありかたを脱して、空手を学ぶもののコミュニティとして世界全体をとらえ、個の成長をこそ重んじるべきだということを書いたけど、じつはこう書いた時点で、僕の言葉はすでにある(と僕が感じた)ナショナリズムを想定し、その思想の補集合、アンチテーゼとしての非ナショナリズムを示しただけにすぎなかったかもしれず、思想じたいにはそれほど意味がなかったかもしれないのだ。なぜなら、仮に僕の感じかた(現在の極真がナショナリズム的であることと、それはよくない、個人主義になるべきだということ)が正しかったとしても、だとしたら現にいまこの組織はナショナリズム的であるわけで、僕の考えは「革命的」という場所に規定されるからだ。
なんだかじぶんでもなに書いてんのかわかんなくなってきたけど、とにかくこの映画が最高におもしろいのは、システムに規定され、平和主義者ですら二元論的な悪の顔として利用することでシステムに取り入れてしまうといった社会の構造を、少し距離を置いて、なんの批評的描写なしに、ただたんに、たとえばコマーシャルを挿入することで皮肉に描出し、と同時に、システムのなかで生きる個としての登場人物やその内的葛藤、成長物語も描いているということ。彼らのたたかう姿やマローダーがクールなのは、だから一般の映画でプロフェッショナルをうつしたもの…たとえば『プラダを着た悪魔』とか『アポロ13』とかいった映画の登場人物たちのクールネスと底のぶぶんでは同じなのだ。『ロボコップ』もそうなのだ。ロボコップにふさわしい警官として選ばれ、意図的に危険な任務につかされ、つまり死を待たれ、改造されて不格好な鉄の肌をまとい、妻や子供とも別れてしまう…、これじたいは悲劇以外のなにものでもないが、しかしその鉄の肌でもって銃弾をはねかえし、悪人をボッコにするさまは、げんにあのようにクールでかっこいいわけである。そしてこの『スターシップ・トゥルーパーズ』は、うえに書いたように『ロボコップ』からさらに批評的描写を除いたようなものなのだ。
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そして、今回は信仰とか宗教とかいうこともキーワードとなっていた。連邦側としてはコンバージョンのおそれがあるために宗教は禁止したいところだが、結果としてはそれすらもあのように取り込んでしまった。そしてやはりそういったことについてもなんの批評的付加がないわけで、この映画、特に1と3はやっぱりおもしろいなーとおもった。
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