今週の闇金ウシジマくん/第133話 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第133話/出会いカフェくん⑪



巧妙な作戦で美來はJPからアキトと冬美の監禁場所を聞き出すことに成功した。ミコは部屋を出てこれを助けに行こうとするが、マスクのニューリッチたちがそれを止める。反則である、賭けを無効にするか条件を付け加えるかしろと。


からだの自由を奪われ、瞼も固定されて陽がさしこめば失明という状況ながら、JPはまだ賭けの続行を希望している。そこでミコはKが行くならどうかと提案する。


Kが賭けの内容や彼等のことを話したりしたら賭けは無効ということで、いちおう許可がでる。そしてさらに、賭けるモノが追加される。



「罪だ!!


このナイフでJPの両目を潰せ!!


この部屋に光が射したら…


キミの手で潰せ!!」



Kが彼等のボディガード(外国人かな?)を監視役として連れて出発する。Kはミコたちをここに連れてきたが、勝負には無関係なはずである。アキトがいるのもたぶん立川だし、タクシーで行くとはいえ決して近くではない。なかなかいいやつだな…


待ち時間のあいだ、JPとミコはいままであまりなかった、けっこう具体的なはなしをしている。実家の経済力じゃ大学なんて無理なのに、先生に言われるままなんとなく流されて普通校に通っていたとミコは語る。今回のコレだってなんとなく状況に身を任せてきた感じだ。卒業後ふらふらしてたのも、やばくなったらキャバやればいいかぐらいだった。だらしない母親みたいにはなりたくないとおもっていたと。…母親についてのこのコメントは、前のセリフとどうつながるのだろう?母親みたいになりたくないから流されるままになっていたということだろうか、それともこのあいだには「だけど」が省略されているのか。

いずれにしても、流されるだけではなにも手に入らないし成長(の実感)もない。そこには意志がないからだ。あるのは停滞だ。若さがぎりぎりこれを停滞させるのだ。母親みたいにはなりたくないとおもいながらも、ミコは特になにもしてこなかった。部屋の主は全員おかしなマスクをつけ、元カレは拘束され、3000万という途方もない額を賭けて勝負するこの異様な空間に流されるままにたどりついたことで、ミコはこれまでのじぶんの怠惰をはっきりと自覚したのかもしれない。


彼等がふたりの関係を訊ねる。いいタイミングで訊いてくれたな。そういうはなしをずっと聞きたかったよ。JPは中学の元カレだとミコは応える。地元で有名な不良だったJPに中学生らしく憧れたのだと、ミコは素直にいう。別れた理由を、ちょっとモテるからって女の子にだらしなかったとミコは言うが、JPは「アキトに気が移ったんだろ?」と言う。ミコははっきりとは応えない。


「だからよ…


アキトが美來の前で裸になれねーよーにしてやった!!


見たコトねーだろ!?

あいつの背中爆笑ものだぜ!!」


例の、焼肉定食のキズのことだ。ミコのこの表情は…?うーむ。



Kがコンテナの置かれた広場に到着した。彼等の指示通り携帯で実況しながら扉を開ける。う〇こくさい箱のなかでは、あまりの暑さと渇きでふたりとも半裸になって倒れている。冬美はほとんど昼寝中のセイウチみたいだ。Kが大慌てでアキトに駆け寄ると、冬美が起き上がってものっすごい元気にKを罵倒し、水を要求する。やはり隠していたカフェオレはアキトが気絶してからじぶんひとりで飲んだようだ。同様に空のミネラルウォーターのペットボトルも転がっているが、なかに入れたふーみんの小便はアキトが飲んだんだろうか…。なんという災難だろうな。


アキトは熱中症で意識がない。実況を聞きながらミコは救急車を呼んでくれとKにたのむ。だがとにかく、JPが失明するまでにメールの返事をもらって20万をゲットしなくてはならない。JPはアキトを起こせというが、ミコは冬美がいるという。冬美のことをまったく信用していないJPにミコは本名で呼びかける。


「純平…
運命を受け入れて!!


私も純平と一緒に受け入れるから…


純平がアキトにしたコト。冬美にしたコト。


巡り巡ってきたのよ。


私は…

流されてきた結果が巡ってきたの。


冬美とは夜の街で約束したの。

出会いカフェはどんな客が来るか分からない怖い所…


なにかあった時は二人で助け合う約束したの…」



…わからないな。ミコが言う「運命」ってなんのことだろう?ミコは運命とやらを打破しようとせずなされるがままに生きてきたことで、いまの状況にあるのではないだろうか?あがいてはいけない、母親のようになってしまうかもしれないしならないかもしれない、とにかくやってくる現実を、それがどんなものであれ受けとめようという決断なのか…。


…あるいは、流されるままに生きてきてあらわれた状況なのだから、この結果も流されるままに受け入れる以外にない、という決意の意味だろうか。流されてこうなってしまった以上、同様に流されることでツケを払う以外にないのだと…。これならわかるな。つまりミコは、いまこの瞬間の選択と決断についてのみ語っているのだろう。


それでも冬美のことをまったく信用できないJPだが、携帯が鳴る。冬美からのOKメールだ。ミコいわく、冬美は性格が悪いわけではなく、損得でしか考えないだけなのだと。妊娠のリスクはげんに売春をしているふーみんのほうが高い。ここでミコに貸しをつくっておいたほうが冬美には都合がいい…ということかな?


とりあえず、賭けはミコの勝ちだ。アキトを一刻もはやく病院に連れていかねばならないのだが、彼等は救急車を呼んだら勝負は無効と言う。条件もルールもあいまいに、彼等に言われるがまま勝負にのったからこうなるのだ。それはミコもわかっているようだ。この異空間でミコは明らかに成長した。ミコは早く救急車呼んでとKにたのむ。すると、面倒はゴメンだという“彼等”は、JPの手錠のカギを渡して部屋を去ってしまう。

勝負はおしまい。はやくほどけと言うJPのかたわらに、生殺与奪の権を握るミコが立ち、今後のことを訊ねる。アキトにこれ以上ちょっかい出す気ならじぶんもこのまま帰る、それに警察に密告したのもじぶんたちではないと。

それは、JPもじつはわかっていた。嫉妬から因縁をつけていただけだったのだ。

解放されたJPはミコに背を向け、ナイフを片手に彼等が消えたドアの前に立つ。好き放題やってくれた借りを返しにいくつもりなのだ。JPは背中でミコに感謝のことばを口にし、マスクを捨ててどこかに行ってしまった彼等のあとを追うのだった。



つづく。



…なんか来週で終わってしまいそうな流れですね。

異様な空間での勝負を経て、ミコは明らかに成長した。JPにも変化が感じられる。それはどのようなものか?ミコのことばにJPはなにを感じたのだろう?

JPにおいては、ミコのように流されたとか流されないとかいうことより、人間不信…と書くとまた微妙に意味がずれてしまうが、とにかく他者を拒否した唯我独尊的ありかたが基本だったようにおもう。そしてそれは、もしかするとミコとアキトの親密な、兄弟とも恋人ともつかぬ関係への嫉妬からきていたのかもしれない。そして今回、ミコの誠実さ、どこまでも友人を信じ切ったありかたに触れ(でなければこの勝負は成立し得なかった)、目を覚ましたか。

彼等を追っていくJPの行動は以前と変わらぬようだが、破滅に向かう一種自殺の変形と見ていいのかもしれない。


来週どうなるかなぁ。サラリーマンくんのときは最終話予告が一個前にあったけど、今週はまだないな…。


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