第129話/体重差
音速を超え、空気の壁を破り、おのれの拳足を破壊してしまうほどの速度に達した克巳の技も、ピクルには通用しないのか?うつぶせに倒れていたピクルが笑みすら浮かべながら立ち上がる。見たところ出血や打撲傷もない。膝をつく克巳を黄金の輝きをはなつピクルの筋肉が照らす。
(残念なことに…
克巳さんがここまでやったこと
何一つ間違えちゃいない
当たり前のことが当たり前に起こっている
ただそれだけ…)
おもうバキのかたわらで博士が説く。たしかに君達格闘家は強い。しかしピクルのライバル、恐竜たちの、その重量を考えてみよと。30トンにも及ぶスーパーサウルス、またこれすらも捕食していたティラノサウルス、これらをボクシングでは何級に分類すればいいのか。そしてそのような重さの攻撃を受けてきたであろうピクル。0.1トンの克巳の威力がこれら超重量の恐竜たちの攻撃を上回ることがあるだろうかと。
この理屈は少しおかしい。ピクルって何キロだったかな。130だったっけ?いずれにせよ、恐竜の体重に比べれば克巳同様ごく小さな大きさだ。これが、恐竜には勝利している。つまり、ピクルという特別性をとりあえず置いておいたとすれば、100キロ程度の物体が数十トンを制することが理論的には可能ということになる。この物語では。ここまで克巳は天才を見せているのだ、克巳にこの理論があてはまると考えたってそんなに無謀じゃない。もちろん博士はここで克巳対恐竜のはなしをしているわけではなく、少なくとも恐竜の破壊力を超えなくてはピクルを倒せないということで、次回克巳がそれを成し遂げる伏線ともとれるし、ファイトとはさまざまな要素が複雑に理不尽にからみあって結果を出すものだからひとくくりには言えないのだが、なんにしてもピクルが恐竜を倒している以上、いまさら体重差を持ち出すのはナンセンスな気がする。ピクルが数十トンあるってのならともかく。
ピクル編から登場しはじめたこの博士という存在は、新規読者も含めた、たぶん僕たち読み手側の〈良識〉を代弁する役割をもっているんだろう。おおむかしから原始人が蘇る、なんて、「リアリティ」ということばからは程遠いわけだけど、そもそもリアリティとは、仮構にすぎない、世界を模型とした物語のなかに、その世界なりのいきいきとした機構がいかに描かれているか、ということにあらわれるとおもう。ジョジョの物語が孕むリアリティがまさにそのいい例だ。そしてピクルという突飛すぎる新しい存在を保護し、おはなしの暴走を回復するために、対照の位置にある、いわば「常識人」的存在がどうしても必要なのだろう。
…ピクルが陸上競技のクラウチング・スタートのようなあの構えを見せる。烈を仕留めた、おそらくはピクルの技(?)のなかでは最大の威力をもつロケット・ダッシュだ。
痛みに耐えているのか、苦しい様子の克巳は、緊迫した表情で見守る末堂をはじめとした門下生、烈、郭、そしてバキたちを、意外なことに少し笑みをもらしながら見回す。
(心配するな………ッッ
俺はまだ使用(つか)っちゃいない!
俺だけが掴んだ―――
俺だけのマッハッ)
なんとカツミがいきかえった!
なかまになりたそうにこちらをみている。なかまにしてあげますか?
驚いたことに切り札がまだ残されていたようだ。しかもそれは両手と左足が壊れているこの状態でもどうやらつかえるようだ。ゆる~~~…ゆる…ゆる…という奇妙な擬音を呈しながら、克巳がゆらりと立ち上がる。たんなる脱力ということともなにかちがう。どこかウナギ的だ。あるいは花中島流秘技ネコジャラシ的だ。たぶんヒントはこの立ち姿にある。
まだ先があるのかっと驚いてみせる郭のメガネがなぜかひとりでに割れる。普段は脱力した状態でメガネを注文するが、興奮のあまり力んでしまって顔が膨脹し、ふつうよりじょうぶにつくられているぶんちょっとフレームが歪んだだけで砕けちゃったか、あるいはすでに発動してる真克巳のスーパーサイヤ的オーラが砕いたのか。とりあえず意味がわからない。このコマの意味わかるかたいたら教えてください。
「来いやァ…
親友…」
ピクルが飛び出す!恐竜すらも一撃で仕留めてきたであろう体当たりだ。まともに喰らえば気絶は免れまい。いったいどうなってしまうのか!?克巳はピクルの仲間になるのかっ!??
つづく。
突撃してくるピクルの正面で直立する克巳だが、最後のコマでは右手…というよりは肩のあたりから先が消失している。道場で真マッハに開眼した際、右手の感触がどうとか言っていたが、ついにそのこたえがわかるっぽい。負傷しても可能なこと…それも彼の口ぶりからは、威力や速さもそうだが、かつてないオリジナリティを予感させる。それこそソニックブーム的な飛び道具だろうか?このマンガもついに気功とかそっち系いっちゃうか?
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