■『12モンキーズ』
監督:テリー・ギリアム
出演:ブルース・ウィルス、ブラット・ピット、マデリーン・ストウ
1995年 アメリカ
- 12モンキーズ パーフェクトコレクション
- ¥4,441
この映画についてはじつは一年以上前、すでに書いたことがあるのですが、再び投げかけてみたいとおもいます。
物語は近未来の地球。強力な病原箘の蔓延で人類の99パーセントが死滅し、残されたものたちは汚染の及んでいない地下世界での生活を余儀なくされている。知識階層の科学者たちは、ウイルスを撒いたとされる「12モンキーズ」という団体を調査し、病原箘の発端をつきとめるためにブルース・ウィルス演じるジェームズ・コールという囚人を減刑と引き換えにタイムマシンで過去へと送る。
僕が書きたいのは最後の最後…結末の解釈です。これが、僕には二通り考えられたのです。以下ネタバレあり。
それはコールの追跡を逃げ切った犯人が飛行機に乗り込んだあと。座席についた犯人の横には、未来でコールに指示を与えていた科学者のうちのひとりの女が座っていて、犯人と短い会話を交わします。これが、どう読みとればよいのかよくわからないのです。つまり、この女がウイルスが撒かれる以前のこの「現在」を生きるものなのか、あるいは未来からやってきたものなのかと。この解釈で映画の見えかたはずいぶん変わってしまう。
①「現在」のものなら→この女が将来必死こいて探すことになる犯人は、すぐ横にいたのだという皮肉の表現。
②「未来」のものなら→ジェームズ・コールは捨て石として利用されていたに過ぎず、彼が犯人を見つけたために、空港にいた、刑務所でコールと同室だったスパイや監視が真実を持ち帰り、全体として次の計画に進んだのだとするもの。
こうなるとおもうんですが。この「女」が、意図的な配役なのか、年齢不詳もいいところの、若いときから老けてるというタイプのひとなので、見た目ではいまいち判断がつかない。展開としてもどちらもありえる気がする。①のように、コールの働きは結局徒労に過ぎず、無駄な死に終わったという皮肉な結末はいかにもありそうだし、しかし②もじゅうぶんに考えられる。というか、ふつうに考えたらこっちがこたえだろう。でないと、空港にいたスパイたちはなにしてたのかってはなしだし、あの科学者たちが犯人の正体を見落とすわけがない。
しかし…コールは夜な夜な、空港で人が殺される夢を見ていた。これは、家族とたまたま同じ空港にやってきていた「現在」を生きる少年時代の彼が、未来の自分が射殺される場面を目撃していたからだ。ということは、『病気が蔓延し、コールが地下刑務所に収監される歴史の、その過去でも、(未来からやってきた)彼は犯人を見つけていた』ことになる。犯人がわかったからこそコールはあそこでダッシュし、結果撃ち殺されたのだから。そうなると①ではないかという疑いが…。
ここまでが以前の記事の考察でしたが、もう少し考えると、「いずれにせよ病原箘の蔓延は不可避」という結論が見えてくる。コールの夢がそれを示す。ウイルスに汚染された世界で、常に彼は、未来のじぶんが、犯人を発見し、射殺されたという歴史を目撃した過去の記憶を抱いていることになるのだから。未来はどうあがいても変えられないということだ。つまり、「印象」としてはともかく、物語としてはあの「女」がどちらだろうと関係ないのだ。どちらにしても人類の滅亡は避けられないということなのだから。
そうなると、驚くべきことに、この物語は最初からどこにも進んでいないことになる。おはなしは未来から出発し、いかに人類滅亡を回避するかということが描かれているが、じつは、僕らが見てきたものは滅亡回避の過程ではなく、まさに滅亡の過程だったのである。コールのタイムトラベルも、ライリー博士との調査やゴインズとの出会いも、また犯人発見も、ここではすべて、すでに歴史の物語に含まれている一事にすぎない。より次元の高い段階にすすむタイムトラベルという方法を用いながら、科学者たち含め、誰ひとりとして「物語」の外に出た者はいないのである。
と、書いてはみたけど、前回同様うろ覚えのまま書いてるから、見落としあるかも。でもこの、ただ滅亡のシナリオをコールの視点で世界が読み返しただけ、という虚無的な物語のありかたをおもえば、コールの妄想とおもわれる「奇妙な声」の意味も氷解する気がする…。
…近いうちDVD借りてみないとだめだな。
■追記
いや、そうではないのか…。科学者たちの目的は「未来を変えること」ではなく、ウィルスの正体をつきとめ、抗体を得ることだったか…。であるとすれば、とにかく生のウィルスの手に入れることが第一だったのかもしれない。もし②だとすれば、これはうまくいくのかもしれない。ウィルスを未来に持ち帰ればいいのだから。そうすれば、過去に変化を加えることで、波状効果で未来を変えることはできないとしても、未来の地点から新しく世界を構築していくことはできる。
とすればどうだろう。コールじしんの夢から、彼が空港で撃たれるのは避けられないということがわかるが、同様にしてウイルス蔓延も避けられない。ここでは、SF映画によくあるように、過去のなにかをいじって未来が大きく変わってしまうという現象はありうるのだろうか。どうしても「地下刑務所で犯人を発見しているじぶんの夢を見る」ということと矛盾してしまう気がする。並行世界ということを考えれば、未来のコールが犯人を発見したことで、たとえばあの女やスパイがウイルスを手に入れるついでに犯人を殺すなりして、その時間軸における滅亡を回避するということはあるかもしれない。パラレル・ワールドということを持ち出せばきりがないし、微妙なことでたくさんの未来が生まれてしまうのだけど…。しかし、コールの「夢」は、たんに犯人発見という事実だけではなく、それにより必然的にもたらされる(であろう)未来人たちのさまざまな行動も、いちおう含んでいる。しかるに、世界は破滅する。どの世界でも、未来の科学者たちからすれば、ウイルスを持ち帰れさえすればそれでいいということなのか。とにかく、映画にうつされた最初の未来の世界へと続く過去の歴史がそういうものである以上(つまり犯人が発見されながらウイルスが蔓延している以上)、どの並行世界においても(もちろんコールのいった過去においても)そうであると考えたほうが自然なようにおもう。やはりこの人類滅亡という事実は、事後的変更不可能な一筋の物語と読んだほうがよさそうだ。もし過去にもどってなにか手を加えても、未来はそれじたいも含んだ物語の結果としてすでに広がっているのだ。治療薬かなにかを研究するためにあの女がどうにかして犯人からウイルスの一部を奪ったとしても、やはり世界は破滅する。ひとびとが地下で生活するあの世界の過去でも、未来の女は犯人と接触し、ウイルスを手に入れていたのだ。
そして仮に②だとすると、少し過去に戻って飛行機のチケットをとらなくてはならないので、スパイたちはその情報をもって一旦帰還したとおもわれる。過去から未来への連絡方法は、たしかどこかの留守電に伝言を残して未来でそれを聞く…みたいな感じだったように記憶している。しかし彼らはこれをつかっていない。なぜなら、過去からの未来の結果の修正は不可能なので、伝言を残していればコールの出発前から科学者たちは真実を知っているはずだからだ。としたら、スパイのうちの何人かは「二回目」にきたものたちということもありえるかもしれない。そういえばコールに話しかけたおとこは変装をしていたような…。一度目にきたじぶんに見られないためだったりして…。
…。
だめだ、うろ覚えではこれが限界だ…!コールと同室の男が空港で彼になんと言ったのだったか、銃を渡したのがどのタイミングだったかどうしても思い出せない。そのうち見て、新しく書くか、これを書き直して再掲します。あんまり考えすぎてへんな方向にいってしまいそうだし…。中途半端ですいません。