楽譜、はじめてました。 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

今日はジャコ・パストリアス関連の書籍でも(画像か下のタイトルをクリックするとアマゾンにとびます)。




The Best of Weather Report(Transcribed Scores)




ウェザー・リポートのスコア集です。何曲かを除いたほとんどがジャコのいたころ…『ブラック・マーケット』から『ナイト・パッセージ』あたりのものに集中しています。あのころの代表曲はぜんぶ収録されているといっていいとおもう。「ブラック・マーケット」や「バードランド」はいわずもがな、「お前のしるし」、『8:30』版の「バディア/ブギ・ウギ・ワルツ」、僕の大好きなショーター作の「パラディアム」まで入ってる。ただ、どうしたわけか『ティーン・タウン』や『スリー・ヴューズ・オブ・ア・シークレット』などジャコが書いた曲は入っていない。

内容は当然サックス、キーボード、ベース、ドラムスのバンド・スコアなのですが、書かれ方は非常にシンプルで、いかにも洋書っぽい手書きな感じで省略できるところはぜんぶ省略して、細部は演奏者の感性に任せてしまっているふう。たとえばキーボードに関しては右手側のみのそれも大事なところしか採譜しかされていなくて、あとはぜんぶコードネームが書かれてあるだけ。しかしこれからウェザー・リポートをやろうというひとにはそれくらいでじゅうぶんでしょう。綿密に計算された構成のなかに満ちる即興的な緊張感…それがウェザーのフレキシブルな魅力ですからね。コードや聴き取りづらいベース・ラインさえわかればイイ、というひともいるでしょう。





『偉大なる巨匠たちの軌跡~ジャコ・パストリアス』監修・水野正敏 リットーミュージック



技術的なジャコの研究書です。ジャコの生い立ちや音楽的背景などの解説、代表曲の完全コピー、ハーモニクスなどのきわめて具体的な奏法解析やジャコならではの音楽的な概念、あの音色の出し方まで書いてある。僕はベースを弾きませんが、何曲かピアノで弾いてみたいというのがあったし、もっとジャコのことを知りたいというたんじゅんないちファンとしての衝動も大きかった。ベーシストのかたは必携でしょう。しかしもちろん、ここにあることは、模倣ののちに本来あるじぶんの技術をさらにたかめるということであって、この書がなにかバイブル的なことになってしまうのはどうかとおもう。つまりどういうことかというと…、ジャコじしんは、この教則本を見てミュージシャンになったわけではないので…。もちろんすべての表現は模倣からはじまるし、最初の段階ではひたすらコピーする以外にこの音楽の練習方法はないのですから、それはまったく否定しませんしむしろ奨励したいです。

コピー譜に関してはまず、世界中のベーシストたちのベース概念を変えたあの「ドナ・リー」が入っています。僕はベースをもっていないので物理的に挑戦すらかないませんが、チャーリー・パーカーの難解な曲をジャコが演奏するという、天才の二乗を前にしても、解説が非常に地に足ついた感じなのでちょっとほっとします。他にもうえのウェザーの楽譜にはなかった「ティーン・タウン」(採譜は『へヴィ・ウェザー』所収のオリジナルのほうです)、『インヴィテイション』の、ホーン・アンサンブルからつながるソロのぶぶんの二小節がかっこよすぎる「ザ・チキン」なんかが入ってます。





『ジャコ・パストリアスの肖像』ビル・ミルコウスキー著/湯浅恵子訳  リットーミュージック



これは楽譜ではなくジャコの伝記。ジャコに関わりのあるあらゆるミュージシャンや友人知人に取材し、ボリュームをもって書かれてあるので読み応えじゅうぶん。また筆者じしんもジャコの友人であったため、ただの伝記ではなく、いやこれこそが伝記のつとめというべきか、いちジャコ・ファンとしてもひとりのにんげんとしてもいろいろかんがえてしまったし、読後の感触は哀しく美しい小説を読んだあとのそれにそっくりだった。こういうことについてはすでにどこかで書いたので重複は避けますが、とにかく本文から引用された帯のことばをひいておきます。



「私は、ジャコがゆっくりと痛々しく自滅的になっていくのを見た。みんながそうだったように、私も何とかしようと、彼に希望の言葉や、生き続けなければならない理由を与えたり、気晴らしやアイディア、落ちていく彼を引き上げる手助けになりそうなことなら何でも提供した。

しかし、彼に近づこうと必死になった仲間たちと同じく、私も、暗い深みにはまっているジャコに何の変化ももたらすことはできなかった」